精霊のジレンマ

さんが

文字の大きさ
上 下
55 / 329
タカオの街のドワーフ

55.新たな装備

しおりを挟む
在庫も含めて、300万ウェン分のオオザの崖の石の取引を行う。

「カショウ殿は、これからどうされるのですか?」

「装備を求めてタカオの街に来たので、装備が整えば直ぐに旅に出ます。私の目的は精霊を探すことですので」

「そうですか、もう少し話したかったのですが、それなら残念ですね。良い店を紹介するので、そこで装備品を探してみて下さい」

そこでマッツは領主の仕事に戻って行く。そう言い残して出ていくマッツの動きは、無駄がなく速い。
恐らくは今日のスケジュールは、大きく狂っているには間違いないと思う。

俺達もゆっくりする訳ではないので、金を受け取り館を出る。

舘を出て山を囲む内壁を抜け、タカオ街に出る。内壁からある程度離れたところで、ムーアが出てくる。

『何か問題でもあったの?』

「マッツの持っていたペンから、微かにコボルトの臭いがする」

『タカオの街とコボルトが繋がってるの?』

「それは分からない。ただ装備を整えたら、直ぐに街を出よう」

『それからは、どうするの♪』

「もう分かってて聞いてるだろ。北のコボルトを調べよう。ゴブリンの時と同じ事が起こってるかもしれない」

マッツの紹介してくれた店に向かう。大型の店を想像していたが意外と小さい。

武器や防具の店が集まる地域の大通り沿いではなく、1つ裏に入った通りのこぢんまりとした店。

店の中に入ると、中にはマッツに似た体格のドワーフの店員が居る。誰も客はおらず、店員の方が声を掛けてくる。

「マッツさんの紹介の方ですね。こちらへどうぞ」

マッツから連絡がいっていたみたいで、こちらが何も言っていないのに、店員の見立てが始まる。

俺とソースイの体格に合わせた鎧や武器が次々と前に並べられていく。

「まだ何も言ってないんだけどな・・・」

「マッツから500万の予算で、装備を揃えてくれと言われてるんでね。商売人としては、きっちり500万で揃えるのが腕の見せどころですね!」

「そんな話は聞いていないんだけど?」

「この街の領主としてのマッツの立場と、親としてのマッツの立場の違いでしょ。これは、親のマッツとしての謝礼。それなら、ケチらずにしっかりと500万ウェン分を使いきるのが、私の役目ですよ」

喋りながらも、イロイロな武器や防具が並べられていく。

「そんなに荷物が少ないなら、アイテムボックス持ちでしょ。もちろん、不足分は手出ししてくれれば大丈夫ですよ」

誤魔化す事は難しく、分かる人には簡単には分かってしまうようだ。それならばと気にする事なく、武器・防具を選ぶ。

先に俺の防具を決めてしまう。そうじゃないとソースイが選べなくなる。
俺の希望としては、俺の影の中から道具を出すから、なるべく光を遮断出来る材質や構造が好ましい。

フード付のローブで下地は黒で、表は少し明るいグレー。防刃性能は高く、魔力を流せば少しだけ素早さを上げてくれる特殊効果が付いている。

200万ウェンと少し高い。手に取ったローブを置こうするが、ムーアが俺の腕を掴む。
何も言わないが、笑った目が怖い。

これでソースイは、遠慮なく選べるはず。そして最初に手にしたのが、やはり使いなれた斧。
問題は柄が持ちこたえるかだが、これは店員の保証付の一品。試し切りさせてもらったが、全く問題ない感触のようだ。一応今買えば、替え用の柄も付いてくるらしい。

次の装備を選ぶ前に、ゴブリンロードの漆黒の盾を鑑定してもう。

「何ですか、この盾は?全く材質すら未知。ただ性能は高いだけでなく、何らかのマジックアイテムである可能性が高い。この街でも、これを超える盾は見たことごないです!」

興奮する店員に、そっと漆黒の盾を後ろ下げる。鑑定欲の溢れる店員を余所目に、ソースイの防具を選ぶ。

この周辺の魔物はコボルトやハーピー。洞窟や森や山岳地帯での戦いが続く為、なるべく軽装のものを選ぶ。
これもヤッシの装備が優秀で、どちからといえば破損した時の予備に近い。

他にはツーハンデッドソードと、大弓。これで300万ウェン。きっちり使いきってのお買い物終了。

漆黒の盾を鑑定したい店員が、しつこく食い下がってくる。
俺と店員の間に割って入るように、ムーアが現れる。

『アンクレットを探してるんだけど、何かあるかしら?イイものがあれば、考えてあげるわよ』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...