109 / 329
フタガの石峰のハーピー
109.迷い人の暴走
しおりを挟む
岩峰の暮らしが始まって1ヶ月が経ち、やっと魔力吸収の目処がたってきた。
ムーアの考案したスパルタ特訓は一瞬で失敗に終わる。
俺の暴走した魔力吸収スキルと、ハーピークイーンから吸収した味覚スキルである魔力吸収を混同していた。ゴブリンキングやコボルトキングから吸収した嗅覚や視覚のスキルの性能を考えれば、魔力吸収も高性能と考えてしまうのも仕方ないかもれない。
マジックシールドにウィンドカッター、ダークの操るマジックソード、フォリーのシェイド、ミュラーの盾。
俺の持てる全ての攻撃・防御の手段を尽くして、向かってくる魔法に対抗するが、ウィプス達のサンダービームで地面ごと吹き飛ばされる。
『あら、おかしいわ?』
「魔法、少しだけ弱くなってた」
吹き飛ばされて、仰向けに寝転がる俺をムーアとクオンが不思議そうに覗き込む。
「大丈夫って言葉は出ないのか?」
『「・・・・」』
『大丈夫よ!魔力の繋がりで、あなたの状態は分かるのよ』
「うん、これくらいの魔法ならカショウは大丈夫!」
一瞬の間があって出たムーアとクオンの言葉は、間違ってはいないかもしれないが・・・。
結局今の魔力吸収スキルは、暴走するような危険なものではなく、下位魔法ですら消滅させる能力は持っていない。
ただ、魔力を消費しなければならない俺にとっては早く解決しなければならない問題でもある。
魔力を吸収する仕組みを解明するのは地道な作業で、それなりの時間が必要だった。ただ仕組みを理解さえすれば、制御するまでは比較的早かった。
俺の身体から伸びる触手のようなものが、触れたものの魔力を吸収する。しかしストローのように細く、吸収量は少ない。
ただ、ハーピークイーンの影響なのか、手当たり次第に魔力を吸収しようとしてしまうので、触手の存在を常に意識する必要がある。
「僕は、沢山仕事があるから無理だよ。これ以上は掛け持ちできないよ」
「無理だ!絶対に無理だ!幾ら優秀な怒りの精霊の俺様でも、これ以上は無理だ!」
「私達も無理だわ!制御出来ない黒い翼を抱えて飛ぶんだから、これ以上は難しいわよ」
まだ俺は何も言っていないけど、勝手に抵抗を始めるナレッジとイッショにリズとリタ。その慌て方でブレスレットの中の精霊達が、魔力吸収スキルを制御出来る事を教えてくれる。視覚スキルはナレッジが制御を手伝ってくれているから、間違いではないだろう。
「そうだな、役に立つ精霊のイッショにお願いするか?」
「何言ってるんだ、ヒト族。それは契約違反だ!」
「言うことを聞く契約だろ。クオンに確かめてみようか?」
「そっ、そっ、それは。今回だけは特別だ。その代わり早く他の精霊を連れてくる約束だぞ!」
「怒れば怒るほど、お前の能力は上がるから心配してないよ」
「それって、どういう事だぁーーっ!」
そして、岩峰の頂上で再び特訓が始まる。イッショに8本の触手を使って魔力吸収させる。
『いまいちね。精神の精霊とは思えないわ』
「頑張リガ足リナイ」
「違うわ、センスが無いのよ」
「元の世界では、弱い犬ほどよく吠えるって言葉があるぞ」
『回復して実体化出来るようになったら、きっと犬の姿ね!』
魔石の状態になっても力を行使出来る精霊のイッショ。しかし、周りからダメ出しされ、貶され、力不足と評価される。そこから来る怒りが我を失なわせ、失なったイッショの力を回復させる。
その状態になるの待っていたかのように、クオンとブロッサが影から何かを取り出す。そして、ムーアがブレスレットの中に消える。
「ウヒョォォォーーーッ」
怒りとも悲鳴とも聞こえるイッショの声がする。
「クオン、ブロッサ、何したんだ?」
「あのね、リラックス出来るお香があるの」
「精霊ニモ効ク回復薬ヨ」
そこに、ブレスレットからムーアが戻ってくる。
『凄い効果ね。もしかしたら実体化出来るかもしれないわ♪』
満足げな3人が何をしたかは、これ以上は触れないでおこうと思う。
岩峰の頂上では、再び魔力吸収の特訓として魔法が乱れ飛ぶ。ウィプス達のサンダービームは大きな爆発を起こし、頂上の地形を変えてしまう。
その爆発を遠くから見守る蟲人族は、呪い人が暴走し始めたかもしれないと防衛隊を岩峰に召集する。それを間一髪でチェンが止めた事は、カショウの知らない話である。
