精霊のジレンマ

さんが

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オオザの崖のゴブリン

45.オオザの崖のゴブリン

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きれいに崖を沿って落ちる巨石。
グラビティで片側だけが重くなった巨石のは、特に回転する事もなく真っ直ぐに、ゴブリンジェネラルを目指して落下する。

ドオオォォォーーーン

という低い音が辺りに響き、すべての物を振動させる。
巨石は砕ける事は無く、その衝撃を全て大地に伝える。大地は、衝撃を吸収する為に姿を変える。
巨石の2割程が大地にめり込む。
ゴブリンジェネラルが存在していた痕跡すら分からない。

「あれじゃあ、入口が塞がってるな?」

『面白半分で行動するからでしょ!』

「んとっ、入口ある」

「塞がってるだろう」と言おうと振り返った先に、ぽっかりと穴が空いている。

「えっと、えっと、中に続いてる」

「巨石の下に入口がある事を知ってたのか?」

「えっと、えっと、押さえてるの疲れた」

「入口を塞ぐ為に巨石を押さえてたのか?」

「んとっ、んとっ・・・うんっ」

「何で塞ぎたかったんだ?」

「んとっ、んとっ、嫌な穴」

『良く理解出来るわね。流石は契約者ってところかしら』

「たぶんな、経験だよ。何となくだけど経験だと思う。その内に、ムーアも出来るようになるって♪」

『穴には何があるのかしら?』

ムーアがさらっと話を流す。

穴は階段状になっえおり、明らかに人為的に加工されたもの。
階段は平らに加工されているが、壁や天井は凸凹でくり貫いただけの状態。巨石のにも耐え、落下する際にも欠片ひとつ出来なかったので、相当に硬い岩だと思う。

オリハルコン、アダマンタイト、ヒヒイロカネといった物があれば、簡単なのかと想いを馳せる。

「俺は大丈夫だけど、ソースイには狭いかな?」

「今回は、ヒーターシールドは諦めます」

「って事は、付いてくるつもりか?」

「私は護衛役ですので、何処へでも付いて参ります」

ソースイの目が冒険モードに入っている。最初はクールなイメージだったが、かなり印象が変わった。

階段は螺旋状に下へと降りている。螺旋状となっている為に、すぐに日の光は届かなくなる。
灯りや照明はないがルーク達が灯り代わりとなってくれる。
火オニの短剣に魔力を流し、松明代わりにもしているが、ルーク達の方が明るい。

明るさは充分だが、灯りがこちらのの存在を教える事になる為、降りるスピードは遅い。
なるべく音を立てずに進むが、微かな足音が響く。
クオンは音による探知の為、レイスだったら気付けないかもしれない。

螺旋階段が終わり、扉が現れる。暗闇の中に現れた、漆黒の扉。
扉の縁には、茨のような植物が彫刻されている。

“中から音、誰か居る”

クオンが警告してくれる。ルーク達を一度召還解除し、ゆっくりと扉を開ける。

中は真っ暗ではない。所々に青白く光が灯っている。見たことはないが火の玉が存在するなら、こんな感じかもしれない。

そっと中に入ると、石から砂地に変わる。

青白い光がはっきりと見えてくる。その下には、見たことのある石柱。
リズとリタが捕まっていた石柱と同じものが8つ。

近くに見える石柱には、鎖が付いているのみで、精霊の姿は見えない。

そして石柱の後ろで動く影がある。
砂を掬い、顔に近づける。掬った砂を捨て、新しい砂を掬い同じ事を繰り返す。しばらく見ていると、今度は砂を捨てない。大事そうに砂を持って、足元の坪に入れる。

そして場所を変えようと、こっちを振り返る。
着ている服はボロボロだが、マントを羽織り頭には王冠。顔はしわくちゃで、目が窪んでいる。何か臭いを嗅ぐ仕草を見せる。

そして俺たちの存在に気付く。

「ギョエエエエーーーッ」

奇声を発して、手に持っていた杖を掲げる。嫌な予感がして横に飛ぶと、直後に砂が巻き上がる。

「ルーク、メーン、カンテ出てこい!」

召還した瞬間に、周囲が明るくなる。

『ゴブリンキングで間違いないわね。見た目はリッチに近いけど』

ウィプス達と一緒にムーアが現れて、教えてくれる。

少しゴブリンキングの様子がおかしい。明るくなったが、こちらを視認出来ていない。臭いを嗅ぐ仕草を見せてから、こちらに向き直る。
そして杖を掲げて魔法を放つ。

再度横に飛び躱す。

『中位魔法、ウィンドトルネードよ!ギリギリで避けると、巻き込まれるから気を付けて』

杖を掲げる予備動作があるから、まだ攻撃予測しやすい。どう攻めるか考えていると、8つの石柱のちょうど中央部に、薄らと影が浮かび始める。

何かが出てくる。危険な存在である事は、間違いない!

「ソースイ、ハンソ、石柱を壊せ!」
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