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タイコの湖
280.毒の正体
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何の躊躇いもなく、ブロッサは水路から水を掬って口に含む。
「フウゥゥーーッ」
いつものブロッサであれば、体内に取り込んで毒を解析するが、今回は直ぐに白いミスト状にして水を吐き出す。
「毒といえば毒だけど魔毒。少し厄介そうネ」
毒には幾つかの種類があり、植物毒や動物毒·細菌毒·鉱物毒があるが、その中でも魔物がつくり出す毒は魔毒と呼ばれている。
「えっ、ヒガバナの毒じゃないのか?」
「ヒガバナ自体は毒はつくれなイワ。根から毒を吸収して、毒を溜め込むダケ。そして必要以上に溜め込んだ時にだけ花を咲かせルノ」
ブロッサはミスト状の水に向かってポイズンミスト放つ。今度はブロッサが魔力を込めてスキルでつくり出した、青い色の毒の霧。それが水路の水と混ざると、激しく反応を始める。青いミストの中から逃れるように、米粒の大きさもないよう小さな粒子が激しく動き出し、ミストの中を暴れまわる。しかし、思うように動くことは出来ていない。。
「何が動いているんだ?」
「魔物ヨ、逃がさないワ!」
そしてブロッサの吐き出したブレスからは、微かな毒の臭いだけでなく動揺する感情の声が聞こえる。
『ブロッサ!もしかして、これは!』
「大丈夫よ。でも少し危ないから、離れてイテ」
ムーアの言葉で俺も精霊樹の杖を構えたが、ブロッサは問題ないといわんばかりに軽く手を挙げて制してくる。
「ポイズンミスト」
ブロッサが、再度ポイズンミストを放つが、今度は先のミストとは違い濃い緑色をしている。そのミスト包まれると、中を暴れまわる魔物の動き徐々に大人しくなり、最後は完全に動きが止まってしまう。
「毒はスライムの仕業ネ」
「それじゃあ、ヒガバナが吸収したのはスライムの魔毒なのか?」
「正確には、スライムのつくり出した魔毒と、スライム自体を吸収したノヨ。」
そして、地面へと落ちた米粒にも満たない小さな粒の正体こそがスライムになる。ブロッサとの毒の戦いに負けて、存在は消滅してゆく。
「スライムの魔毒は強いのか?」
「どんな毒かさえ分かってしまえば、解毒することは簡単ヨ。でも、それは毒への対処でしかなイワ」
しかし簡単という言葉と裏腹に、ブロッサの声は冷たい。
「問題は、スライムを体内に吸収してしまった場合ヨ」
「それは、良くないのか?」
「解毒剤があれば、毒の対処は出来ルワ。だけど解毒剤では、体内に入り込んだスライムを倒す事は出来なイノ」
「だけど、スライムは倒せるんだろ?」
「スライムを倒すには、それなりに負荷がかかルノ。魔毒で消耗すれば、それに耐えきれる体力が残されているかは分からなイワ」
スライムの魔毒を抑え込んでも、宿主の魔力を吸収され続ければ衰弱してしまう。
「ブロッサ姐さん、急いで見て欲しいっす。時間がないかもしれやせん!」
チェンが俺達の会話に割って入って来るが、その顔には余裕がなく青ざめている。チェンに促されるようにして、準備された舟に乗り込む。
舟が進むにつれて、自体の深刻さが浮き彫りになってくる。ブロッサは、水路の至る所からスライムの臭いを感じ取り、イッショもスライムの魔力を感じ取る。
ソウ川から一番離れた場所ですら、簡単にスライムの存在を感じとれる。そして進むにつれて、その存在はさらに強くなる。
「もうスライムは、街全体に入り込んでるワネ」
「俺様も、分かるぞ。水の中に無数の小さな魔力あるな」
スライムの存在を感じ取れたのはブロッサだけだったが、今はイッショも小さなスライムの魔力を捉え始めている。
「水の中に潜んだスライムに気付ける者は少ないだろうな」
『そうね、古の滅びた記憶の力がなかったら気付いていないかもしれないわね』
水路の水には色もなく臭いもしないし、恐らく味もしないのだろう。
しかし、ゴブリンキングの嗅覚はスライムの臭いが感じとり、オークキングの聴覚からはスライムの感情の声を聞き取る。またハーピークイーンの味覚は、スライムの小さな魔力をも感じとってしまう。
「本来のハーピークイーンの味覚は、魔力吸収だけどな」
『カショウ、この水を飲んでみようと思っていない?』
「いや、そんなわけないだろ!」
『ハーピークイーンの味覚でいつでもスライムを吸収出来るのなら、しばらくスライムを体内に吸収して魔力を消費させてやろうとか?』
