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第2話 黒子天使の業務

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 レヴィンとブランシュが、再開する1ヶ月前。ここは、第6ダンジョンの最深部にある指令室。

 天使には2種類ある。頭に白く光輪のあるハロ 持ちの天使と、光輪の消えてしまった黒子の天使。

 ハロ持ちの天使は、地上の人々に神の天啓を与え、勇者となる者を見極め加護を与えるとともに、ダンジョンの奥へと誘う。そして、ダンジョンの中で待ち受けるのが裏方役となる黒子天使。


「マリク、あのチビッ子が勇者だ。まぐれ当たりでも死なせるなよ」

「あい、分かってやすって、先輩。ミショウの旦那にも連絡済っすから安心して下さい」

「それが心配なんだよ。ミショウのため息程度のブレスだって全滅させる可能性があるんだ。そうなれば、また一からやり直しだぞ」

 正面のモニターに映し出されている6人パーティーの冒険者。戦斧を担いだリザードマンの戦士に、二刀流のヴァンパイアの剣士、狐ミミのある狩人、エルフ族の精霊使い、ヒト族の桃髪聖女。そして、最後の1人がヒト族の勇者。

 熾天使であり第6ダンジョンのダンジョンマスターのフジーコに、勇者として認められ加護を与えられたヒト族の少年ターム。

 対峙しているのは、このダンジョンでも最強種の一角を担う地竜のミショウ。ダンジョンに潜り、初めて出会う竜種でもあり、最初に立ちはだかる大きな壁ともなる存在。

 その壁は高く、勇者パーティーは壊滅状態で、完全に追い込まれている。全ての攻撃や魔法は、地竜の鱗に掠り傷を付けることも出来ずに弾き返され、逆に地竜の腐食のブレスで勇者達の装備はボロボロ。

「でも、まぐれ当たりなら許される気がするっすよ。リア充爆ぜろっすね」

 マリクがそう言う理由は、少年以外のパーティーメンバー全てが女のハーレムパーティーであること。
 これも熾天使フジーコによって仕組まれたものであるが、マリクにとってはリア充勇者にしか見えていない。
 地竜ミショウのブレスによって、仲間達の大きく露出してしまった肌と苦しみ悶える声。それが、少年勇者の心を奮い立たせている。

「そんな、羨ましくなる程でもないだろが」

「そりゃ、先輩が特殊っすよ。幼馴染みがブランシュさんなら、何を見ても魅力は感じないでしょうね」

『レヴィン副司令官。勇者タームが、ペルセウス流星剣の予備動作に入りました』

 ここで俺達の話を遮るように、現地の黒子天使から報告が入る。

「アホな話はお仕舞いだ。そろそろ詠唱が始まるぞ」

 唯一無事で残っている勇者タームの持つ白く光る剣。それは熾天使フジーコが与えた聖剣ペルセウス。そして予想通り、少年タームが聖剣を天に翳して詠唱を始める。
 必殺の一撃を放つには、予備動作と詠唱が必要となる。それは、黒子天使達への合図でもあり、スタンバイする為の時間稼ぎでもある。

「ここで死なせたら、来月の休みも無くなると思え」

「そりゃ、無いっすよ」

 少年勇者の持つ聖剣ペルセウスは、ただの光る剣でしかない。聖剣と言われる秘密は、それに合わせて黒子天使達がフル稼働で動くから。

「タームの肉体改造率は、どれくらい進んでいる」

「現在35%すっね」

「タームの肉体が、カシューのペルセウス流星剣に耐え得る可能性は?」

「現状48%。最大限に回復魔法を行使すれば85%まで上昇するっす」

「よし、身体強化魔法を発動後に、カシューの憑依を許可する」

 勇者タームの詠唱が終わると、傷だらけでボロボロだった体が回復し、体全体が白い光で包まれる。

『黒子天使カシューの憑依完了しました。いつでも撃てます』

「出力80%までだ。全力で撃つなよ」

「了解っす。出力80%、ペルセウス流星剣撃て!」

 マリクが号令をかけると同時に、モニターの勇者タームがペルセウス流星剣を放つ。まだ、駆け出しの勇者が始めて放つ、上位クラスのスキル。

 第6ダンジョンの勇者に求められる資質は、ただ1つ。丈夫で打たれ強い体であること。それだけが、熾天使フジーコが勇者と認定する基準。
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