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第52話 聖女と元聖女
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「皆、落ち着くのです」
そこに現れたのは、洋菓子店店長で元聖女のカーリー。熾天使のコスプレ姿とは違い、聖女の衣を身に纏い、手には身長よりも大きな杖を両手で持っている。杖頭は三日月の形をし、僅かに放たれている聖なる光。
「ハロッーー!」
杖から放たれた聖なる光の輝きが増すと、死神の大鎌が撒き散らす赤い死の光を掻き消してゆく。
「生意気な小娘め。お前の魂は、私自らが喰らってやる。この世のものとは思えぬ地獄の痛み、それを数千年にかけて味わわせてやる」
死神が大鎌を振るうと、今度は幾つもの竜巻が巻き起こる。カーリーを囲むように見せて、ヒケンの森の住人に中の様子を見せない為の仕組みだったが、そこに一人の勇敢な冒険者が飛び込んでゆく。
古びた装備を纏っているが、使い込まれたものではなく中古の安物でしかない。まだまだ顔には幼さが残る駆け出しの冒険者。少しでも力のある冒険者ならば、マリアナの放った魔力を感じとり迂闊には動かない。
「先輩っ、これって恋ってヤツっすかね?」
「ああ、カーリーに惚れてるのは間違いないな。まあ、悪くはないかもしれないな」
その無謀な挑戦を試みた少年は、竜巻に飲み込まれ大きく宙を舞っているが、それと同時にカーリーの心拍数が大きく跳ね上がっている。
「マリク、あの少年を確保しろ。カーリーにも仕事に集中するよう念話魔法を入れてくれ」
「了解っす。未来の勇者様候補はしっかりと捕獲しまーす」
想定外のことではあったが、死神役のマリアナは予定通りに仕事を進める。今度は大鎌を振りかざし、地上のカーリーへと向かって急降下する。
しかし、光の障壁が現れ行く手を阻み、今度は大鎌を障壁に突き立てる。大鎌は砂のようにパラパラと崩れ落ち、地面に到達する前には完全に消滅してしまう。
「青臭いくせに、小癪な小娘め」
「うるさいわ、行き遅れ。これは、熾天使ブランシュ様により賜った、三日月の杖。あなたごときで破れるものではありませんわ」
カーリーは杖を地面に突き立てると、跪き祈りを捧げ始める。
「熾天使ブランシュよ。地の底から溢れる禍々しき魔の光を打ち払い、この地に月の加護を与えたまえ」
杖頭の三日月が輝きを増しながら、ゆっくりと形を満月に変化させる。カーリーが再び杖を掴むと、死神に向かって翳し、厳かに宣言する。
「熾天使ブランシュの名において、この地に加護を与えん」
杖にこめたのは、ブランシュの魔法ハロ。流石にブランシュの力を感じさせるには、黒子天使では力が説得力が足りない。
「全エリアに通達。全ての幻影を解除。繰り返す、全ての幻影解除」
ヒケンの森を覆っていた黒い霧も、無数の地割れも消え去る。だが、それ以上に神々しくもあり優しくもあるブランシュの光が、人々の心に安らぎを与えている。
そしていつの間にか、カボチャ頭の死神は地上に落ちている。死神の体は光の粒子に包まれているが、これは黒子天使達が見せる幻影になる。
「忘れるな。必ずこの地に死……」
死神マリアナは、最後の言葉を残す演技と共にダンジョンの中に回収され姿を消せば、人々は安堵の表情を浮かべている。
「堕天使が誕生しました。しかし、案ずることはありません」
カーリー翳していた杖が、さらに輝きを増す。そして、一筋の光がダンジョンの入口へと向かって放たれる。
「この地は、熾天使ブランシュ様の加護によって守られております。さあ、ブランシュ様の導きに従い、ダンジョンに街を築くのです」
こうしてヒケンの森の町の中心は、ダンジョンの中へ移行してゆく。ダンジョンの1階層は居住区画となり、2階層は商人や職人が集まる商工業区画、3階層は、ブランシュを祀る教会と洋菓子店ブ・ランシュの本店がつくられる。
こうして、ブランシュは第13ダンジョンを守護する熾天使として崇められ、カーリーは聖女と呼ばれる。
「先輩っ、ブランシュさんには聖女の任命権限はないんっすよね?」
「ああ、熾天使代理には権限はないぞ」
カーリーが聖女と呼ばれるだけのはずだったが、ステータスを見れば、再び聖女へと書きかわっている。第13ダンジョン聖女と!
そこに現れたのは、洋菓子店店長で元聖女のカーリー。熾天使のコスプレ姿とは違い、聖女の衣を身に纏い、手には身長よりも大きな杖を両手で持っている。杖頭は三日月の形をし、僅かに放たれている聖なる光。
「ハロッーー!」
杖から放たれた聖なる光の輝きが増すと、死神の大鎌が撒き散らす赤い死の光を掻き消してゆく。
「生意気な小娘め。お前の魂は、私自らが喰らってやる。この世のものとは思えぬ地獄の痛み、それを数千年にかけて味わわせてやる」
死神が大鎌を振るうと、今度は幾つもの竜巻が巻き起こる。カーリーを囲むように見せて、ヒケンの森の住人に中の様子を見せない為の仕組みだったが、そこに一人の勇敢な冒険者が飛び込んでゆく。
古びた装備を纏っているが、使い込まれたものではなく中古の安物でしかない。まだまだ顔には幼さが残る駆け出しの冒険者。少しでも力のある冒険者ならば、マリアナの放った魔力を感じとり迂闊には動かない。
「先輩っ、これって恋ってヤツっすかね?」
「ああ、カーリーに惚れてるのは間違いないな。まあ、悪くはないかもしれないな」
その無謀な挑戦を試みた少年は、竜巻に飲み込まれ大きく宙を舞っているが、それと同時にカーリーの心拍数が大きく跳ね上がっている。
「マリク、あの少年を確保しろ。カーリーにも仕事に集中するよう念話魔法を入れてくれ」
「了解っす。未来の勇者様候補はしっかりと捕獲しまーす」
想定外のことではあったが、死神役のマリアナは予定通りに仕事を進める。今度は大鎌を振りかざし、地上のカーリーへと向かって急降下する。
しかし、光の障壁が現れ行く手を阻み、今度は大鎌を障壁に突き立てる。大鎌は砂のようにパラパラと崩れ落ち、地面に到達する前には完全に消滅してしまう。
「青臭いくせに、小癪な小娘め」
「うるさいわ、行き遅れ。これは、熾天使ブランシュ様により賜った、三日月の杖。あなたごときで破れるものではありませんわ」
カーリーは杖を地面に突き立てると、跪き祈りを捧げ始める。
「熾天使ブランシュよ。地の底から溢れる禍々しき魔の光を打ち払い、この地に月の加護を与えたまえ」
杖頭の三日月が輝きを増しながら、ゆっくりと形を満月に変化させる。カーリーが再び杖を掴むと、死神に向かって翳し、厳かに宣言する。
「熾天使ブランシュの名において、この地に加護を与えん」
杖にこめたのは、ブランシュの魔法ハロ。流石にブランシュの力を感じさせるには、黒子天使では力が説得力が足りない。
「全エリアに通達。全ての幻影を解除。繰り返す、全ての幻影解除」
ヒケンの森を覆っていた黒い霧も、無数の地割れも消え去る。だが、それ以上に神々しくもあり優しくもあるブランシュの光が、人々の心に安らぎを与えている。
そしていつの間にか、カボチャ頭の死神は地上に落ちている。死神の体は光の粒子に包まれているが、これは黒子天使達が見せる幻影になる。
「忘れるな。必ずこの地に死……」
死神マリアナは、最後の言葉を残す演技と共にダンジョンの中に回収され姿を消せば、人々は安堵の表情を浮かべている。
「堕天使が誕生しました。しかし、案ずることはありません」
カーリー翳していた杖が、さらに輝きを増す。そして、一筋の光がダンジョンの入口へと向かって放たれる。
「この地は、熾天使ブランシュ様の加護によって守られております。さあ、ブランシュ様の導きに従い、ダンジョンに街を築くのです」
こうしてヒケンの森の町の中心は、ダンジョンの中へ移行してゆく。ダンジョンの1階層は居住区画となり、2階層は商人や職人が集まる商工業区画、3階層は、ブランシュを祀る教会と洋菓子店ブ・ランシュの本店がつくられる。
こうして、ブランシュは第13ダンジョンを守護する熾天使として崇められ、カーリーは聖女と呼ばれる。
「先輩っ、ブランシュさんには聖女の任命権限はないんっすよね?」
「ああ、熾天使代理には権限はないぞ」
カーリーが聖女と呼ばれるだけのはずだったが、ステータスを見れば、再び聖女へと書きかわっている。第13ダンジョン聖女と!
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