「そんなリスクをのある事を俺がすると思うか?」
『駄目でも、ブロッサがいるでしょとか思ってない?』
「フウゥゥーーッ」
いつものブロッサであれば、体内に取り込んで毒を解析するが、今回は直ぐに白いミスト状にして水を吐き出す。
「毒といえば毒だけど魔毒。少し厄介そうネ」
毒には幾つかの種類があり、植物毒や動物毒·細菌毒·鉱物毒があるが、その中でも魔物がつくり出す毒は魔毒と呼ばれている。
「えっ、ヒガバナの毒じゃないのか?」
「ヒガバナ自体は毒はつくれなイワ。根から毒を吸収して、毒を溜め込むダケ。そして必要以上に溜め込んだ時にだけ花を咲かせルノ」
ブロッサはミスト状の水に向かってポイズンミスト放つ。今度はブロッサが魔力を込めてスキルでつくり出した、青い色の毒の霧。それが水路の水と混ざると、激しく反応を始める。青いミストの中から逃れるように、米粒の大きさもないよう小さな粒子が激しく動き出し、ミストの中を暴れまわる。しかし、思うように動くことは出来ていない。。
「何が動いているんだ?」
「魔物ヨ、逃がさないワ!」
そしてブロッサの吐き出したブレスからは、微かな毒の臭いだけでなく動揺する感情の声が聞こえる。
『ブロッサ!もしかして、これは!』
「大丈夫よ。でも少し危ないから、離れてイテ」
ムーアの言葉で俺も精霊樹の杖を構えたが、ブロッサは問題ないといわんばかりに軽く手を挙げて制してくる。
「ポイズンミスト」
ブロッサが、再度ポイズンミストを放つが、今度は先のミストとは違い濃い緑色をしている。そのミスト包まれると、中を暴れまわる魔物の動き徐々に大人しくなり、最後は完全に動きが止まってしまう。
「毒はスライムの仕業ネ」
「それじゃあ、ヒガバナが吸収したのはスライムの魔毒なのか?」
「正確には、スライムのつくり出した魔毒と、スライム自体を吸収したノヨ。」
そして、地面へと落ちた米粒にも満たない小さな粒の正体こそがスライムになる。ブロッサとの毒の戦いに負けて、存在は消滅してゆく。
「スライムの魔毒は強いのか?」
「どんな毒かさえ分かってしまえば、解毒することは簡単ヨ。でも、それは毒への対処でしかなイワ」
しかし簡単という言葉と裏腹に、ブロッサの声は冷たい。
「問題は、スライムを体内に吸収してしまった場合ヨ」
「それは、良くないのか?」
「解毒剤があれば、毒の対処は出来ルワ。だけど解毒剤では、体内に入り込んだスライムを倒す事は出来なイノ」
「だけど、スライムは倒せるんだろ?」
「スライムを倒すには、それなりに負荷がかかルノ。魔毒で消耗すれば、それに耐えきれる体力が残されているかは分からなイワ」
スライムの魔毒を抑え込んでも、宿主の魔力を吸収され続ければ衰弱してしまう。
「ブロッサ姐さん、急いで見て欲しいっす。時間がないかもしれやせん!」
チェンが俺達の会話に割って入って来るが、その顔には余裕がなく青ざめている。チェンに促されるようにして、準備された舟に乗り込む。
舟が進むにつれて、自体の深刻さが浮き彫りになってくる。ブロッサは、水路の至る所からスライムの臭いを感じ取り、イッショもスライムの魔力を感じ取る。
ソウ川から一番離れた場所ですら、簡単にスライムの存在を感じとれる。そして進むにつれて、その存在はさらに強くなる。
「もうスライムは、街全体に入り込んでるワネ」
「俺様も、分かるぞ。水の中に無数の小さな魔力あるな」
スライムの存在を感じ取れたのはブロッサだけだったが、今はイッショも小さなスライムの魔力を捉え始めている。
「水の中に潜んだスライムに気付ける者は少ないだろうな」
『そうね、古の滅びた記憶の力がなかったら気付いていないかもしれないわね』
水路の水には色もなく臭いもしないし、恐らく味もしないのだろう。
しかし、ゴブリンキングの嗅覚はスライムの臭いが感じとり、オークキングの聴覚からはスライムの感情の声を聞き取る。またハーピークイーンの味覚は、スライムの小さな魔力をも感じとってしまう。
「本来のハーピークイーンの味覚は、魔力吸収だけどな」
『カショウ、この水を飲んでみようと思っていない?』
「いや、そんなわけないだろ!」
『ハーピークイーンの味覚でいつでもスライムを吸収出来るのなら、しばらくスライムを体内に吸収して魔力を消費させてやろうとか?』
「そんなリスクをのある事を俺がすると思うか?」
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