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タイコの湖
319.七色の光
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クオンがラミアの魔石を投げ込むと、ゴブリンやハーピーの魔石が一斉にラミアの魔石へと群がり、大きな塊が2つ出来上がる。
群がった魔石は蠢くかのようにして動き周り、密集した虫の塊にしか見えず、とても無機質な魔石とは思えない。
「気味悪いな···」
『ええ、そうね。その魔石を動かしているのも、あの七色の魔石なのよね』
その張本人である魔石からは七色の光が放たれている。それぞれの七色の光は決して混ざることなく、明確な意思を持った光のようにも感じられる。光ではあるが、日の光や魔法の光ともどこか違う、あやかしの光。
「出来れば近付きたくないし、触れたくもないかな」
『クオンだから出来るのよ。ましてや、直接触れるなんてね』
クオンの手の平で輝く魔石の光は、次第に強さを増しリッター達の光をも凌駕してゆく。それに伴って、蠢いていた魔石はより密集した塊となる。
ラミアの魔石の質を強くするのであれば、魔石自体は無くならないのだろう。それでも、どのような方法で強化されるのかを知らないだけに、ラミアの魔石が食いつくされてしまうのではないかとさえ感じられてしまう。
クオンのことは信用しているが、クオンが大丈夫だという魔石のことは信用していない。
「ラミアの魔石は大丈夫だよな?ゴブリンやハーピーの魔石が、ラミアの魔石を喰らい尽くしている訳じゃないよな?」
「うん、大丈夫」
ラミアの魔石のことを聞きながらも、クオンの体の事を気にかける。しかし、相変わらずクオンの発する言葉は短いし口数も少なく、異変があっても感じ取りにくい。
「クオンは、魔石を強化するところを見たことがあるのか?」
「知ってる」
“ある”か“ない”かの答えでなく、“知っている”という答えに驚かされる。知識の精霊ガーラさえも未知であるが、魔石を強化するという知識が持っているのだろうか。
さらに魔石の輝きが増して、直視出来ない程の光を放つ。その光は、感情や魔力といった色に染まることのないものでさえも、色付けしてしまうような不思議な感じがする。
魔石を持った、クオンは笑みを浮かべている。魔石に魅せられたような笑みではない。心は穏やかで、本来の優しい笑みであるように見える。
「目を閉じて」
笑みを浮かべたクオンに、何の疑いを感じることもなく黙って従うと、体の中を光が通過してゆくような感覚に襲われる。そして、強烈な光は体の境界すら分からなくしてしまう。
この光を防ごうとは思わない。どんな手段をもってしても防ぐことは出来ない。そして、俺の全てを見透かされてしまった今となっては、もう敵うことはないだろう。
「終わった」
クオンの声で、我に返る。ムーアもブロッサも何も変わっていない。七色の魔石の光を浴びたことすら理解していないのか、俺を見て不思議そうな顔をしている。
『どうしたの?魔石を見てぼうっとしたわよ』
「凄い光だったろ」
ムーアもブッロサも、光の記憶がないといってイイ。感情の声も聞こえてこないし、俺の感情の声も七色の魔石のことだけが、ムーアには伝わっていない。
魔石の放った光のことを知っているのは、俺とクオンだけしかいない。ただ、俺とクオンも七色の魔石がもっとも輝いた姿を見てはいない。
「クオン、だから知っているなのか?」
それにクオンは、黙って頷く。
『カショウ、何寝ぼけたこと言ってるのよ!それよりも、あれを見てみなさい』
魔石の塊は、元の半分以下まで凝縮されている。それでもゴルゴンの顔よりも大きくい。このままではゴルゴンの瞳としては使えそうもない。
「この魔石から、ゴルゴンの瞳を切り出すのか?」
「それだと、魔石の質が落ちてしまウワ」
そして、魔石の塊がキラキラと輝きだす。七色の魔石が放った光ではなく、魔石が消滅するときに起こる現象でしかない。
唯一魔石を強化する方法を知っているクオンは、キラキラと消滅してゆく魔石を黙って見つめている。確実に魔石の消滅は進み、徐々に大きさも小さくなってゆく。
「失敗したのか?」
「焦るな、お主も魔力を感じてみろ!そうすれば分かるわい」
イッショに魔力探知してみろと言われてみて、始めて魔石の魔力に気付く。
魔石の塊から感じられる魔力量に変化はない。
