43 / 120
どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?
【15】愛の罰 その1
しおりを挟む「沙汰を言い渡す」
ロジェスティラの言葉を受けた王は、目を閉じてしばらく考えると口を開いた。
「クルノッサ、元老院議長を自ら辞せ。当主の座も当然息子に譲り隠居せよ」
「あとの身の処し方はお前に任せる」との王の言葉にクルノッサ自身が驚き目を見開いた。
「それでは陛下、あまりにも……」
彼の言いたいことはあまりにも処罰が軽いということだろう。庶子の子と彼がいうジークはそれでも、王の子であり、序列第2位の事実上の王太子の一人だ。
それを自ら議長を辞職し、息子に次代を譲ったとなれば、世間は少し早い隠居としか見ないだろう。もちろん突然の辞任と隠棲は王の不興を買ったと、しばらくは宮中の噂になるかもしれないが。
「コウジの襲撃事件に関しては、第10王子と第11王子、および荷担した魔法騎士達の処罰はすでに決定し執行されておる。そのうえに、当人の王子二人がどこぞに逃げて行方知れずとあっては、お前がその後ろにいたという証拠はなにもない。
神殿での暗殺未遂に関しては、公にはされてはおらぬ。無い罪でお前を裁くことは出来ん」
その上で王はさらに口を開いた。
「ゆえに余はお前の罪はお前の判断に委ねることにする。王家へのそれほどの忠義があれば、己の身の処し方ぐらい心得ておるだろう。ただし、死ぬことは許さぬ。
これからの“余生”その目で王国の行く末を見ているがよい。お前の言う通りに、王家が滅びるか存続するか。余にとっては王家の血など、いまさら些細なことのように思える。このフォートリオンという国があり、民が健やかであるならばな。
四十五人も子を作っておいて、いまさらなにを言うかと言われそうだが」
「長き間の王家への忠義、大義であった」と、これはフィルナンドのクルノッサへの別れの言葉だった。もう二度と会うことはないと。
そしてクルノッサはこの王宮を去り、二度と公の舞台に顔を出すことはないだろう。それが王家へのお前の忠義だと王に言われれば、彼はそれに縛られ従わざるをえない。
両膝を床についたままクルノッサは深々と頭を垂れて彼は王に最後の挨拶をする。
「ロジェスティラ」
フィルナンドはひざまづくクルノッサの横に立つ、準妃へと目を向けた。
「準妃の別宮を本日より引き払え」
王宮の中央の本宮の背後には正妃と準妃のための別宮がある。そこを出ろということは、ロジェスティラは王宮の外に追放され、どこかの離宮に幽閉という言葉に聞こえた。
ロジェスティラは王の言葉を当然のことと受けとめたようで、表情を変えることなくただ「はい」と答え。そして、母を告発したコンラッド自身のほうが、その顔色を変えたほどだ。
フィルナンドは『そうではない』というように首を振る。
「これからは別宮ではなく、余のそばで暮らせと申しつけているのだ。余も年甲斐もなくと言われたくはないからな。寝室はともにとは言わぬが、隣室に寝室を設ける。扉一枚、いつでも行き来出来るようにな」
王と妃達は、同じ王宮内であっても別に暮らしてきた。だが、フィルナンド王が準妃の居を別宮から、自分のそばに移したと見れば、人々はそれが準妃への罰とは思わないだろう。
むしろ、四十五人も子供を作った王だが、やはり寄る年波に落ち着き、準妃一人と決めたらしいと周囲は見るに違いない。
「離宮などに去ることは許さんぞ。表向きは何事も事件など起こっていないのだ。噂好きの宮廷雀どもに、楽しい話題を提供してやる義理はない。
余のそばにおれば、そなたの耳にいらぬことを吹き込む輩もいなくなるだろう」
そう、王である自分自らがロジェスティラを監視すると、フィルナンドは口にしてから、ふ……と微笑む。
「そなたにも苦労をかけた。余があちこちに心を移すのをなにも言うことはなかった。たしかにそなたはただ黙って耐えて、準妃としてここにあった。
ならば、今度は余のそばにおるがよい。余ももうどこにも行くことはない」
「陛下……」
ロジェスティラが瞳を潤ませ、彼女は崩れるように椅子に座る王へ駆け寄り、その肩にひたいをおしあてた。王は慈しむように彼女の髪をそっと撫でる。
「さて、準妃の制度だが王室法には残す。廃止はせぬ。だが、準妃を娶るかどうかはそのときの王の判断に委ねる。
神前にて、我が配はこの者ただ一人と誓えば、人の法よりも、女神アルタナへの信仰が勝るのは当然のこと」
これは老練な王らしい現実的な判断だった。今は必要でなくとも、あとには複数の妃が必要になる、そんな時が来るかもしれない。
それがフィルナンド王のときのように、複数の女達の嘆きをともなうことになってもだ。政治とはときに非情なものだ。
「では」とコンラッドが口を開く。
「私も婚約式において、生涯ただ一人の方を妻としたいと、神前にて誓いたく思います」
名前は出さないがそれが横にいるシオンに対しての誓いでもあるのは明らかだった。彼女の頬が淡く染まり、フィルナンド王は「それがお前の望みならばよかろう」とうなずく。
それに「お待ちください」と叫んだのは、いまだ両膝を床についたままのクルノッサだった。彼はうなだれていた頭をあげて、王にすがるかのような視線を向ける。
「コンラッド殿下は唯一の純血のお血筋……それが途絶えるようなことがあっては……なりません」
まだ、そんなことにしがみついているのか……とコウジは哀れみの視線で、床にうずくまったままぐっと老けたように見える元老院議長を眺める。この男も因習という檻に囚われて、そこから抜け出せないでいる。
「純血などとっくの昔に失われておるわ」
ロジェスティラはなにもいうことなく、王の肩に顔を埋めている。その頭を優しくなでながらも、しかしフィルナンドは冷ややかにクルノッサを眺めた。
「聖帝グラフマンデから続く直系の血とお前は言う。だが、中興の祖といわれるカーク大帝はなぜ、中興の祖と呼ばれる?
そのときの序列1位の王子と魔法少女は力が足らず災厄に敗北し死んだ。この王城も巨竜によって蹂躙された。そのときに王も正妃も亡くなっている。
再度召喚された魔法少女をパートナーとしたカーク大帝が巨竜を倒し王となった。彼は離宮にて静養していた準妃の子とされているが真っ赤な偽りよ。
準妃は生来の病弱で子供を作ることは出来なかった。その身代わりにと王に自分の侍女を差し出した」
「約五百年もたてば確かなことはわからぬ。伝説の彼方よな」とフィルナンドは王は曖昧に微笑む。
「約千年以上も続く初まりは神話の彼方の、我がフォートリオン王家よ。醜聞の一つや二つや、いや、百も転がっておろうな。
あるのは形だけ整えた偽りの純血の系図よ」
その王の言葉にクルノッサは両膝を床についた姿勢から、両手を床について崩れ落ちた。フィルナンド王は続ける。
「今となっては余の恥でもあるが、四十五人も王子がおるのだ。そのなかには出来の良い孫が幾人かは出来るだろう。
血の存続というならば、まったく心配はあるまい」
226
お気に入りに追加
1,069
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
時々おまけのお話を更新しています。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない
上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。
フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。
前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。
声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。
気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――?
周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。
※最終的に固定カプ
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。