315 / 329
タイコの湖
315.ゴルゴンの願い
しおりを挟む
ゴルゴンは、ゆっくりと立ち上がりこちらを振り向く。しかし、そこで力尽きたのか体がガクッ落ちて膝を付いてしまう。髪の毛代わりだった蛇達は、ほとんどが半ばから千切れてしまっているが、前屈みになった姿勢からではゴルゴンの顔は見えない。
俺達の姿が見えたことで僅かに残された蛇達が、威嚇するように牙を剥いてくる。しかし、威嚇の音をたてる度に頭からは血が流れ出し、全身を深藍色に染めてゆく。
そして、地面へと流れ落ちた深藍色の血は、キラキラと消滅を始める。コールと融合しても尚、その存在を保つことは難しい。
『どうするの?あなたの責任よ!』
「えっ、俺の···」
最初は倒すどころか殺そうとしていたのだから、別に消滅してしまっても気にする必要はない。頭の傷は俺達と戦った時に出来たもので間違いないだろう。それでも一度は助けようとしたせいなのか、妙な罪悪感がある。
「なあ、大丈夫か?無理して立たなくてイイぞ」
ゴルゴンに言葉が通じるとは思わないし、消滅しかけている相手に声を掛けて、状況が改善する訳がないのも分かっている。それでも、そうする事しか思い付かなかった。
『何言ってるの?』
「そんなの、俺だって分かってるよ!」
『あなたのやった事なんだから、もう少し真剣に考えたどうなの?』
ムーアの言っているのは、ゴルゴンの致命傷となっている全身の傷のことになるが、何時から付いていた傷なのか分からない。俺たちがダンジョンに飛ばされた時から付いていたものかもしれないし、障壁を破壊した時に巻き込まれて出来たものかもしれないが、今となっては証明のしようもない。
「でも俺が関係するなら、ムーアだって関係しているだろ?」
『あのね、私達まで巻き込まないで欲しいわね。あなたの責任は大きいでしょ』
「だってな、皆で···」
途中まで言い掛けて、言葉を飲み込む。結界の破壊は皆関係しているかもしれないが、感情に任せて結界を破壊しゴルゴンを助けようと決めたのは俺じゃないか。
ここまで激しい怒りを感じた事はなかったし、俺が決めたことに精霊達は逆らわなかった。精霊達にとっては最悪を避けるために、最善を尽くしたに過ぎない。
「そうだな、俺が決めたことの結果でしかないな」
といっても何をしたら良いかは分からず、ゴルゴンに近付くことしか出来ない。
存在は消滅しかかっているのに、頭に残された数少ない蛇は、近付く俺にさらに激しく威嚇の牙を剥く。それがゴルゴンの体にさらに負担をかけ、さらに消滅が加速する。
「大人しくしてろ。死にたいのか?邪魔をするなら、先にお前達を殺すぞ!」
その言葉が通じたのか蛇達は大人しくなるが、俺の声に反応したゴルゴンが再び立ち上がろうとする。しかし、立ち上がったのは一瞬だけで、体は崩れ落ちてしまう。
膝が折れ曲がり腕は力なく垂れ下がるが、今度は地面へと倒れ込むことなく不自然な位置で静止する。
「コールか?」
返事はないが背中に生えたコールの羽が、ゴルゴンの体を持ち上げているが、項垂れた状態では依然として顔は見えない。
「お願い、殺して欲しいの」
顔を俯け小さく弱々しい声ではあるが、ハッキリと聞き取れる声。そしてコールとよく似た声が、一瞬だけドキリとさせる。
「その声は、コール···じゃないよな?」
「コールってスライムのこと?そうなら、ウチはスライムじゃない。力は借りてるけど」
そして、ゴルゴンはコールの羽の力を借り、足を引きずるようにして俺の前までやってくる。
「無理して動くな。消滅が早まるぞ!」
「もう避けることは出来ないわ。お願い、殺して欲しいの」
再び、同じ言葉を繰り返す。俯いて見えなかったゴルゴンの顔が持ち上がると、そこにはコールとソックリの顔がある。
「君に殺されれば、僕は解放される。そして、君の中で生きれるのでしょ?」
「なぜ、そう思う?そんな事は、有り得ないだろ」
ゴルゴンの目は潰されて、完全に見えていない。それなのに、俺の体や顔の位置を知っているように、正確に俺の顔のある場所を見てくる。
「隠すことは出来ないよ。スライムは、僕の妹みたいなものだからね」
「魔力の質か。お前の魔力を糧にして成長したなら、妹じゃないだろ」
「僕は、まだしてないよ。だから妹なの、気に入った?」