不要な部分を削ぎ落としつつ、内包されている魔力だけをさらに凝集している。そして、キラキラとした魔石の消滅が終わると、そこにからは真紅の魔石が姿を現す。
群がった魔石は蠢くかのようにして動き周り、密集した虫の塊にしか見えず、とても無機質な魔石とは思えない。
「気味悪いな···」
『ええ、そうね。その魔石を動かしているのも、あの七色の魔石なのよね』
その張本人である魔石からは七色の光が放たれている。それぞれの七色の光は決して混ざることなく、明確な意思を持った光のようにも感じられる。光ではあるが、日の光や魔法の光ともどこか違う、あやかしの光。
「出来れば近付きたくないし、触れたくもないかな」
『クオンだから出来るのよ。ましてや、直接触れるなんてね』
クオンの手の平で輝く魔石の光は、次第に強さを増しリッター達の光をも凌駕してゆく。それに伴って、蠢いていた魔石はより密集した塊となる。
ラミアの魔石の質を強くするのであれば、魔石自体は無くならないのだろう。それでも、どのような方法で強化されるのかを知らないだけに、ラミアの魔石が食いつくされてしまうのではないかとさえ感じられてしまう。
クオンのことは信用しているが、クオンが大丈夫だという魔石のことは信用していない。
「ラミアの魔石は大丈夫だよな?ゴブリンやハーピーの魔石が、ラミアの魔石を喰らい尽くしている訳じゃないよな?」
「うん、大丈夫」
ラミアの魔石のことを聞きながらも、クオンの体の事を気にかける。しかし、相変わらずクオンの発する言葉は短いし口数も少なく、異変があっても感じ取りにくい。
「クオンは、魔石を強化するところを見たことがあるのか?」
「知ってる」
“ある”か“ない”かの答えでなく、“知っている”という答えに驚かされる。知識の精霊ガーラさえも未知であるが、魔石を強化するという知識が持っているのだろうか。
さらに魔石の輝きが増して、直視出来ない程の光を放つ。その光は、感情や魔力といった色に染まることのないものでさえも、色付けしてしまうような不思議な感じがする。
魔石を持った、クオンは笑みを浮かべている。魔石に魅せられたような笑みではない。心は穏やかで、本来の優しい笑みであるように見える。
「目を閉じて」
笑みを浮かべたクオンに、何の疑いを感じることもなく黙って従うと、体の中を光が通過してゆくような感覚に襲われる。そして、強烈な光は体の境界すら分からなくしてしまう。
この光を防ごうとは思わない。どんな手段をもってしても防ぐことは出来ない。そして、俺の全てを見透かされてしまった今となっては、もう敵うことはないだろう。
「終わった」
クオンの声で、我に返る。ムーアもブロッサも何も変わっていない。七色の魔石の光を浴びたことすら理解していないのか、俺を見て不思議そうな顔をしている。
『どうしたの?魔石を見てぼうっとしたわよ』
「凄い光だったろ」
ムーアもブッロサも、光の記憶がないといってイイ。感情の声も聞こえてこないし、俺の感情の声も七色の魔石のことだけが、ムーアには伝わっていない。
魔石の放った光のことを知っているのは、俺とクオンだけしかいない。ただ、俺とクオンも七色の魔石がもっとも輝いた姿を見てはいない。
「クオン、だから知っているなのか?」
それにクオンは、黙って頷く。
『カショウ、何寝ぼけたこと言ってるのよ!それよりも、あれを見てみなさい』
魔石の塊は、元の半分以下まで凝縮されている。それでもゴルゴンの顔よりも大きくい。このままではゴルゴンの瞳としては使えそうもない。
「この魔石から、ゴルゴンの瞳を切り出すのか?」
「それだと、魔石の質が落ちてしまウワ」
そして、魔石の塊がキラキラと輝きだす。七色の魔石が放った光ではなく、魔石が消滅するときに起こる現象でしかない。
唯一魔石を強化する方法を知っているクオンは、キラキラと消滅してゆく魔石を黙って見つめている。確実に魔石の消滅は進み、徐々に大きさも小さくなってゆく。
「失敗したのか?」
「焦るな、お主も魔力を感じてみろ!そうすれば分かるわい」
イッショに魔力探知してみろと言われてみて、始めて魔石の魔力に気付く。
魔石の塊から感じられる魔力量に変化はない。
不要な部分を削ぎ落としつつ、内包されている魔力だけをさらに凝集している。そして、キラキラとした魔石の消滅が終わると、そこにからは真紅の魔石が姿を現す。
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