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オヤの街のハーフリングとオーク
270.オークロードの記憶
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ロードの魔石をマジックソードで砕くと、スキルだけでなくロードの記憶が流れ込んでくる。
「何?」
全身を襲う違和感に、思わず身構えてしまう。
『どうしたの?オークロードの仕業?』
しかし周りから見ても、その違和感には気付けない。
「いや、何かに包まれているような感覚···。何なんだ?」
チュニックが揺れ動き、体全体が光に包まれると何も見えなくなる。しかし、不安な感じは全くしない。
光の中にいる時間は、数十秒なのかもしれないし数分なのかもしれないし。時間の感覚が全くなく、鼓動や脈拍のリズムさえも分からなくなる。そして光が収まると、目の前には女性の姿がある。しかし、薄霧のよう透けてしまっている。
「シナジーなのか?いや、もしかして俺を助けた精霊?」
「違いますよ」
「じゃあ、誰なんだ」
「今はアシスの1つの精霊としか答えれません。古の滅びた記憶を集める者よ、あなたに伝えることがあります」
「俺は集めているつもりはないし。それに聞かないとダメなのか?嫌な予感しかしない」
しかし精霊は、俺の言葉を無視して話を続ける。
「古の滅びた記憶を集める者に告げます。さらに力を欲するならば地に潜り、さらに理を欲するならば天に向かいなさい」
それだけを告げると再び光に包まれ、精霊の姿は見えなくなる。
「ちょっと、待て!それだけなのか?」
徐々に光が収まってゆくが、体が何かに包み込まれているような感覚は残されている。
『カショウ、どうしたの?』
「今、精霊が現れなかったか?」
『何も見えなかったわよ。それより、体は大丈夫なの?無事、オークロードを取り込んだように見えるけど』
「オークロードを···」
そこで、再び現実に戻される。ハーピーロードのように体に見て分かる変化がないかを見てしまう。だが手足や体を見回しても、どこにも変化は見当たらない。
「どこか変わったか?」
『本当に気付かないの?』
「えっ、どこが?」
パッと見の変化はないし、もしかしたら背中や顔なのかもしれない。
『何言ってるのよ。ローブが復活してるでしょ!』
「ああ、これか。確かにな」
黒い靄を浴びてボロボロになってしまったローブを、いつの間にか身に付けている。触った感触も似ているが恐らくはチュニックと一緒で、俺と融合している精霊がつくり出したものに違いない。
「精霊の力が強くなったのか。それならオークロードとも無事共存出来てるのか」
『オークロードの力を吸収して、あなたの回復力が高まったのね。だから精霊の負荷が減ったのよ』
「使い勝手が良いローブだったから、気を利かせてくれたのかしれないな」
『どうしたの、その割には浮かない顔してるわよ』
その原因は、俺の中に流れ込んできたロードの記憶にある。ロードは最初から消滅するつもりでいた。今さら捕らわれたオーク達を解放しても、キングとロードに従うオークはいない。数百年かけて、完全に破綻してしまった関係を修復する事は不可能に近い。
しかしキングとロードの使命は、オークという種を存続させ導く事にあり、それを放棄する事は出来ない。そして選んだ方法が、コピーである守護者にオークの全てを任せて、自らは消滅するという方法。ただ、種を存続させる使命のあるキングとロードが自らの命を絶つことは許されない。
だから湿原に潜み、オークを解放させる事の出来る力を蓄えながら、消滅させることの出来る力を持った者が現れるのを待った。
「オリジナルのキングとロードは消滅し、解放されたオーク達の向かった先にいるのは守護者のキングとロード。再びオヤの草原に、迷いの森に血が流れるかもしれない」
『それは、どうかしら?精霊樹にこだわらないのなら、迷いの森に行く可能性は少ないわよ。それに今の憎むべき相手は、エルフ族ではなくハーフリング族よ』
「そうかもしれないが、争いは必ず起こる」
『それじゃ、どうするの?追いかけて、オークを殺すの?』
「···」
ムーアの言葉に、答えることが出来ない。岩オニに止めを刺す時には、まだ完全に魔物化していないオニだった為に躊躇ってしまった。しかし、今度は完全な魔物であるオーク。それなのに、追いかけて殺そうとは言えない。
「旦那様、それはハーフリング族やエルフ族、それにオークが考える事ですわ。数百年、数千年かけて蓄積された負の連鎖。その責任を取れるのは、旦那様ではありません」
「何?」
全身を襲う違和感に、思わず身構えてしまう。
『どうしたの?オークロードの仕業?』
しかし周りから見ても、その違和感には気付けない。
「いや、何かに包まれているような感覚···。何なんだ?」
チュニックが揺れ動き、体全体が光に包まれると何も見えなくなる。しかし、不安な感じは全くしない。
光の中にいる時間は、数十秒なのかもしれないし数分なのかもしれないし。時間の感覚が全くなく、鼓動や脈拍のリズムさえも分からなくなる。そして光が収まると、目の前には女性の姿がある。しかし、薄霧のよう透けてしまっている。
「シナジーなのか?いや、もしかして俺を助けた精霊?」
「違いますよ」
「じゃあ、誰なんだ」
「今はアシスの1つの精霊としか答えれません。古の滅びた記憶を集める者よ、あなたに伝えることがあります」
「俺は集めているつもりはないし。それに聞かないとダメなのか?嫌な予感しかしない」
しかし精霊は、俺の言葉を無視して話を続ける。
「古の滅びた記憶を集める者に告げます。さらに力を欲するならば地に潜り、さらに理を欲するならば天に向かいなさい」
それだけを告げると再び光に包まれ、精霊の姿は見えなくなる。
「ちょっと、待て!それだけなのか?」
徐々に光が収まってゆくが、体が何かに包み込まれているような感覚は残されている。
『カショウ、どうしたの?』
「今、精霊が現れなかったか?」
『何も見えなかったわよ。それより、体は大丈夫なの?無事、オークロードを取り込んだように見えるけど』
「オークロードを···」
そこで、再び現実に戻される。ハーピーロードのように体に見て分かる変化がないかを見てしまう。だが手足や体を見回しても、どこにも変化は見当たらない。
「どこか変わったか?」
『本当に気付かないの?』
「えっ、どこが?」
パッと見の変化はないし、もしかしたら背中や顔なのかもしれない。
『何言ってるのよ。ローブが復活してるでしょ!』
「ああ、これか。確かにな」
黒い靄を浴びてボロボロになってしまったローブを、いつの間にか身に付けている。触った感触も似ているが恐らくはチュニックと一緒で、俺と融合している精霊がつくり出したものに違いない。
「精霊の力が強くなったのか。それならオークロードとも無事共存出来てるのか」
『オークロードの力を吸収して、あなたの回復力が高まったのね。だから精霊の負荷が減ったのよ』
「使い勝手が良いローブだったから、気を利かせてくれたのかしれないな」
『どうしたの、その割には浮かない顔してるわよ』
その原因は、俺の中に流れ込んできたロードの記憶にある。ロードは最初から消滅するつもりでいた。今さら捕らわれたオーク達を解放しても、キングとロードに従うオークはいない。数百年かけて、完全に破綻してしまった関係を修復する事は不可能に近い。
しかしキングとロードの使命は、オークという種を存続させ導く事にあり、それを放棄する事は出来ない。そして選んだ方法が、コピーである守護者にオークの全てを任せて、自らは消滅するという方法。ただ、種を存続させる使命のあるキングとロードが自らの命を絶つことは許されない。
だから湿原に潜み、オークを解放させる事の出来る力を蓄えながら、消滅させることの出来る力を持った者が現れるのを待った。
「オリジナルのキングとロードは消滅し、解放されたオーク達の向かった先にいるのは守護者のキングとロード。再びオヤの草原に、迷いの森に血が流れるかもしれない」
『それは、どうかしら?精霊樹にこだわらないのなら、迷いの森に行く可能性は少ないわよ。それに今の憎むべき相手は、エルフ族ではなくハーフリング族よ』
「そうかもしれないが、争いは必ず起こる」
『それじゃ、どうするの?追いかけて、オークを殺すの?』
「···」
ムーアの言葉に、答えることが出来ない。岩オニに止めを刺す時には、まだ完全に魔物化していないオニだった為に躊躇ってしまった。しかし、今度は完全な魔物であるオーク。それなのに、追いかけて殺そうとは言えない。
「旦那様、それはハーフリング族やエルフ族、それにオークが考える事ですわ。数百年、数千年かけて蓄積された負の連鎖。その責任を取れるのは、旦那様ではありません」
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