69 / 329
タカオの街のドワーフ
69.無属性の真価
しおりを挟む
ムーアの仮説では、召喚された精霊の周りには無属性の魔力でコーティングされた状態になる。
無属性は全ての属性からの影響を受けない為に、召喚された精霊たちは不利属性からの影響を受けない。つまり俺と契約した精霊は、属性の相性に関係無く、全ての精霊が共存出来る。
少しムーアは興奮している。
『全ての精霊が共存出来るのよ。全ての精霊よ!』
「それって、そんなに凄い事なのか?」
いまいち理解しない俺に、ムーアが呆れた顔をする。
『火属性の精霊に護られた水属性の精霊。あなたは、どうやって倒す?それに、火の精霊と、水の精霊が同時に攻撃してくるなんて聞いたことがないわよ!』
「・・・・・・」
確かにどう対応するかと聞かれれば、すぐに答えは出ない。戦闘中であれば尚更で、僅かな時間がアドバンテージになる。
『それと数の力。アシスでは皆が複数の属性を持っている。適性が強ければ強い程、他の属性の精霊とは相性が悪くなる。多くの属性を持てば持つ程、相反する属性も増える。つまり多くの精霊を召喚する事は出来ない!』
「俺には、その制限が無いわけか」
『やっと理解してきたみたいね。無属性しか持たないあなただからこそ、どの精霊とも契約しやすいのよ』
「そうか相性は悪くないのか・・・」
アシスで精霊を探し初めた時は、良い相性の属性が無い為に、どの精霊も姿を現してくれないのかと思う時もあっただけに、感慨深いものがある。
『これは実際に、あなたと契約して初めて分かった話よ。あなたの魔力は暖かくて心地が良いの。混ざりっ気のない、純粋な魔力といえばイイかしら』
「それは、ムーアだけの話じゃないのか?」
『違うわよ、これは皆が感じているわ。ミュラーやリッターだってそう。これが無属性の真価なのかもしれない』
無属性を大きく勘違いしていたかもしれない。
「俺がアシスへと転移した理由は、無属性に関係があるのか?」
『これは、あくまでも私の仮説で、確証はないわ。これが本当であれば大きな力よ』
「アシスの理を超える力であれば、この世界から再び排除されてもおかしくはないな」
『この力は、あまり見せない方がイイわ。相反する精霊の同時召喚、特にこれは危険だわ』
「表に出している精霊達は気を付けるよ」
後はクオンの影の中次第で、どれくらいの精霊達が入れるかが問題になる。
「クオン、影の中は大丈夫か?」
珍しくヒト型のクオンが現れる。クオンがヒト型で現れる時は、話をしたい時か、頭を撫でて欲しい時のどちらかになる。そして今回は前者。
「カショウの影の中わね、影の中なのに明るいの。影の中なのに暖かいの。皆、気持ちがイイの。だから大丈夫なの!」
クオンが俺に嘘をつく事はないし信用しているが、確認の為にムーアを見る。
もし俺が思い詰めて自暴自棄になって無茶な行動に出ても、クオンは何も言わずに間違いなく付いてくる。
ムーアは頷き、クオンの話を肯定する。
「クオン、まだ影の中に精霊達は入れる?」
ムーアがクオンに尋ねるが、影の中に出入りしているムーアは答えを知っているはず。
それなのに敢えてクオンに話を振って会話を引き出すのが、ムーアの優しさでもあり人柄なのかもしれない。
「まだまだ大丈夫よ。カショウが精霊と契約する度に、影の中も広くなるの。カショウの力が強くなれば、影も強くなるのよ。カショウと影は一心同体なの!」
「そうか頼りにしてるよ、クオン!」
そして俺に近付いて、少し背伸びして頭を突き出してくるクオン。これは、頭を撫でろの合図。
軽くよりは、しっかり撫でてやった方がクオンは喜ぶので、ワシワシッと撫でてると目を細めて気持ち良さそうな表情を見せる。
ひとしきり撫でられると、満足して影の中へ戻っていく。
『あなたの無属性はクオンの影の中にも影響を与えているわ。そして、精霊達も無理はしていない事は分かったでしょ!』
