精霊のジレンマ

さんが

文字の大きさ
上 下
198 / 329
再構築

198.癖

しおりを挟む
「ウオォォォォーーーッ!お前ら許さんぞ!」

レーシーが叫ぶと同時に、今度はレーシー自身に魔力が集まる。そうすると、クモの足のようになっている内の6つの腕から木の枝が伸びてくる。

「分かりやすいな」

『そうね、凄い単純ね』

魔力の流れでレーシーの攻撃の予測がしやすい。しかし、“魔力の流れで行動が分かりやすい”と親切に教えてやる言い方はしていない。それをレーシーは“分かりやすい性格”と捉えて、さらに逆上してしまう。

「なめ腐りおって!」

さらにレーシーの感情が乱れると僅かに魔力操作も荒くなり、余計に魔力が感じやすくなる。6本の腕がどこに伸びるかが手に取るように分かってしまう。

ウィプス達とダークの紫紺の刀、ナルキのマジックソードが1本ずつを相手にして、残った1本が俺へと向かってくる。
最後に動き出した1本は、他の5本とは違い魔力が多く込められている。しかし、まだまだ魔力が注ぎ込まれ成長を続けながらも、鋭く尖った枝が俺を串刺しにしようと一直線で伸びてくる。

「ウィンドカッター」

「ふんっ」

下位魔法で対抗しようとする俺に、レーシーは少し憤慨したのだろうが、それでも取るに足りない相手と再認識する。
そして発現した3枚の風の刃が、レーシーの攻撃を迎え撃つ。同じ軌道で飛んで行くが、3枚の刃の狙いはそれぞれ違う。最初こそ並んで飛ぶ刃だったが、枝の先端部分と中間部分、それを伸ばしてくる腕を狙って、微妙に軌道や速度を変え始める。

パシッ、パシッ

俺を串刺しにしようとするのだから、それなりの硬さであったり特別な能力があるかもしれないと思ったが、呆気なくウィンドカッターに払われるように切られてしまう。そして、ウィンドカッターは相殺される事もなく、威力を残したままレーシーに向かう。

それに慌てたレーシーは、残りの腕から蔦を出して障壁を張りウィンドカッターを防ぐが、レーシーの腕2本は半ばで切れかかってしまう。その間にも次々と他の腕も同様に撃退され、掠り傷どころか触れる事さえ出来ていない。

「弱くなったんじゃないか?前の時の方が強かったな」

『違うわよ。前は大樹に傷を付けないように加減してたでしょ。今はその必要はないからよ!』

「強がっているけど、所詮は迷いの森の中に入る事が出来ないレベルの魔物なノヨ」

「取り込んだといっても、ボク達の仲間の10体だからね。そのスキルを使うなら、やっぱり強さにも限度があるよ」

「そうだな、2本の腕が切れかかってるもんな」

「ぐぬぬぬっ、こしゃくな小僧め!もう許さんぞ!」

再びレーシーの腕に魔力が流れる。初撃よりも流れる魔力も大きいが、その分魔力探知にも掛かりやすい。
しかし、それはレーシーの弱点を露にする。レーシーは、魔力を流した順にスキルを発動して腕を動かす。確かに最短で攻撃する為には最適の方法なのかもしれない。それに順に魔力を流すといっても、レーシーの魔力操作のスキルは高く僅かな時間差でしかない。
かなり意識して見なければ同時に発動しているようにしか見えないし、戦いの駆け引きの中で、それを見抜く事は難しい。

しかし、イッショがレーシーの魔力を注視している。そして、イッショの性格は真面目でこだわりが強い。嫌々と言いながらも、俺の知らない所でしっかりと魔力探知のスキルを上げている。“俺様の才能だろう”と言う声が聞こえてきそうだが、全然勉強していないといって徹夜で勉強してくるタイプに間違いない。

後は、どの順番でどの腕が動くかまでがハッキリと分かるのだから、ウィプス達が先読みして攻撃すればイイだけになる。

バシュッ、バシュッ、バシュッ、バシュッ、バシュッ

レーシーの腕から枝が伸びた瞬間に、ウィプス達のサンダーボルトが迎撃する。最初は1m程伸びた所で迎撃したが、それが50cm、30cmと徐々に短くなる。
レーシーは最初はウィプス達の反応速度だと思ったのだろうが、2度·3度と繰り返され距離を詰められる事で顔色が変わる。
適当に攻撃して、たまたま予測が当たる事は確率的にもありえない。どこから攻撃を仕掛けるかが読まれている。それに気付いた時にはもう手遅れで、最後はスキルが発動出来ずにサンダーボルトが腕を直撃する。

「どうやって分かった?」

「それを教えると思うのか?」

『それを聞いて親切に喋ると思ってるの?親の顔が見てみたいわよ』

「残念だけど、知能は落ちてルワ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

RiCE CAkE ODySSEy

心絵マシテ
ファンタジー
月舘萌知には、決して誰にも知られてならない秘密がある。 それは、魔術師の家系生まれであることと魔力を有する身でありながらも魔術師としての才覚がまったくないという、ちょっぴり残念な秘密。 特別な事情もあいまって学生生活という日常すらどこか危うく、周囲との交友関係を上手くきずけない。 そんな日々を悶々と過ごす彼女だが、ある事がきっかけで窮地に立たされてしまう。 間一髪のところで救ってくれたのは、現役の学生アイドルであり憧れのクラスメイト、小鳩篠。 そのことで夢見心地になる萌知に篠は自身の正体を打ち明かす。 【魔道具の天秤を使い、この世界の裏に存在する隠世に行って欲しい】 そう、仄めかす篠に萌知は首を横に振るう。 しかし、一度動きだした運命の輪は止まらず、篠を守ろうとした彼女は凶弾に倒れてしまう。 起動した天秤の力により隠世に飛ばされ、記憶の大半を失ってしまった萌知。 右も左も分からない絶望的な状況化であるも突如、魔法の開花に至る。 魔術師としてではなく魔導士としての覚醒。 記憶と帰路を探す為、少女の旅程冒険譚が今、開幕する。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

アレキサンドライトの憂鬱。

雪月海桜
ファンタジー
桜木愛、二十五歳。王道のトラック事故により転生した先は、剣と魔法のこれまた王道の異世界だった。 アレキサンドライト帝国の公爵令嬢ミア・モルガナイトとして生まれたわたしは、五歳にして自身の属性が限りなく悪役令嬢に近いことを悟ってしまう。 どうせ生まれ変わったなら、悪役令嬢にありがちな処刑や追放バッドエンドは回避したい! 更正生活を送る中、ただひとつ、王道から異なるのが……『悪役令嬢』のライバルポジション『光の聖女』は、わたしの前世のお母さんだった……!? これは双子の皇子や聖女と共に、皇帝陛下の憂鬱を晴らすべく、各地の異変を解決しに向かうことになったわたしたちの、いろんな形の家族や愛の物語。 ★表紙イラスト……rin.rin様より。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

何者でもない僕は異世界で冒険者をはじめる

月風レイ
ファンタジー
 あらゆることを人より器用にこなす事ができても、何の長所にもなくただ日々を過ごす自分。  周りの友人は世界を羽ばたくスターになるのにも関わらず、自分はただのサラリーマン。  そんな平凡で退屈な日々に、革命が起こる。  それは突如現れた一枚の手紙だった。  その手紙の内容には、『異世界に行きますか?』と書かれていた。  どうせ、誰かの悪ふざけだろうと思い、適当に異世界にでもいけたら良いもんだよと、考えたところ。  突如、異世界の大草原に召喚される。  元の世界にも戻れ、無限の魔力と絶対不死身な体を手に入れた冒険が今始まる。

処理中です...