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オヤの街のハーフリングとオーク
246.認められた者
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黒い靄からの声はハッキリと聞こえる。それは消滅したオーク達の感情なのだから、嘘をつく事はなく真実の声だというのも分かる。だが、それだけで全ての事が理解出来て、真実を伝えてくれるとは限らない。
「白く輝く理の樹とは、これのことだろう?」
影の中から、精霊樹の杖を取り出してみせる。オークとエルフとで呼び名は違っても、それだけ特徴のある樹はクオカの森には一つで精霊樹しか存在しない。
「それを、どこで手に入れた?なぜ、それを持つ事が出来る」
「少し力を制御されて形を変えていたが、ゴブリンキングが持っていたぞ」
精霊樹の守り人を自称するオーク達であっても、認められなければ簡単に近付いたり触れる事が出来ない。そして俺が精霊樹の杖を持っていることはキングにとっては驚きで、俺が精霊樹に認められたという証拠でもある。
「今は元の力を取り戻している。持つことは出来るのか?」
そう言って、精霊樹の杖を前に突き出してみせると、キングは一歩後退りする。
「コア、出てきてくれ!」
オークのエルフ族へみせる執念に、草原でコアの姿を出すつもりはなかった。しかし、躊躇うことなくコアを呼び出すと、影の中からネコ耳メイド服のコアが現れる。
「はい、ご主人様♪」
コアは目の前にオークキングが居ても、俺を信用しているせいなのか不安気な顔すら見せない。
「姿を変えているが、エルフか?」
もしかすると、エルフ特有の耳が分からなければ気付かれない可能性もあるとも思ったが、キングはコアがエルフであることに簡単に気付いてしまう。
「貴様、どういうつもりだ。エルフ族を連れてくるとは!」
その言葉を聞いて、頭がズキリと痛む。それは、オークキングの発する殺気や、黒い球から聞こえてくる負の感情のせいではない。
「コア、この杖を持つことが出来るか?」
コアの前に精霊樹の杖を差し出すと、コアはそれを両手でしっかりと受けとる。
「どうだ、何か問題はあるか?」
「はい、大丈夫です。でも私は、カショウ様との契約関係にあるので、それをこの杖も理解しているのだと思います。この杖を使って魔法を行使しろと言われるのなら、どうなるかは分かりません」
コアから精霊樹の杖を受けとると、再びオークキングの前へと突き出す。
「持つことは出来るのか?」
「そんなはずはない。エルフ族は、我らから理の樹を奪ったのだぞ。持つ資格なぞあるわけがない!」
キングは自身のことには触れず、コアが精霊樹の杖に触れたことに激しく反応を示す。
「つべこべ言わずに、自分が持ってみろよ!」
そう言われて初めて、キングは精霊樹の杖に手を伸ばしてくる。奪い取るかのような強引な動きにも見えるし、勢いを付けなければ触れることが出来ないようにも見える。
キングの指が精霊樹の杖に触れる。しかし杖を勢いよく俺から引き放そうとした指は、杖を掴むことなく一瞬で消滅してしまう。それだけでは終わらず、精霊樹の杖を掴むことが出来ずに空振りした手は、キングの元へと戻ってきた時には手首までが消滅している。
「そっ、そんなはずはない。」
キングの感情が揺れ動き、ハッキリと動揺の声が聞こえてくる。自分達こそが精霊樹の正当な所有者であったはずなのに、エルフの小娘が持つことを許されて、オークの王たる自分は触れることすら許されない。
その感情の揺れは、キングのスキルの制御を乱す。黒い球は飛散して靄へと戻り、靄は少しずつ薄れ消えてゆく。
「こんな事があってはならない!許されてイイはずがない!」
再びズキリと頭が痛む。オークキングの影響ではなく、自身の中から溢れ出す感情。
「王としての資質の問題じゃないのか?」
どんなに正しい判断をして過ちを犯さなかったとしても、王となり率いた者には結果責任がある。
それだけではない!常に正しい判断や選択をしてきたと本当に言えるのか?完璧な存在であると言える自信はどこからくるのか?
それはキングに対しての怒りの感情とは少し違うかもしれない。常に俺が抱えている、迷いや葛藤といった感情が溢れ出す。
「エルフ族が悪い。ハーフリング族が悪い。だから、どうした?エルフ族やハーフリング族だけに責任を押し付けて、キングたるお前は何をしているんだ。全てのオークが納得しているのか!」
俺の感情がオークキングへと伝わると、さらに黒い靄の消滅が加速する。
「白く輝く理の樹とは、これのことだろう?」
影の中から、精霊樹の杖を取り出してみせる。オークとエルフとで呼び名は違っても、それだけ特徴のある樹はクオカの森には一つで精霊樹しか存在しない。
「それを、どこで手に入れた?なぜ、それを持つ事が出来る」
「少し力を制御されて形を変えていたが、ゴブリンキングが持っていたぞ」
精霊樹の守り人を自称するオーク達であっても、認められなければ簡単に近付いたり触れる事が出来ない。そして俺が精霊樹の杖を持っていることはキングにとっては驚きで、俺が精霊樹に認められたという証拠でもある。
「今は元の力を取り戻している。持つことは出来るのか?」
そう言って、精霊樹の杖を前に突き出してみせると、キングは一歩後退りする。
「コア、出てきてくれ!」
オークのエルフ族へみせる執念に、草原でコアの姿を出すつもりはなかった。しかし、躊躇うことなくコアを呼び出すと、影の中からネコ耳メイド服のコアが現れる。
「はい、ご主人様♪」
コアは目の前にオークキングが居ても、俺を信用しているせいなのか不安気な顔すら見せない。
「姿を変えているが、エルフか?」
もしかすると、エルフ特有の耳が分からなければ気付かれない可能性もあるとも思ったが、キングはコアがエルフであることに簡単に気付いてしまう。
「貴様、どういうつもりだ。エルフ族を連れてくるとは!」
その言葉を聞いて、頭がズキリと痛む。それは、オークキングの発する殺気や、黒い球から聞こえてくる負の感情のせいではない。
「コア、この杖を持つことが出来るか?」
コアの前に精霊樹の杖を差し出すと、コアはそれを両手でしっかりと受けとる。
「どうだ、何か問題はあるか?」
「はい、大丈夫です。でも私は、カショウ様との契約関係にあるので、それをこの杖も理解しているのだと思います。この杖を使って魔法を行使しろと言われるのなら、どうなるかは分かりません」
コアから精霊樹の杖を受けとると、再びオークキングの前へと突き出す。
「持つことは出来るのか?」
「そんなはずはない。エルフ族は、我らから理の樹を奪ったのだぞ。持つ資格なぞあるわけがない!」
キングは自身のことには触れず、コアが精霊樹の杖に触れたことに激しく反応を示す。
「つべこべ言わずに、自分が持ってみろよ!」
そう言われて初めて、キングは精霊樹の杖に手を伸ばしてくる。奪い取るかのような強引な動きにも見えるし、勢いを付けなければ触れることが出来ないようにも見える。
キングの指が精霊樹の杖に触れる。しかし杖を勢いよく俺から引き放そうとした指は、杖を掴むことなく一瞬で消滅してしまう。それだけでは終わらず、精霊樹の杖を掴むことが出来ずに空振りした手は、キングの元へと戻ってきた時には手首までが消滅している。
「そっ、そんなはずはない。」
キングの感情が揺れ動き、ハッキリと動揺の声が聞こえてくる。自分達こそが精霊樹の正当な所有者であったはずなのに、エルフの小娘が持つことを許されて、オークの王たる自分は触れることすら許されない。
その感情の揺れは、キングのスキルの制御を乱す。黒い球は飛散して靄へと戻り、靄は少しずつ薄れ消えてゆく。
「こんな事があってはならない!許されてイイはずがない!」
再びズキリと頭が痛む。オークキングの影響ではなく、自身の中から溢れ出す感情。
「王としての資質の問題じゃないのか?」
どんなに正しい判断をして過ちを犯さなかったとしても、王となり率いた者には結果責任がある。
それだけではない!常に正しい判断や選択をしてきたと本当に言えるのか?完璧な存在であると言える自信はどこからくるのか?
それはキングに対しての怒りの感情とは少し違うかもしれない。常に俺が抱えている、迷いや葛藤といった感情が溢れ出す。
「エルフ族が悪い。ハーフリング族が悪い。だから、どうした?エルフ族やハーフリング族だけに責任を押し付けて、キングたるお前は何をしているんだ。全てのオークが納得しているのか!」
俺の感情がオークキングへと伝わると、さらに黒い靄の消滅が加速する。
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