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【4】雨の宿 その5
しおりを挟むそして、ほころんだままのアヌスに、いつのまに力を取りもどしたやら、若いペニスがまた突き入れられた。
「このっ!」
四つん這いの獣の形で後ろから抱きすくめられて、アルマティは首をねじるように振り返り、青年をにらみつけるが。
「一度で終われるわけがないだろう? ようやく、あなたと抱き合えたのに」
「…………」
鮮やかに笑う青年のその顔にアルマティは一瞬の怒りも忘れも苦笑した。そして、彼の頭を引き寄せて唇を重ねた。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
そこから先は坂道を転がり落ちるように……という表現は陳腐だろうか?
十日という日々を惜しむように、ウーサーは昼となく夜となく、アルマティに手を伸ばし、アルマティもウーサーを拒むことはなかった。
温泉に入る以外、部屋から出て来ない二人を護衛の兵士達も、ガレスの言葉を守って身体を休めているのだろうと……疑ってもいないだろう。
本当に身体を休めているかどうか、大変に疑問であるが。
寝て、温泉にはいり、この地の滋味あふれる料理を食べ、また温泉に入り、寝て。
しかし、その“寝る”という行為が大変爛れているのだが。
「美しいな」
「……お前はそればかりだな」
夕餉をすまし、アルマティは出窓に腰掛けて、はるか下の渓流の景色を眺めていた。あたりはすっかり日が暮れて、崖にへばりつく宿の以外の建物の灯りなどはない、外は真っ暗だが、エルフは夜目が利く。
いまだ雨が止まない星明かりもない黒で塗りつぶれた空の下でも、十分に川に山の景色は見えた。その尖った長い耳は、そこで暮らす獣たちの足音さえ、拾い上げようと思えば拾い上げられる。
今、鹿の親子が通り過ぎた。子鹿が小枝を踏んだバキリという音さえ。
そんな風に外の景色と音を楽しむアルマティをまた、ウーサーも飽きることはなく見ている。
「アルマティが綺麗なのは本当のことだろう? 俺が見たなかで、一番美しいものはあなただ」
「エルフなど、みなこの程度の容姿は持っているぞ。私はこの世界に一人とりのこされたハーフエルフだからな。物珍しいことは物珍しいだろうが」
「……俺が言ってるのは外見だけじゃない。あなたの中身も美しいといっているんだ」
「自分でも、なかなかに性格が悪いと思っているがな」
「それもいいといってるんだ。美しい花にはトゲがある」
「陳腐な言い方だ」とアルマティは苦笑した。その手の中には蒼い玻璃で出来た、切子細工の小さな杯がある。なかにはとろりとした琥珀色の甘い酒が満たされていた。
本日の夕餉の食前酒にだされたカリン酒が気に入って、食後にもってきてもらったのだ。昨日は渓流で捕れた焼き魚が美味であったが、今日は猪の肉をこっくりと煮込んだシチューが温かく腹を満たしてくれた。
そして、満ちた腹にちびちびと甘い酒を味わっていたのだが。
「ん……」
手の中にあった杯をウーサーの大きな手がとりあげて、一気に口に含んだと思ったら、口づけてきた。まったくこの手の酒はじっくり味わうべきなのに。
半分半分……いや、ウーサーが大半呑み干して、そして、アルマティの口の端からこぼれたしずくを、れろりと舐め取る。白く細い首筋にもこぼれたしずくを追って、その唇が吸い付き、ときに軽く歯を立てさえする。
「あ、あ……っ……」
アルマティは声を抑えなくなっていた。散々抱かれて慣れたなんて思いたくはないが、開き直って溺れるだけ溺れてやれと思っているのは確かだ。
どうせ、十日限りのうたかたの夢。
それもあとわずか数日だ。
そう考えると、ちくりとどこか胸の奥が痛むのは無視して、ぎゅっと目を閉じる。一枚きり着ているガウンの胸元をはだけられて、うまる青年の頭を両手で抱きしめる。
ふとここが出窓で外から……と思ったが、部屋には灯りがついているとはいえ、窓の外は暗闇の渓流と山なのだ。見ているものなど、それこそ先ほどの鹿の親子ぐらいしか見ていないだろう。
「ん……ぁ……」
腰の紐を解かれれば、肩にひっかかるだけだったガウンがすとんと下に落ちる。胸から滑り降りた頭が、脇腹に口づけて、すでに熱を持ち始めていたアルマティを口中に含まれる。
まったく、最初にされたときは驚いたし、あとて「これは遊び女のすることだ!」と王となるものがすることではないと、怒ったのだがウーサーは止めることはない。
もっとも怒ったのは、散々舐められて吸われて、ギリギリまで我慢したあとに、青年の口中に吐きだして、さらには呑み込まれたあとだったので、今さらではあったのだが。
だから、もうこうして、何度も受け入れてしまっている。その熱い口中と肉厚の舌を、時々離れる唇は、太ももの内側に吸い付き、ときにはそのやわ肉をはむようにしたりする。「本当に食いたいのか?」とこれもあとで訊ねたら。「あなたの血肉を食らい一体になれるのなら」と真顔で言われていささかひいた。
「しかし、あなたとこうして話せなくなるのはいやだからしない」
「エルフの肉を食ったところで、不老長寿にはならないからな」
「愛するあなたのいない世界で生きながらえたところで意味はない」
「…………」
アルマティは沈黙した。
それが自分が一番怖れていることなのだと、この青年にはわかることはないだろう。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
「んぁ……あ……出る……出るっ!」
脚のあいだ生まれる男の頭を押さえて、アルマティはしなやかにのけぞる。一瞬の硬直のあとに弛緩して、ふう……と息を吐く。
ウーサーが顔をあげて、ごくりとその喉のおうとつが動くのを見て。アルマティはため息を一つ。
「呑むなと言っているだろう?」
「アルマティのものだ。一滴だってこぼしたくない」
「…………」
腰掛けていた出窓から降りて、立ち上がったウーサーの足下に両膝を突く。「アルマティ?」と訊ねる声が頭上から聞こえるが無視して、そのガウンの前を開く。
自分のを舐めただけで、青年のペニスは勢いよく空を向いていた。それを片手で掴むが、指が回らない。まったく、どれだけ大きいと思いつつ、その先に挨拶とばかり口づけた。
「あ、アルマティ!?」
「暴れるな、大人しくしていろ」
握りしめる指に力を決めてやれば「う……」と声が漏れた。たしかにアルマティからはしたことはなかった。この青年でなければ、絶対にする気なんて起こらなかっただろう。
「いつも私にしてるだろう? だから、黙って受けろ」
「…………」
ぺろりと舐めて、顔には出さなかったがあまりうまいものではないな……と思う。先に甘い酒を口にしてしまったからなおさらか。
いつもは逆に自分にしている青年は、甘い甘いといっていたが、この嘘つきめ……と思いつつ口に含む。含むが……やはり全部は入らない。
まったく、どれだけ無駄に大きいんだ? と思いつつ、半ばまで含んで先を集中的に舐めて吸ってやる。それから、根元の部分は両手でさすったり扱いたり。
「う……っ……アルマ……ティ……!」
初めてなのだから、とうてい上手いとは我ながら思わなかったが、それでもウーサーはアルマティの口の中に、その欲望を吐きだした。あとで本人曰く、「あなたの美しい口のなかに俺のモノが含まれているなんて、それだけでイキそうだった」……だったそうだ。このヘンタイめ。
「…………」
口いっぱいに広がったそれは、やっぱりとうていうまいとは思えなかったが、ごくりと呑み込む。こぼれた白濁もまた、指ですくいとってぺろりと舐めて。
「アルマティ……」
情欲を含んだ低い声で名を呼ばれた。身体がふわりと浮いて、横抱きにされた。
大股に居間をぬけて、寝室へと。広い寝台へとその身体を放り投げられて、熱い身体がのしかかってくるのに、その背に腕を回した。
今日も夜は長そうだった。
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