ゴルゴンの感情の声も自身に満ち溢れ、とても消滅しそうな奴の言うことじゃない。
「また面倒なのが···」
俺達の姿が見えたことで僅かに残された蛇達が、威嚇するように牙を剥いてくる。しかし、威嚇の音をたてる度に頭からは血が流れ出し、全身を深藍色に染めてゆく。
そして、地面へと流れ落ちた深藍色の血は、キラキラと消滅を始める。コールと融合しても尚、その存在を保つことは難しい。
『どうするの?あなたの責任よ!』
「えっ、俺の···」
最初は倒すどころか殺そうとしていたのだから、別に消滅してしまっても気にする必要はない。頭の傷は俺達と戦った時に出来たもので間違いないだろう。それでも一度は助けようとしたせいなのか、妙な罪悪感がある。
「なあ、大丈夫か?無理して立たなくてイイぞ」
ゴルゴンに言葉が通じるとは思わないし、消滅しかけている相手に声を掛けて、状況が改善する訳がないのも分かっている。それでも、そうする事しか思い付かなかった。
『何言ってるの?』
「そんなの、俺だって分かってるよ!」
『あなたのやった事なんだから、もう少し真剣に考えたどうなの?』
ムーアの言っているのは、ゴルゴンの致命傷となっている全身の傷のことになるが、何時から付いていた傷なのか分からない。俺たちがダンジョンに飛ばされた時から付いていたものかもしれないし、障壁を破壊した時に巻き込まれて出来たものかもしれないが、今となっては証明のしようもない。
「でも俺が関係するなら、ムーアだって関係しているだろ?」
『あのね、私達まで巻き込まないで欲しいわね。あなたの責任は大きいでしょ』
「だってな、皆で···」
途中まで言い掛けて、言葉を飲み込む。結界の破壊は皆関係しているかもしれないが、感情に任せて結界を破壊しゴルゴンを助けようと決めたのは俺じゃないか。
ここまで激しい怒りを感じた事はなかったし、俺が決めたことに精霊達は逆らわなかった。精霊達にとっては最悪を避けるために、最善を尽くしたに過ぎない。
「そうだな、俺が決めたことの結果でしかないな」
といっても何をしたら良いかは分からず、ゴルゴンに近付くことしか出来ない。
存在は消滅しかかっているのに、頭に残された数少ない蛇は、近付く俺にさらに激しく威嚇の牙を剥く。それがゴルゴンの体にさらに負担をかけ、さらに消滅が加速する。
「大人しくしてろ。死にたいのか?邪魔をするなら、先にお前達を殺すぞ!」
その言葉が通じたのか蛇達は大人しくなるが、俺の声に反応したゴルゴンが再び立ち上がろうとする。しかし、立ち上がったのは一瞬だけで、体は崩れ落ちてしまう。
膝が折れ曲がり腕は力なく垂れ下がるが、今度は地面へと倒れ込むことなく不自然な位置で静止する。
「コールか?」
返事はないが背中に生えたコールの羽が、ゴルゴンの体を持ち上げているが、項垂れた状態では依然として顔は見えない。
「お願い、殺して欲しいの」
顔を俯け小さく弱々しい声ではあるが、ハッキリと聞き取れる声。そしてコールとよく似た声が、一瞬だけドキリとさせる。
「その声は、コール···じゃないよな?」
「コールってスライムのこと?そうなら、ウチはスライムじゃない。力は借りてるけど」
そして、ゴルゴンはコールの羽の力を借り、足を引きずるようにして俺の前までやってくる。
「無理して動くな。消滅が早まるぞ!」
「もう避けることは出来ないわ。お願い、殺して欲しいの」
再び、同じ言葉を繰り返す。俯いて見えなかったゴルゴンの顔が持ち上がると、そこにはコールとソックリの顔がある。
「君に殺されれば、僕は解放される。そして、君の中で生きれるのでしょ?」
「なぜ、そう思う?そんな事は、有り得ないだろ」
ゴルゴンの目は潰されて、完全に見えていない。それなのに、俺の体や顔の位置を知っているように、正確に俺の顔のある場所を見てくる。
「隠すことは出来ないよ。スライムは、僕の妹みたいなものだからね」
「魔力の質か。お前の魔力を糧にして成長したなら、妹じゃないだろ」
「僕は、まだしてないよ。だから妹なの、気に入った?」
ゴルゴンの感情の声も自身に満ち溢れ、とても消滅しそうな奴の言うことじゃない。
「また面倒なのが···」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる