精霊のジレンマ

さんが

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183.寝ている間の出来事①

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『カショウ、どうしたの?』

「ああ、俺が寝ている10日間は大丈夫だったのか?」

ムーアは俺の僅かな戸惑いに気付いてくるあたりが油断できないが、何かを思い出したみたいで上手く誤魔化すことに成功する。

『あっ、そうそう、伝えなきゃならない事が沢山あるの』

俺とソースイが天之美禄で意識を失っている間の出来事をムーアが教えてくれる。

流石に俺とソースイの意識が無い状態で、これ以上洞穴の中に籠る事は出来ないので、エルフ族の居る場所まで引き返す事になる。

エルフ族に関しては、光の玉を手に入れて以降の動きはなかった。選抜隊の準備に万全を期すといっても、俺達の結果を待ったようにも思える。当面の敵となるのはゴブリンロードの存在で、もしかするとエルフ達はどちら側にゴブリンロードが居るのかを知っていたのかもしれない。
しかしそれは俺達も同じで、全ての情報をオープンにしている訳ではないのだから、エルフ達が知り得る全ての情報を求める事もない。

それに危ないと察知出来て、深入りしないという選択肢はあったのだから、仮に悪い結果だとしても他人を責めることは出来ない!

そして、俺達がゴブリンロードと、それに取り憑いていたリッチや洞穴を拡大させていたワームを倒した事を知らせると、急にエルフ族が動き出したらしく目下俺達が進んだ方の洞穴を探索している。

「分かりやすくはあるけど、露骨過ぎるな。あの爺エルフは、もっと深謀遠慮かと思ったけどな」

『エルフ達がそこまで、追い詰められていた証拠ではあるわね』

「それで、何か分かったのか?」

『今のところは、さらに洞穴を降りると大きな空間が広がっていて、そこからは幾つもの場所へと繋がっているらしわ。恐らくはオオザの崖にも行けるだろうって話ね』

「”らしい”とか“だろう”って事は、まだ不確かな話でしかないんだな」

『洞穴自体が大きすぎるから、10日じゃ仕方ないわ。それにエルフ族は、洞穴を埋める事に必死になってるわよ』

まだ洞穴の中には、まだまだゴブリン達やリッチの手掛かりが残されているかもしれない。エルフ族や精霊でも気付けない臭いを、俺の嗅覚なら察知出来る。

それに本当にあのライが関係しているのだろうか。もしかしたらライの痕跡が残されているかもしれない。

「エルフ族にとっての優先事項は、謎の解明よりも精霊樹を守る事なんだろ。それなら仕方がないさ」

『あら、簡単に諦めるのね』

「リッチを手玉にとるような相手が出てきたら、今度こそどうする事も出来ないからな。他には何かあったのか?」

この話題は終わりと、次の話を促す。沢山話があるというのだから、まだまだ他にもあるのだろう。

『地下に漂う魔力も、湧き出してくる魔力にも、少しずつ禍々しさが収まってきているみたいなの』

「エルフ達に、オネアミスの毒の話はしたのか?」

『ワームが吐き出す酸や毒の話はしたけど、詳しくは話していないわよ。だってカショウの意識がある所で、カショウ酸の御披露目をしたいでしょ』

「ワームの酸やオネアミスの毒が、魔力を変質させてしまう原因の可能性もあるんだから、ワームの酸に俺の名前を付けるのは止めた方がイイぞ」

『それなら、ブロッサとガーラに調べさせてからにするわ。問題ないならカショウ酸でイイのよね』

「ねえムーア、まだ?」

俺とムーアの話に、待ちきれなくなったクオンが割って入ってくる。

『分かったわよ。クオン、あれを持ってきてくれる』

「うん、取ってくる」

そう言うとクオンが、俺の布団の中に潜り込んでくる。

「えっ、えっ?」

いきなりの行動に慌ててしまうか、俺がベッドで寝ているならば、影に潜るときはこうするしかない。しかし誰かに見られると誤解しか与えないような行動に、少しだけ戸惑ってしまう
ムーアは何も言わないが楽しそうに眺めているので、絶対に後で何かをしてくるのは間違いない。

わざと布団から腕を出して分かりやすく影をつくってみる。しかし、もぞもぞと布団が動き出してクオンが顔を出してくる。そして、目を細めて気持ち良さそうにするクオン。

「クオン、寝ちゃうぞ?何か話があったんだろ?」

慌てて布団から飛び出してくるクオンは、ゴブリンキングの王冠を手に持っている。

「これ、影の中に置いて欲しいの」

「だけど、何が起こるか分からないぞ。危なくないか?」
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