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オヤの街のハーフリングとオーク
220.青いオーク対ダーク
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「私も進化してます」
ダークの声が聞こえるが、紫紺の刀が浮かんでいるだけでダークの進化は見た目で分からない。
「俺達の動きについてきてるんだから、進化は分かってるよ」
紫紺の刀自体はマトリが作り出し、陰魔法のシェイドはフォリーが込めている。それに進化の前に作られた紫紺の刀なので、まだ見た目に変化はない。これから紫紺の刀が変化しても、それはマトリやフォリーが進化した事を示すにしかならない。
「イッショだって進化してるんだろ。姿も成長してるんじゃないか?」
「俺様は、安っぽい精霊ではない。そう簡単に姿は見せんぞ!」
「次現れたらボールを投げてやろうと思ったのに残念だな」
「何、本当か···。それが訓練なら付き合ってやらんでもないぞ」
そんな話をしながらも、青いオークに急接近する。体は俺達の方を向いているのに、どこか虚ろな眼差しで宙を見つめ、微動だにせず立ち尽くしている。
「もしかして罠なのか?それともまだ、奥の手を隠してるのか?」
「私が先に行きます」
「油断するなよ!」
あれだけ苦しめられた割には、少し簡単に事が進み過ぎる気がする。赤いオークと引き離され、蓄積された魔法を解放して、そこで駄目だったら諦めてしまうのか。
ダークが加速して、紫紺の刀が青いオークに迫る。それでも、立ち尽くしたまま微動だにしない。
ドンッ
「殺ったのか?」
そしてダークの操る2本の紫紺の刀は、オークの左右胸に突き刺さる。その衝撃でオークは2m程後ろへと飛ばされるが、両足でしっかりと立っている。
「カショウ様、まだです!」
紫紺の刀が胸を貫いた事で、オークの目に生気が戻る。そして紫紺の刀を柄を抱え込むようにして離さない。
紫紺の刀はオークの胸を貫いただけでない。最大の攻撃は込められた陰魔法シェイドであり、オークの胸を崩壊させ始める。しかし、それと同時にオークはシェイドを吸収して放出を始める。
一気に距離を詰めたが、放出されるシェイドで近寄る事が出来ない。
みるみる内に刀身の色は薄れてゆく。しかし紫紺の刀は、俺とフォリーの魔力で出来ている為に、フォリーのシェイドが吸収されても俺の無属性の魔力は影響を受けずに吸収する事は出来ない。
形を保ち崩壊することのない刀は、オークに耐えがたい苦痛を与えているはず。それなのにオークの目には、さらに生気が宿り紫紺の刀を抱え込む力は強くなる。
もう紫紺の刀のシェイドは完全に抜け落ち、透明な刀となっている。オークはシェイドに耐えきってみせ、それだけでは終わらず残された刀を吸収しようと、まだまだ力が込められる。その力で傷口が抉られようも、オークの力は弱まる事がない。
「何て化物なんだ?」
「ヴオオオォォォーーッ」
ダークの呟きが聞こえたのか、青いオークが咆哮で応える。刀が微かに振動を始め、次第に大きくなってゆく。その振動はオークの傷口をさらに抉る事になるが、顔には笑みが浮かぶ。
「ヴオオオオオオォォォォォォーーッ」
さらにもう一度、大きく長く咆哮する。
パキィーーーーン
遂に刀は砕け散ってしまい、キラキラと宙を舞うと、雪が解けるように消えてゆく。オークはダークの攻撃を完全に耐えきってみせた。
しかし、そこでオークの笑みが消える。
バババババッ
音が聞こえるが、俺もオークも何が起こっているかが分からない。しかしナレッジは、何が起こっているかを見ている。
「カショウ、ダークのキャビティだよ」
「キャビティって、どうやったんだ?紫紺の刀は砕けたんじゃないのか?」
「砕け散ったけど、再構築させたみたいだね」
ダークは砕け散った刀を瞬時にミスト化して、短剣のような形に再構築した。オークの背中から突き抜けた刀が短剣へと変わり、そのまま背後から襲いかかる。自然な流れでキャビティの攻撃に繋げ、オークも何が起こったか分からない。
そして、ミスト化された粒子は弾けると同時に衝撃波を放ち、オークの体を破壊してゆく。
徐々に腹部に穴が空き始め、魔石が露になってやっと異変に気付く。でも無属性魔法で弾けて消えてゆく攻撃には、何も吸収するものがない。
呆然と立ち尽くす青いオークに、一気に間を詰めマジックソードを突き刺す。今度はオークの魔石がキラキラと飛び散り、俺の体がスキルの吸収を始める。
それは青いオークが上位種だったことの証明でもある。
ダークの声が聞こえるが、紫紺の刀が浮かんでいるだけでダークの進化は見た目で分からない。
「俺達の動きについてきてるんだから、進化は分かってるよ」
紫紺の刀自体はマトリが作り出し、陰魔法のシェイドはフォリーが込めている。それに進化の前に作られた紫紺の刀なので、まだ見た目に変化はない。これから紫紺の刀が変化しても、それはマトリやフォリーが進化した事を示すにしかならない。
「イッショだって進化してるんだろ。姿も成長してるんじゃないか?」
「俺様は、安っぽい精霊ではない。そう簡単に姿は見せんぞ!」
「次現れたらボールを投げてやろうと思ったのに残念だな」
「何、本当か···。それが訓練なら付き合ってやらんでもないぞ」
そんな話をしながらも、青いオークに急接近する。体は俺達の方を向いているのに、どこか虚ろな眼差しで宙を見つめ、微動だにせず立ち尽くしている。
「もしかして罠なのか?それともまだ、奥の手を隠してるのか?」
「私が先に行きます」
「油断するなよ!」
あれだけ苦しめられた割には、少し簡単に事が進み過ぎる気がする。赤いオークと引き離され、蓄積された魔法を解放して、そこで駄目だったら諦めてしまうのか。
ダークが加速して、紫紺の刀が青いオークに迫る。それでも、立ち尽くしたまま微動だにしない。
ドンッ
「殺ったのか?」
そしてダークの操る2本の紫紺の刀は、オークの左右胸に突き刺さる。その衝撃でオークは2m程後ろへと飛ばされるが、両足でしっかりと立っている。
「カショウ様、まだです!」
紫紺の刀が胸を貫いた事で、オークの目に生気が戻る。そして紫紺の刀を柄を抱え込むようにして離さない。
紫紺の刀はオークの胸を貫いただけでない。最大の攻撃は込められた陰魔法シェイドであり、オークの胸を崩壊させ始める。しかし、それと同時にオークはシェイドを吸収して放出を始める。
一気に距離を詰めたが、放出されるシェイドで近寄る事が出来ない。
みるみる内に刀身の色は薄れてゆく。しかし紫紺の刀は、俺とフォリーの魔力で出来ている為に、フォリーのシェイドが吸収されても俺の無属性の魔力は影響を受けずに吸収する事は出来ない。
形を保ち崩壊することのない刀は、オークに耐えがたい苦痛を与えているはず。それなのにオークの目には、さらに生気が宿り紫紺の刀を抱え込む力は強くなる。
もう紫紺の刀のシェイドは完全に抜け落ち、透明な刀となっている。オークはシェイドに耐えきってみせ、それだけでは終わらず残された刀を吸収しようと、まだまだ力が込められる。その力で傷口が抉られようも、オークの力は弱まる事がない。
「何て化物なんだ?」
「ヴオオオォォォーーッ」
ダークの呟きが聞こえたのか、青いオークが咆哮で応える。刀が微かに振動を始め、次第に大きくなってゆく。その振動はオークの傷口をさらに抉る事になるが、顔には笑みが浮かぶ。
「ヴオオオオオオォォォォォォーーッ」
さらにもう一度、大きく長く咆哮する。
パキィーーーーン
遂に刀は砕け散ってしまい、キラキラと宙を舞うと、雪が解けるように消えてゆく。オークはダークの攻撃を完全に耐えきってみせた。
しかし、そこでオークの笑みが消える。
バババババッ
音が聞こえるが、俺もオークも何が起こっているかが分からない。しかしナレッジは、何が起こっているかを見ている。
「カショウ、ダークのキャビティだよ」
「キャビティって、どうやったんだ?紫紺の刀は砕けたんじゃないのか?」
「砕け散ったけど、再構築させたみたいだね」
ダークは砕け散った刀を瞬時にミスト化して、短剣のような形に再構築した。オークの背中から突き抜けた刀が短剣へと変わり、そのまま背後から襲いかかる。自然な流れでキャビティの攻撃に繋げ、オークも何が起こったか分からない。
そして、ミスト化された粒子は弾けると同時に衝撃波を放ち、オークの体を破壊してゆく。
徐々に腹部に穴が空き始め、魔石が露になってやっと異変に気付く。でも無属性魔法で弾けて消えてゆく攻撃には、何も吸収するものがない。
呆然と立ち尽くす青いオークに、一気に間を詰めマジックソードを突き刺す。今度はオークの魔石がキラキラと飛び散り、俺の体がスキルの吸収を始める。
それは青いオークが上位種だったことの証明でもある。
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