ムーアの考案したスパルタ特訓は一瞬で失敗に終わる。
俺の暴走した魔力吸収スキルと、ハーピークイーンから吸収した味覚スキルである魔力吸収を混同していた。ゴブリンキングやコボルトキングから吸収した嗅覚や視覚のスキルの性能を考えれば、魔力吸収も高性能と考えてしまうのも仕方ないかもれない。
マジックシールドにウィンドカッター、ダークの操るマジックソード、フォリーのシェイド、ミュラーの盾。
俺の持てる全ての攻撃・防御の手段を尽くして、向かってくる魔法に対抗するが、ウィプス達のサンダービームで地面ごと吹き飛ばされる。
『あら、おかしいわ?』
「魔法、少しだけ弱くなってた」
吹き飛ばされて、仰向けに寝転がる俺をムーアとクオンが不思議そうに覗き込む。
「大丈夫って言葉は出ないのか?」
『「・・・・」』
『大丈夫よ!魔力の繋がりで、あなたの状態は分かるのよ』
「うん、これくらいの魔法ならカショウは大丈夫!」
一瞬の間があって出たムーアとクオンの言葉は、間違ってはいないかもしれないが・・・。
結局今の魔力吸収スキルは、暴走するような危険なものではなく、下位魔法ですら消滅させる能力は持っていない。
ただ、魔力を消費しなければならない俺にとっては早く解決しなければならない問題でもある。
魔力を吸収する仕組みを解明するのは地道な作業で、それなりの時間が必要だった。ただ仕組みを理解さえすれば、制御するまでは比較的早かった。
俺の身体から伸びる触手のようなものが、触れたものの魔力を吸収する。しかしストローのように細く、吸収量は少ない。
ただ、ハーピークイーンの影響なのか、手当たり次第に魔力を吸収しようとしてしまうので、触手の存在を常に意識する必要がある。
「僕は、沢山仕事があるから無理だよ。これ以上は掛け持ちできないよ」
「無理だ!絶対に無理だ!幾ら優秀な怒りの精霊の俺様でも、これ以上は無理だ!」
「私達も無理だわ!制御出来ない黒い翼を抱えて飛ぶんだから、これ以上は難しいわよ」
まだ俺は何も言っていないけど、勝手に抵抗を始めるナレッジとイッショにリズとリタ。その慌て方でブレスレットの中の精霊達が、魔力吸収スキルを制御出来る事を教えてくれる。視覚スキルはナレッジが制御を手伝ってくれているから、間違いではないだろう。
「そうだな、役に立つ精霊のイッショにお願いするか?」
「何言ってるんだ、ヒト族。それは契約違反だ!」
「言うことを聞く契約だろ。クオンに確かめてみようか?」
「そっ、そっ、それは。今回だけは特別だ。その代わり早く他の精霊を連れてくる約束だぞ!」
「怒れば怒るほど、お前の能力は上がるから心配してないよ」
「それって、どういう事だぁーーっ!」
そして、岩峰の頂上で再び特訓が始まる。イッショに8本の触手を使って魔力吸収させる。
『いまいちね。精神の精霊とは思えないわ』
「頑張リガ足リナイ」
「違うわ、センスが無いのよ」
「元の世界では、弱い犬ほどよく吠えるって言葉があるぞ」
『回復して実体化出来るようになったら、きっと犬の姿ね!』
魔石の状態になっても力を行使出来る精霊のイッショ。しかし、周りからダメ出しされ、貶され、力不足と評価される。そこから来る怒りが我を失なわせ、失なったイッショの力を回復させる。
その状態になるの待っていたかのように、クオンとブロッサが影から何かを取り出す。そして、ムーアがブレスレットの中に消える。
「ウヒョォォォーーーッ」
怒りとも悲鳴とも聞こえるイッショの声がする。
「クオン、ブロッサ、何したんだ?」
「あのね、リラックス出来るお香があるの」
「精霊ニモ効ク回復薬ヨ」
そこに、ブレスレットからムーアが戻ってくる。
『凄い効果ね。もしかしたら実体化出来るかもしれないわ♪』
満足げな3人が何をしたかは、これ以上は触れないでおこうと思う。
岩峰の頂上では、再び魔力吸収の特訓として魔法が乱れ飛ぶ。ウィプス達のサンダービームは大きな爆発を起こし、頂上の地形を変えてしまう。
その爆発を遠くから見守る蟲人族は、呪い人が暴走し始めたかもしれないと防衛隊を岩峰に召集する。それを間一髪でチェンが止めた事は、カショウの知らない話である。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる