精霊のジレンマ

さんが

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フタガの石峰のハーピー

81.光の玉

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残念な魔物の代表といえばハーピー。

地上戦で、飛べるというアドバンテージは大きい。どんなに高い壁を造ろうが、簡単に越えられてしまう。
しかしアドバンテージを消してしまうのが残念と言われる所以。元の世界と違って比較的に夜も明るいアシスでも、ハーピー達は視界が失くなってしまう。そうなれば当然、夜襲をかけられれば一溜まりもない。
そしてハーピー達も自分達の弱点を理解し、フタガの岩峰に棲みかにしている。切り立った岩は人の侵入を妨げ、暗くなると岩峰から動く事はない。

行動も棲みかの岩峰が見える範囲で、今までタカオの街には現れた事はない。
岩峰とタカオの街は、ハーピーが飛んでこれるギリギリの距離。タカオの街に着いても、直ぐに戻らないと暗くなってしまう。

ドワーフ達も岩峰とタカオの街の位置関係は把握しているし、ハーピーに対しての警戒は薄い。

「岩峰からならタカオの街が行動範囲の限界なのかもしれないけど、途中に光のある場所があればどうなる?」

『あの光る玉があれば、確かに行動範囲は広がるわね。だけど、ハーピーの上位種達は逃げ出したわよ?』

「時間切れですよって、油断させようとしてるんじゃないか?それに大量のコボルトを見ていたら、使い捨てにされるハーピーが居てもおかしくはないだろ」

『もし、そうだったら、大変な事よ。ハーピーだけじゃなくて、ドワーフもこの街の襲撃に関係していた事になるのよ!』

「知っていたかどうかは分からないし、コボルトの廃鉱は完全に崩壊して証拠はないけどな」

『それで、どうするの?何か考えがあるんでしょ』

影の中から、廃鉱にあった光る玉を取り出す。

『それ、持ってきてたの?』

「俺じゃなくて、クオンだけどな。魔石でも何でも、結構何でも拾ってくれてるぞ」

『確かに、影の中には沢山の物が置いてあるわ』

「好奇心旺盛なドワーフがいるだろ。それに預けたら、面白い事になるじゃないか?」

『領主のマッツと繋がりがあるわよ。信用出来るの?』

「繋がってたら、それはそれで何らかのリアクションがあるだろ」


裏通りにあるドワーフの店を目指す。大通りだけでなく、裏通りに入っても街の損傷は大きい。
そして例外もなく目的のドワーフの店も、屋根や外壁の一部が崩れ落ち、武器や防具が辺りに散乱ている。訪れるのは2回目だけど、お陰で目的の店である事が分かりやすくはあった。

「大丈夫か?」

壁や扉が崩れている為、店の中は丸見えになっている。一応入口であった場所から、声を掛けて店の中を覗くと、そこにはドワーフの店員が倒れている。頭から血を流し、腕には大きな裂傷があり、下半身は崩れた屋根や壁の下敷きになっている。

「うっ、うーっ」

大丈夫かと声を掛けてみたが、そんな状況ではなかった。辛うじて意識はあり俺の声には反応するが、あまり状態は良くは見えない。瓦礫を悠長にどかす時間はない。

「フォリー、頼む!」

「かしこまりました」

俺の袖口から、シェイドが放たれ瓦礫を粉に変えてゆく。
そしてブロッサがポーションで回復させる。飲ませるだけじゃなく、重症度を判断して順序だてて対処してゆく。傷や症状を診るのではなく魔力の流れで重症度を判断する。これは毒でも傷でも、魔力の流れの異常反応は同じらしい。

呼吸が落ち着き、顔色も良くなってくるドワーフ。しかし傷口や損傷した箇所が回復しただけで、失った血や消耗した体力までが回復するわけではない。

「しばらくは、ダメそうだな」

『そうね、今は休ませましょう』

比較的に損壊の少ない場所に、ドワーフを移動させて寝かしてやる。ソースイとハンソは、散らばった店の片付けをしている。

「ブロッサ、もう少し助けるのが遅かったらどうなってた?」

「少シデモ遅カッタラ、死ンデル」

「ブロッサが言うなら、間違いないな。ムーア、どう思う?」

『そうね、店も半壊状態で、死ぬ一歩手前。この事件に関係しているドワーフとは思えないわね』

「それは、どういう事ですか?」

今まで意識が無かったはずのドワーフの目が見開かれており、その眼光は鋭い。

「どこから聞いていた?」

「この事件にドワーフが関係しているのですか?それが本当なら、私は絶対に許さない!」

「あくまでも推測でしかないし、確証はない話だぞ。だけど、名前も知らない奴は教えられないな」

「失礼しました。私はホーソン、今の私があるのはこの街のお陰。だから黙って見ている事は出来ません」
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