「ブロッサやミュラーに対する強気の態度の理由も分かったよ」
『それは違うわよ。ただイジイジした態度が嫌いなだけよ。もっと精霊らしく、しっかりしなさいってなってるだけよ』
「酒と契約を司る精霊を召喚出来る事自体が、俺の強さでもある。沢山の精霊と契約を結べ、精霊達が助けてくれる事も間違いなく俺の強さ。他の誰にも真似出来ない、無属性の真価なのかもしれないな!」
『確証はないけれど、私はそうだと思うわ』
無属性は全ての属性からの影響を受けない為に、召喚された精霊たちは不利属性からの影響を受けない。つまり俺と契約した精霊は、属性の相性に関係無く、全ての精霊が共存出来る。
少しムーアは興奮している。
『全ての精霊が共存出来るのよ。全ての精霊よ!』
「それって、そんなに凄い事なのか?」
いまいち理解しない俺に、ムーアが呆れた顔をする。
『火属性の精霊に護られた水属性の精霊。あなたは、どうやって倒す?それに、火の精霊と、水の精霊が同時に攻撃してくるなんて聞いたことがないわよ!』
「・・・・・・」
確かにどう対応するかと聞かれれば、すぐに答えは出ない。戦闘中であれば尚更で、僅かな時間がアドバンテージになる。
『それと数の力。アシスでは皆が複数の属性を持っている。適性が強ければ強い程、他の属性の精霊とは相性が悪くなる。多くの属性を持てば持つ程、相反する属性も増える。つまり多くの精霊を召喚する事は出来ない!』
「俺には、その制限が無いわけか」
『やっと理解してきたみたいね。無属性しか持たないあなただからこそ、どの精霊とも契約しやすいのよ』
「そうか相性は悪くないのか・・・」
アシスで精霊を探し初めた時は、良い相性の属性が無い為に、どの精霊も姿を現してくれないのかと思う時もあっただけに、感慨深いものがある。
『これは実際に、あなたと契約して初めて分かった話よ。あなたの魔力は暖かくて心地が良いの。混ざりっ気のない、純粋な魔力といえばイイかしら』
「それは、ムーアだけの話じゃないのか?」
『違うわよ、これは皆が感じているわ。ミュラーやリッターだってそう。これが無属性の真価なのかもしれない』
無属性を大きく勘違いしていたかもしれない。
「俺がアシスへと転移した理由は、無属性に関係があるのか?」
『これは、あくまでも私の仮説で、確証はないわ。これが本当であれば大きな力よ』
「アシスの理を超える力であれば、この世界から再び排除されてもおかしくはないな」
『この力は、あまり見せない方がイイわ。相反する精霊の同時召喚、特にこれは危険だわ』
「表に出している精霊達は気を付けるよ」
後はクオンの影の中次第で、どれくらいの精霊達が入れるかが問題になる。
「クオン、影の中は大丈夫か?」
珍しくヒト型のクオンが現れる。クオンがヒト型で現れる時は、話をしたい時か、頭を撫でて欲しい時のどちらかになる。そして今回は前者。
「カショウの影の中わね、影の中なのに明るいの。影の中なのに暖かいの。皆、気持ちがイイの。だから大丈夫なの!」
クオンが俺に嘘をつく事はないし信用しているが、確認の為にムーアを見る。
もし俺が思い詰めて自暴自棄になって無茶な行動に出ても、クオンは何も言わずに間違いなく付いてくる。
ムーアは頷き、クオンの話を肯定する。
「クオン、まだ影の中に精霊達は入れる?」
ムーアがクオンに尋ねるが、影の中に出入りしているムーアは答えを知っているはず。
それなのに敢えてクオンに話を振って会話を引き出すのが、ムーアの優しさでもあり人柄なのかもしれない。
「まだまだ大丈夫よ。カショウが精霊と契約する度に、影の中も広くなるの。カショウの力が強くなれば、影も強くなるのよ。カショウと影は一心同体なの!」
「そうか頼りにしてるよ、クオン!」
そして俺に近付いて、少し背伸びして頭を突き出してくるクオン。これは、頭を撫でろの合図。
軽くよりは、しっかり撫でてやった方がクオンは喜ぶので、ワシワシッと撫でてると目を細めて気持ち良さそうな表情を見せる。
