精霊のジレンマ

さんが

文字の大きさ
上 下
30 / 329
オオザの崖のゴブリン

30.グラビティとブクマ

しおりを挟む
ソースイとの連携を確認する為に、村の結界の外に出る。お互いの戦い方を知らないと、連携出来ないし、なるべくならオニ達には知られたくないからだ。

ソースイ自身も闇魔法について分かっていない事が多い。闇属性自体が忌み嫌われ、オニ族の村では今までに現れた事が無かっただけに、細かな事が分からない。

「グラビティ」

ソースイに魔法を発動させて、ゆっくりと近付く。
10mくらいの距離で、体が重くなる。精霊と融合した体は魔法抵抗力が高く、若干重く感じる程度。
魔法抵抗力は、なかなか確かめれないので、良かったと思う。

検証した結果は現状ではグラビティは、対象となる物を5倍くらいまで重くする事が出来る。スキルが上がれば、さらに効果は上がると思う。
そして、生物の場合は個々に魔法抵抗があるので、効果に違いは出る。


そして、俺達の目の前に居るのは、この森の生物で最強種の1つ、熊の大型種のブクマがいる。
ちなみに最強種は、パントラ呼ばれる虎、コーヒョウと呼ばれる豹、ブクマの3種。

その中でもブクマは少し劣る存在。かなり攻撃的な性格だけど、ちょっと頭が残念。

俺とソースイの連携を確かめるには、単純なブクマは良い相手。

「ヘイヘイヘイッ」

右手を前に出して、掌をうえに向けて指曲げる。

何となく挑発された事が分かったようで、ブクマが猛スピードで突っ込んでくる。

「グラビティ」

 魔法の範囲内に入ったビクマは、頭から上半身とで体重が増える。
急な体重増加でバランスを崩し、頭から地面に突っ込んでしまう。

俺はゆっくりとビクマに近付く。

「魔法抵抗の低い相手なら、ソースイに近付く事も出来ないな」

「カショウ様は問題ないのですか?」

「俺の体は問題ない。ただ持っているモノは重くなってる。これなら相手自身よりも、持っている武器や装備にグラビティをかけた方が効果あるな」

そして、グラビティ魔法の範囲内でも、マジックシールドやマジックソードは自由に扱える。もともと俺の体の一部の魔力体だから、魔法抵抗力も高い。

そして俺の無属性魔法とソースイの闇属性魔法は、相性が良かった。

俺は動けて、敵は動けない。
影響を与えれないという、最高の相性だろう。


欠点といえば、使用する魔力量が多い事。
全範囲に渡ってグラビティを使用する場合は、3分が限界。部分的に範囲を絞れば、倍くらいは使えるだろうが、今のところスキを上げる必要がある。

せっかくブクマが居るから、練習相手になってもらおう。魔法抵抗力も低く、やり易い相手だ。

後退りして、逃げようとするブクマ。

「ヘイヘイヘイッ」

ブクマの体が反応して、後退から全身、そして突進に変わる。頭より体か先に反応するタイプだ。

「グラビティ」

ソースイがブクマの右半身のみを狙って重力操作すると、直進出来ずに斜めに走っていく。

今度は、右半身から上半身を狙うと、ブクマは転がるようにして倒れる。

端からみると、気功の名人に襲いかかる弟子を見ているような感じがする。

「ソースイ、ブクマを傷付けたらダメだぞ。こんなイイ練習相手はいないからな!」

ブクマはアシスでも大型の獣。体重は5百キロはある為に、グラビティの練習にもってこいの相手。

「ブクマで慣れたら、素早い相手にも試してみたいですね」

「そうだな、クオンに探してもらおうか?」



そのクオンは今はルーク達を追いかけて遊んでいる。
人が居る所では俺の影に潜っているから、久しぶりに外で自由に動ける。
影の中がどうなっているかは聞いた事はないが、過ごしやすい所ではないのだろう。

クオンは楽しそうだが、ルーク達が真剣にな眼差しだ。
ルーク達も最近は成長してきた。まだ二頭身の体は変わらないが、顔に表情を見せるようになった。

仕事でも遊びでも、全力でやるのは良い事だと思う。

もの凄い速さで逃げている。追いかけるクオンも楽しそうだ。


“何するの?”

俺の言葉に気付いたクオンが、鬼ごっこを止めて、こっちに寄ってくる。

「まだ遊んでて大丈夫だぞ。後でソースイの練習相手に、パントラかコーヒョウを見つけて欲しいんだ」

“わかった”

クオンが俺の横に来て座ると、ルーク達が前に並ぶ。1人ずつ順番に光ると、それぞれが違う方向に飛んでゆく。

「クオンとルーク達は仲良しだな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

【完結】逃がすわけがないよね?

春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。 それは二人の結婚式の夜のことだった。 何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。 理由を聞いたルーカスは決断する。 「もうあの家、いらないよね?」 ※完結まで作成済み。短いです。 ※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。 ※カクヨムにも掲載。

【完結】勘違いから始まる剣聖側仕えと没落貴族の成り上がりーー側仕えが強いことはそんなにおかしいことなのでしょうかーー

まさかの
ファンタジー
4/21 追記 後日談を少しだけ投稿予定です。新作に時間取られておりますので、5月から数話程度出します。 フェニルの後日談を少しだけお待ちくださいませ。 大罪を犯した親のせいで大変な人生を送る貴族レーシュ・モルドレッドは野心があった。 しかし、他の貴族から嫌われ、常に暗殺の危険に晒されていた。 そんな嫌われ貴族に、剣聖という特殊な加護を持つエステルが世話係である側仕えとしてやってきたのだった。 レーシュは快く出迎え、顔を見ないままでエステルへ愛をささやいた。 お互いの顔が初めて向かい合った時に、レーシュは目を揺らし、体を震わせながら、言葉を詰まらせた。 それは愛の──。 「だれだ……この田舎娘は──!?」 言葉ではなかった!? 本来は貴族しかなれない側仕えに、剣聖の加護を持つ最強の女がなってしまった! いがみあう二人だが、お互いに長所を補い、権力と欲が絡み合う貴族社会を生き抜いていく。 誰も知らなかった。嫌われ貴族の側仕えがあまりにも特殊なことを。 エステルは今日も思う。 側仕えが強いことはそんなにおかしいことなのでしょうか。 小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...