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オヤの街のハーフリングとオーク
218.対処と課題
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「魔法を蓄積して、放出するって何なんだ?」
『青いオークの体を見てたら分かるわよ』
青いオークが魔法を放つと同時に、体中の傷が減っていく。サンダーストームに焼かれて黒くなった痕は、元の色に戻っている。でもそれだけでなく、最初からあった傷痕や所々剥げていった部分も綺麗に治っている。
『何だか、あなたと少し似ているわね』
「どこが似てるんだよ」
『だって、体が暴走しかけてるのを必死に耐えてるんでしょ。オークの傷だって体の中に魔法を閉じ込めてたんだから、お互いに似た者同士じゃない』
「俺は耐えたくて耐えているつもりはないぞ。それに別に痛みがあるわけではないし、苦しいわけでもない。正確に言うならば、必死に耐えているのは精霊の方だからな」
少しだけチュニックに締め付けらるような感覚がする。
『それでも、その精霊に会うために必死になってるでしょ』
「まあな、どんな結果になるか分からないけど、一言くらいは話してみたいな」
『ふん、何だか妬けてくるわね』
「んっ、何て?」
俺達に吹き付けていた風がさらに強まり、ムーアの声を妨げる。さらに草を巻き上げ、それが針のような凶器となって飛んでくる。
今度は魔法の質が変わる。秩序を取り戻した安定した自然な風に変わる。そして、1つにまとまった力は勢いを増してゆく。これだけの魔法が荒れ狂っているなら、赤いオークも簡単に近付けない。
「ウィンドトルネード」
風を風で無力化する。どれだけの魔力を込めて、どれだけの風を起こすか。どのような回転をかければ効率よく相殺出来るか。どんな威力があっても安定していれば安定する程に対処はし易い。
「流石は自分の魔法が相手だと、対処も上手いもんだな」
「イッショ、これが俺の魔法なのか?」
「そうだな、もうオークの貯めこんだ魔法は尽き始めている。どこかの底知れない魔力しか感じないぞ」
「どうせ細かい魔法は、イッショが無効化してるんだろ!」
「雑把な魔法なら、任せておけ。1番でかいのはカショウに任せるぞ!」
押し寄せてくる魔法の中でも1番大きな魔法は、俺の風魔法になる。攻めるよりも守る事で、自身の魔法の特性がハッキリと見えてくる。そして、俺の魔法は単純過ぎて予測しやすい。
原理·原則に則った魔法だからこそ、予測外の動きはしない。ただ際限ない魔力量でゴリ押ししているだげ、下位クラスが相手ならチートと言える。
『単純だけど、バカでかい。繊細とは言えないなって感じかしら』
「代弁してくれなくてもイイんだぞ」
『あら、言葉に出した方がイイ事もあるわよ。スッキリするしね』
しかし、俺の場合は無属性魔法を維持しつつ、他の魔法を行使している。普通に四属性の魔法を行使するのも、2属性の魔法を同時に行使する事になる。
だけど、体の暴走を止めるには、無属性魔法や魔力吸収スキルを上げる必要がある。
「もっと繊細で複雑にか。俺1人でやる必要もないよな。俺には沢山の仲間がいるんだから頼ればイイ、そういう事だよな」
『えっ、そうよ。でもその前にするべき事があるわね』
ハンソが召喚された後の魔力は、俺の魔力が供給される。しかし、召喚魔法自体はソースイの魔力を消費している。召喚するだけなら消費する魔力は小さいが、ソースイの保有する魔力は少ない。だが、ハンソが青いオークの放出する魔法に受け止められても、召喚魔法でハンソを加速させ続けた。
青いオークの放出する魔法も尽きかけているが、ソースイの魔力量も多くない。
「エッーーートーーーーーッ」
2人の我慢比べは、青いオークに軍配が上がる。ソースイの魔力が完全に尽きる前に加速召喚を諦めると、ハンソは大きく弾き飛ばされてしまう。かなりの勢いで飛ばされたハンソは、何回か大きくバウンドした後に柔らかい草原にめり込むようにして止まる。
慌ててハンソに駆け寄ると、ハンソはうつ伏せになって倒れたまま動かない。仰向きにしてやると、ハンソの前面は焼け焦げて黒く変色している。背面は綺麗なままの状態だっただけに、驚きと同時に少しだけ笑えてしまう。
「ソースイ、ハンソは大丈夫なのか?」
「心配はありません。召喚されたままなのですから」
ハンソが一瞬だけ薄目を開けたような気がするが、もう何も突っ込まない。
「死んだフリはやめろ。そんな柔な精霊じゃないだろ」
そう言うとソースイは、静かに黒剣を引き抜く。
『青いオークの体を見てたら分かるわよ』
青いオークが魔法を放つと同時に、体中の傷が減っていく。サンダーストームに焼かれて黒くなった痕は、元の色に戻っている。でもそれだけでなく、最初からあった傷痕や所々剥げていった部分も綺麗に治っている。
『何だか、あなたと少し似ているわね』
「どこが似てるんだよ」
『だって、体が暴走しかけてるのを必死に耐えてるんでしょ。オークの傷だって体の中に魔法を閉じ込めてたんだから、お互いに似た者同士じゃない』
「俺は耐えたくて耐えているつもりはないぞ。それに別に痛みがあるわけではないし、苦しいわけでもない。正確に言うならば、必死に耐えているのは精霊の方だからな」
少しだけチュニックに締め付けらるような感覚がする。
『それでも、その精霊に会うために必死になってるでしょ』
「まあな、どんな結果になるか分からないけど、一言くらいは話してみたいな」
『ふん、何だか妬けてくるわね』
「んっ、何て?」
俺達に吹き付けていた風がさらに強まり、ムーアの声を妨げる。さらに草を巻き上げ、それが針のような凶器となって飛んでくる。
今度は魔法の質が変わる。秩序を取り戻した安定した自然な風に変わる。そして、1つにまとまった力は勢いを増してゆく。これだけの魔法が荒れ狂っているなら、赤いオークも簡単に近付けない。
「ウィンドトルネード」
風を風で無力化する。どれだけの魔力を込めて、どれだけの風を起こすか。どのような回転をかければ効率よく相殺出来るか。どんな威力があっても安定していれば安定する程に対処はし易い。
「流石は自分の魔法が相手だと、対処も上手いもんだな」
「イッショ、これが俺の魔法なのか?」
「そうだな、もうオークの貯めこんだ魔法は尽き始めている。どこかの底知れない魔力しか感じないぞ」
「どうせ細かい魔法は、イッショが無効化してるんだろ!」
「雑把な魔法なら、任せておけ。1番でかいのはカショウに任せるぞ!」
押し寄せてくる魔法の中でも1番大きな魔法は、俺の風魔法になる。攻めるよりも守る事で、自身の魔法の特性がハッキリと見えてくる。そして、俺の魔法は単純過ぎて予測しやすい。
原理·原則に則った魔法だからこそ、予測外の動きはしない。ただ際限ない魔力量でゴリ押ししているだげ、下位クラスが相手ならチートと言える。
『単純だけど、バカでかい。繊細とは言えないなって感じかしら』
「代弁してくれなくてもイイんだぞ」
『あら、言葉に出した方がイイ事もあるわよ。スッキリするしね』
しかし、俺の場合は無属性魔法を維持しつつ、他の魔法を行使している。普通に四属性の魔法を行使するのも、2属性の魔法を同時に行使する事になる。
だけど、体の暴走を止めるには、無属性魔法や魔力吸収スキルを上げる必要がある。
「もっと繊細で複雑にか。俺1人でやる必要もないよな。俺には沢山の仲間がいるんだから頼ればイイ、そういう事だよな」
『えっ、そうよ。でもその前にするべき事があるわね』
ハンソが召喚された後の魔力は、俺の魔力が供給される。しかし、召喚魔法自体はソースイの魔力を消費している。召喚するだけなら消費する魔力は小さいが、ソースイの保有する魔力は少ない。だが、ハンソが青いオークの放出する魔法に受け止められても、召喚魔法でハンソを加速させ続けた。
青いオークの放出する魔法も尽きかけているが、ソースイの魔力量も多くない。
「エッーーートーーーーーッ」
2人の我慢比べは、青いオークに軍配が上がる。ソースイの魔力が完全に尽きる前に加速召喚を諦めると、ハンソは大きく弾き飛ばされてしまう。かなりの勢いで飛ばされたハンソは、何回か大きくバウンドした後に柔らかい草原にめり込むようにして止まる。
慌ててハンソに駆け寄ると、ハンソはうつ伏せになって倒れたまま動かない。仰向きにしてやると、ハンソの前面は焼け焦げて黒く変色している。背面は綺麗なままの状態だっただけに、驚きと同時に少しだけ笑えてしまう。
「ソースイ、ハンソは大丈夫なのか?」
「心配はありません。召喚されたままなのですから」
ハンソが一瞬だけ薄目を開けたような気がするが、もう何も突っ込まない。
「死んだフリはやめろ。そんな柔な精霊じゃないだろ」
そう言うとソースイは、静かに黒剣を引き抜く。
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