ひとしきり撫でられると、満足して影の中へ戻っていく。
『あなたの無属性はクオンの影の中にも影響を与えているわ。そして、精霊達も無理はしていない事は分かったでしょ!』
「ブロッサやミュラーに対する強気の態度の理由も分かったよ」
『それは違うわよ。ただイジイジした態度が嫌いなだけよ。もっと精霊らしく、しっかりしなさいってなってるだけよ』
「酒と契約を司る精霊を召喚出来る事自体が、俺の強さでもある。沢山の精霊と契約を結べ、精霊達が助けてくれる事も間違いなく俺の強さ。他の誰にも真似出来ない、無属性の真価なのかもしれないな!」
『確証はないけれど、私はそうだと思うわ』
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
RiCE CAkE ODySSEy
心絵マシテ
ファンタジー
月舘萌知には、決して誰にも知られてならない秘密がある。
それは、魔術師の家系生まれであることと魔力を有する身でありながらも魔術師としての才覚がまったくないという、ちょっぴり残念な秘密。
特別な事情もあいまって学生生活という日常すらどこか危うく、周囲との交友関係を上手くきずけない。
そんな日々を悶々と過ごす彼女だが、ある事がきっかけで窮地に立たされてしまう。
間一髪のところで救ってくれたのは、現役の学生アイドルであり憧れのクラスメイト、小鳩篠。
そのことで夢見心地になる萌知に篠は自身の正体を打ち明かす。
【魔道具の天秤を使い、この世界の裏に存在する隠世に行って欲しい】
そう、仄めかす篠に萌知は首を横に振るう。
しかし、一度動きだした運命の輪は止まらず、篠を守ろうとした彼女は凶弾に倒れてしまう。
起動した天秤の力により隠世に飛ばされ、記憶の大半を失ってしまった萌知。
右も左も分からない絶望的な状況化であるも突如、魔法の開花に至る。
魔術師としてではなく魔導士としての覚醒。
記憶と帰路を探す為、少女の旅程冒険譚が今、開幕する。
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
アレキサンドライトの憂鬱。
雪月海桜
ファンタジー
桜木愛、二十五歳。王道のトラック事故により転生した先は、剣と魔法のこれまた王道の異世界だった。
アレキサンドライト帝国の公爵令嬢ミア・モルガナイトとして生まれたわたしは、五歳にして自身の属性が限りなく悪役令嬢に近いことを悟ってしまう。
どうせ生まれ変わったなら、悪役令嬢にありがちな処刑や追放バッドエンドは回避したい!
更正生活を送る中、ただひとつ、王道から異なるのが……『悪役令嬢』のライバルポジション『光の聖女』は、わたしの前世のお母さんだった……!?
これは双子の皇子や聖女と共に、皇帝陛下の憂鬱を晴らすべく、各地の異変を解決しに向かうことになったわたしたちの、いろんな形の家族や愛の物語。
★表紙イラスト……rin.rin様より。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
何者でもない僕は異世界で冒険者をはじめる
月風レイ
ファンタジー
あらゆることを人より器用にこなす事ができても、何の長所にもなくただ日々を過ごす自分。
周りの友人は世界を羽ばたくスターになるのにも関わらず、自分はただのサラリーマン。
そんな平凡で退屈な日々に、革命が起こる。
それは突如現れた一枚の手紙だった。
その手紙の内容には、『異世界に行きますか?』と書かれていた。
どうせ、誰かの悪ふざけだろうと思い、適当に異世界にでもいけたら良いもんだよと、考えたところ。
突如、異世界の大草原に召喚される。
元の世界にも戻れ、無限の魔力と絶対不死身な体を手に入れた冒険が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる