11 / 53
第11話 幼馴染み天使のブランシュ
しおりを挟む
「第13ダンジョンの司令官?何のことですか、ラーミウ様?私は聞いておりませんぞ」
ラーミウの言葉に真っ先に反応したのは、俺ではなくリーフの方になる。
「熾天使筆頭である私の決定を、事前に話す必要はあるのかな?」
しかしリーフのクレームは、いとも簡単に撥ね付けられる。ラーミウの表情は変わらないが、口調は冷たく鋭さが増し、放たれる殺気は熾天使のものとは思えない禍々しささえ感じられる。
熾天使筆頭のラーミウと、第1ダンジョンの司令官であっても黒子天使にしか過ぎないリーフ。そこには圧倒的な権力と、埋めようがない力の差がある。それを改めて伝えられれば、リーフは直立不動で立ち尽くすし、首を左右に振ることしか出来ない。
「思い出したようだが、次は無い。替え幾らでもいる」
この話を、これ以上長引かせるのは危険でしかない。しかし、犯罪者となり裁かれるのを待つだけの身であっても、目の前で進められるきな臭い話に細やかな抵抗はしたくなる。
「俺に拒否権はないのか?」
望まない選択肢であっても、無いよりあった方が可能性は広がる。リーフの目は俺を睨みつけるが、怒りの矛先が向かないように言葉は発することなく、黙ったままでいる。選択を誤れば、前ダンジョン司令官になってしまうのだから。
「笑止な」
しかし、予想に反してラーミウの殺気は収まり、俺の細やかな抵抗に取り合わない。指をパチンとならすと、ラーミウとリーフの姿は消えてしまう。
入れ替わりに、別の天使の姿が徐々に現れてくる。凛とした佇まいで2対4枚の翼は、次の熾天使候補となる証でもあり、第13ダンジョンのダンジョンマスターなのだろう。
徐々にハッキリとするハロ持ち天使の姿。艶のある長い黒髪は、この天使の凛々しさを際立たせている。
俺は、この天使を知っている。
「ブランシュ……」
俺の幼馴染みの天使ブランシュ。大学までは何時も一緒にいたが、俺は黒子天使になることを選び、ブランシュはハロ持ちの天使となることを選んだ。
天界で神々に仕えるハロ持ちの天使と、地上に降りる黒子天使では住む世界が変わる。2度と会うことはないと思っていたブランシュが、今俺の目の前に立っている。
「第13ダンジョンのダンジョンマスター、熾天使代理のブランシュ」
話し終わりに、僅かに下唇を噛む癖。痩せ我慢し無理をしている時に見せる仕草は、昔も今も変わっていない。俺が地上に降りる時に見送ってくれた、最後に見せた顔が今でも鮮明に記憶に残っている
陰謀の渦巻く天使の世界に、ブランシュはあまりにも純粋過ぎる。でも、それがサージが選んだ道ならば、俺が止めることは出来なかった。
「熾天使代理なのか?」
「崩壊したダンジョンの残存する黒子天使を集めて、第13ダンジョンをつくります。場所は、ヒケンの森の廃ダンジョン」
「そうか……全てラーミウはお見通しってわけか」
第6ダンジョンから魔物達を転移させたのが、ヒケンの森の廃ダンジョン。この世界で、初めてブラックアウトを起こしたダンジョンでもあり、立入ることを禁じられた場所の一つ。
だが数万年の時を経て、禁忌を起こした災厄の影響は消え去っている。それを知っているのは俺を含めて一部の者しかいないはずだった。
「ダンジョンマスターとなる者には、ダンジョンの司令官を決める絶対的な権限があります。第13ダンジョンの司令官になってくれますか?レヴィン」
「断れる訳がないだろ」
ラーミウの思惑通りになることが気に食わない。しかし、再び俺の目の前に現れたブランシュを見捨てることなんて出来ない。
ブランシュの目には涙から溢れだし、俺へと抱きついてくる。
「待てって!ここは牢獄の中だぞ。監視の目だってある」
しかし、根性なしの俺はブランシュを押し返すことも、受け止めることも出来ない。
そして、俺たち2人を魔法が包み込む。間違いなくラーミウの仕業で、天界から地上へと転移させられている。若干殺気のこもった魔力は、早く仕事をしろと言っているのかもしれない。
ラーミウの言葉に真っ先に反応したのは、俺ではなくリーフの方になる。
「熾天使筆頭である私の決定を、事前に話す必要はあるのかな?」
しかしリーフのクレームは、いとも簡単に撥ね付けられる。ラーミウの表情は変わらないが、口調は冷たく鋭さが増し、放たれる殺気は熾天使のものとは思えない禍々しささえ感じられる。
熾天使筆頭のラーミウと、第1ダンジョンの司令官であっても黒子天使にしか過ぎないリーフ。そこには圧倒的な権力と、埋めようがない力の差がある。それを改めて伝えられれば、リーフは直立不動で立ち尽くすし、首を左右に振ることしか出来ない。
「思い出したようだが、次は無い。替え幾らでもいる」
この話を、これ以上長引かせるのは危険でしかない。しかし、犯罪者となり裁かれるのを待つだけの身であっても、目の前で進められるきな臭い話に細やかな抵抗はしたくなる。
「俺に拒否権はないのか?」
望まない選択肢であっても、無いよりあった方が可能性は広がる。リーフの目は俺を睨みつけるが、怒りの矛先が向かないように言葉は発することなく、黙ったままでいる。選択を誤れば、前ダンジョン司令官になってしまうのだから。
「笑止な」
しかし、予想に反してラーミウの殺気は収まり、俺の細やかな抵抗に取り合わない。指をパチンとならすと、ラーミウとリーフの姿は消えてしまう。
入れ替わりに、別の天使の姿が徐々に現れてくる。凛とした佇まいで2対4枚の翼は、次の熾天使候補となる証でもあり、第13ダンジョンのダンジョンマスターなのだろう。
徐々にハッキリとするハロ持ち天使の姿。艶のある長い黒髪は、この天使の凛々しさを際立たせている。
俺は、この天使を知っている。
「ブランシュ……」
俺の幼馴染みの天使ブランシュ。大学までは何時も一緒にいたが、俺は黒子天使になることを選び、ブランシュはハロ持ちの天使となることを選んだ。
天界で神々に仕えるハロ持ちの天使と、地上に降りる黒子天使では住む世界が変わる。2度と会うことはないと思っていたブランシュが、今俺の目の前に立っている。
「第13ダンジョンのダンジョンマスター、熾天使代理のブランシュ」
話し終わりに、僅かに下唇を噛む癖。痩せ我慢し無理をしている時に見せる仕草は、昔も今も変わっていない。俺が地上に降りる時に見送ってくれた、最後に見せた顔が今でも鮮明に記憶に残っている
陰謀の渦巻く天使の世界に、ブランシュはあまりにも純粋過ぎる。でも、それがサージが選んだ道ならば、俺が止めることは出来なかった。
「熾天使代理なのか?」
「崩壊したダンジョンの残存する黒子天使を集めて、第13ダンジョンをつくります。場所は、ヒケンの森の廃ダンジョン」
「そうか……全てラーミウはお見通しってわけか」
第6ダンジョンから魔物達を転移させたのが、ヒケンの森の廃ダンジョン。この世界で、初めてブラックアウトを起こしたダンジョンでもあり、立入ることを禁じられた場所の一つ。
だが数万年の時を経て、禁忌を起こした災厄の影響は消え去っている。それを知っているのは俺を含めて一部の者しかいないはずだった。
「ダンジョンマスターとなる者には、ダンジョンの司令官を決める絶対的な権限があります。第13ダンジョンの司令官になってくれますか?レヴィン」
「断れる訳がないだろ」
ラーミウの思惑通りになることが気に食わない。しかし、再び俺の目の前に現れたブランシュを見捨てることなんて出来ない。
ブランシュの目には涙から溢れだし、俺へと抱きついてくる。
「待てって!ここは牢獄の中だぞ。監視の目だってある」
しかし、根性なしの俺はブランシュを押し返すことも、受け止めることも出来ない。
そして、俺たち2人を魔法が包み込む。間違いなくラーミウの仕業で、天界から地上へと転移させられている。若干殺気のこもった魔力は、早く仕事をしろと言っているのかもしれない。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
悪役令嬢の騎士
コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。
異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。
少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。
そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。
少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~
結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は
気が付くと真っ白い空間にいた
自称神という男性によると
部下によるミスが原因だった
元の世界に戻れないので
異世界に行って生きる事を決めました!
異世界に行って、自由気ままに、生きていきます
~☆~☆~☆~☆~☆
誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります!
また、感想を頂けると大喜びします
気が向いたら書き込んでやって下さい
~☆~☆~☆~☆~☆
カクヨム・小説家になろうでも公開しています
もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~>
もし、よろしければ読んであげて下さい
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる