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タイコの湖
291.増殖
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「タダノカマセイレに何があった?」
哀しみの精霊とも思えないような、小躍りするような姿。喜ぶ哀しみの精霊なんて存在は成立するのかと、自分の目を疑ってしまう。
「一体が何があったんだ?イッショ、どうなっている?」
同じ精神を司る精霊であるイッショであるならば、タダノカマセイレの行動の意味が理解出来るのかもしれない。
「慌てるな、よく見てみろ!」
しかし、イッショは行動の意味を教えてはくれない。もしかして“よく見てみろ”とは、イッショの行動を指しているのかもしれない。
そう考えてみると、怒りの精霊であるイッショも常に怒りに満ち溢れている存在ではない。どちらかといえば真逆で、周囲の怒りを自身に集めているような気さえする。
「そうか、わざと人を怒らせることで自身に怒りの感情を集めているのか!それならば、少しでも早く失った力を取り戻すことが出来る!」
「違うわいっ!それならば、タダノカマセイレの行動はどうなる!」
その理屈ならば、小躍りすることで哀しみの感情を集めようとしていることになる。小躍りではどうやっても哀しみの感情を集めることには繋がらず、論理的に破綻している。
再び霧の中に見える姿を見るが、あの唯一無二の姿はシナジーでなくタダノカマセイレでしかあり得ない。
「えっ、1人じゃないのか?そんな兄弟がいたなんて···」
さらに飛び込んできた光景は衝撃的で、何体ものタダノカマセイレが巨大なスライムを囲んでいる。
『カショウ、急に何を言い出すの?』
「だけど、姿も魔力もタダノカマセイレそのものだろ!」
『似てるならまだしも、魔力そのものが同じなら兄弟なんてあり得ないでしょ』
同じ雷の中から産まれたルーク達ですら魔力の質は違うし、その違いをハッキリと感じ取るとこは出来る。一番数の多いリッター達であっても、全く同じ魔力の質を持ったものはいない。
「···双子とかなら、可能性はあるんじゃないか。精霊に双子があるかないかは知らないけど」
『カショウ、正気で言ってるの?ただでさえ珍しいタイプの精霊が、いくつ子だって言うのよ!』
しかし感じられる魔力は、十体を超え始める。巨大なスライムを囲んでいるのだから、その数はもっと増えていくだろう。
『シナジーはカショウの魔力を操っているけど、操れるのはカショウの魔力だけじゃないわよ。タダノカマセイレの魔力だって集めることは簡単なのよ』
「でも、シナジーの姿を真似することを拒否していたじゃないか!」
『それは、あの時の歪んだ心のタダノカマセイレでしょ。今の姿は全く違うわ!まさか、カショウまで騙されるとは思わなかったわよ』
若干ムーアは呆れてしまっているが、それほどまでにシナジーの姿はタダノカマセイレにしか見えない。しかし、もっと姿がハッキリ見えてしまえば、やはり濃い霧がタダノカマセイレの姿をつくり出してる事は簡単に見分けがついてしまう。
「色味も真似出来れば、完全に見分けはつかないだろうな」
「スライムのような知能の低い魔物相手なら十分じゃないかしら。それにシナジーの霧の中に入ってしまえば、それだけで十分に効果はあるわよ。誰かさんも、見抜けなかったしね♪」
「ああ、複数の探知スキルを併用する事の重要性がよく分かったよ」
「お主達、余計なお喋りはそこまでにしておけ!」
イッショが注意を促してくる。その理由は単純明快で、シナジーに囲まれて逃げ場所が無くなったスライムの唯一進める場所は、俺達がいる場所でしかない。それは逃げの一辺倒であったスライムが、俺達ならば勝算があると踏んだということでもある。
『やっぱり、低能な存在よね。数が集まったからイイ気になってるのが、救いようがないわ』
「それでも、数も力なんだから間違ってはいないさ」
巨大なショッピングモールほどありそうなスライムの山。それが巨体とは思えないスピードで動き始める。それだけでも、圧倒されそうな迫力はある。
『それでも、覆せない相性はあるわ。あのスライムじゃ、あなたにをダメージを与えることすら出来ないわ』
「まあ俺の事を魔力だけで判断すれば、そうなるかもしれないな。それに、俺は学習して成長しているからな!」
そしてスライムに魔力が集まり始めると、一斉に小さな突起が現れて一斉に魔毒を放ち始める。
哀しみの精霊とも思えないような、小躍りするような姿。喜ぶ哀しみの精霊なんて存在は成立するのかと、自分の目を疑ってしまう。
「一体が何があったんだ?イッショ、どうなっている?」
同じ精神を司る精霊であるイッショであるならば、タダノカマセイレの行動の意味が理解出来るのかもしれない。
「慌てるな、よく見てみろ!」
しかし、イッショは行動の意味を教えてはくれない。もしかして“よく見てみろ”とは、イッショの行動を指しているのかもしれない。
そう考えてみると、怒りの精霊であるイッショも常に怒りに満ち溢れている存在ではない。どちらかといえば真逆で、周囲の怒りを自身に集めているような気さえする。
「そうか、わざと人を怒らせることで自身に怒りの感情を集めているのか!それならば、少しでも早く失った力を取り戻すことが出来る!」
「違うわいっ!それならば、タダノカマセイレの行動はどうなる!」
その理屈ならば、小躍りすることで哀しみの感情を集めようとしていることになる。小躍りではどうやっても哀しみの感情を集めることには繋がらず、論理的に破綻している。
再び霧の中に見える姿を見るが、あの唯一無二の姿はシナジーでなくタダノカマセイレでしかあり得ない。
「えっ、1人じゃないのか?そんな兄弟がいたなんて···」
さらに飛び込んできた光景は衝撃的で、何体ものタダノカマセイレが巨大なスライムを囲んでいる。
『カショウ、急に何を言い出すの?』
「だけど、姿も魔力もタダノカマセイレそのものだろ!」
『似てるならまだしも、魔力そのものが同じなら兄弟なんてあり得ないでしょ』
同じ雷の中から産まれたルーク達ですら魔力の質は違うし、その違いをハッキリと感じ取るとこは出来る。一番数の多いリッター達であっても、全く同じ魔力の質を持ったものはいない。
「···双子とかなら、可能性はあるんじゃないか。精霊に双子があるかないかは知らないけど」
『カショウ、正気で言ってるの?ただでさえ珍しいタイプの精霊が、いくつ子だって言うのよ!』
しかし感じられる魔力は、十体を超え始める。巨大なスライムを囲んでいるのだから、その数はもっと増えていくだろう。
『シナジーはカショウの魔力を操っているけど、操れるのはカショウの魔力だけじゃないわよ。タダノカマセイレの魔力だって集めることは簡単なのよ』
「でも、シナジーの姿を真似することを拒否していたじゃないか!」
『それは、あの時の歪んだ心のタダノカマセイレでしょ。今の姿は全く違うわ!まさか、カショウまで騙されるとは思わなかったわよ』
若干ムーアは呆れてしまっているが、それほどまでにシナジーの姿はタダノカマセイレにしか見えない。しかし、もっと姿がハッキリ見えてしまえば、やはり濃い霧がタダノカマセイレの姿をつくり出してる事は簡単に見分けがついてしまう。
「色味も真似出来れば、完全に見分けはつかないだろうな」
「スライムのような知能の低い魔物相手なら十分じゃないかしら。それにシナジーの霧の中に入ってしまえば、それだけで十分に効果はあるわよ。誰かさんも、見抜けなかったしね♪」
「ああ、複数の探知スキルを併用する事の重要性がよく分かったよ」
「お主達、余計なお喋りはそこまでにしておけ!」
イッショが注意を促してくる。その理由は単純明快で、シナジーに囲まれて逃げ場所が無くなったスライムの唯一進める場所は、俺達がいる場所でしかない。それは逃げの一辺倒であったスライムが、俺達ならば勝算があると踏んだということでもある。
『やっぱり、低能な存在よね。数が集まったからイイ気になってるのが、救いようがないわ』
「それでも、数も力なんだから間違ってはいないさ」
巨大なショッピングモールほどありそうなスライムの山。それが巨体とは思えないスピードで動き始める。それだけでも、圧倒されそうな迫力はある。
『それでも、覆せない相性はあるわ。あのスライムじゃ、あなたにをダメージを与えることすら出来ないわ』
「まあ俺の事を魔力だけで判断すれば、そうなるかもしれないな。それに、俺は学習して成長しているからな!」
そしてスライムに魔力が集まり始めると、一斉に小さな突起が現れて一斉に魔毒を放ち始める。
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