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〜オマケ後日談〜
続・転生ヒロインやる気出す
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「ヤッホ~! ソニアちゃん、元気~?」
テーブル下のにぎり拳でやる気注入中のリナの耳に聞こえたチャラい声。
スタンと現在パーティーを組んでいる若手の冒険者で、現在ソニアに猛アタック中 ――本人談―― のレオナルドである。
片耳にはシャラシャラ音のするくらい長い派手なピアス、首には琥珀色の魔石結晶の付いたチョーカー。
明るいハニーブロンドのショートカットはヘアオイルで後ろに向けて流してオールバックにしている。
すっかりリナも忘れていたのだがこのレオナルドという男は『ドキ☆キュン魔法少女リーナ♡貴方のハート狙い撃ちしちゃうぞ☆』シーズン2の攻略対象者の1人だったのだ。
「うへえ・・・」
最初会った時はこの髪型ではなく、ごくごく普通のツーブロックスタイルだったので実は全く気が付かなかったのだ。
最近髪が伸びたらしく、このヘアスタイルになって初めて、
『見たことがあるような、ないような?』
とモヤッとしていたのだが、魔石商人から手に入れたという守りの護符のピアスと物理攻撃反射のネックレスを彼が装備した後で、やっと思い出したのである。
しかも帝国とは真反対の王国の出身で高位貴族の次男だったか3男だったか。そんな出自で非常に面倒なので彼女としては相手にしたくない男でもあるのだ。
基本女好きなのでリナにもコナは掛けてきたが彼女の塩対応と、何故かスタンの睨みで結局ソニアに戻って行った・・・
里奈にとっては、シーズン2はソフィアの出番が殆どなかったゲームだったので印象が薄い。
水彩画のような背景で王宮の謁見室に座っている王太子妃ソフィアを見るに至るだけのゲームだったので、それこそ冷凍室に放り込んだばかりの製氷皿の上に張りかけの氷程度の薄さの印象のゲームだったのだから仕方ないだろう・・・。
「ああ、レオナルドさん。お疲れ様です」
ソニアはペコリとスタンに向かい頭を下げると
「それでは失礼します」
彼女もレオナルドにはさして興味もないらしく、あっさり踵を返して去っていく。
「アレ? ソニアちゃん? ねえねえこないだの返事は~?」
その後ろを追いかけていくレオナルド。
「あれ、何ですか?」
「ああ、彼女はレオナルドが苦手らしいな」
苦笑いで見送るスタンを座ったまま見上げる里奈。
――ああ、その笑いジワが素敵です。何ていうか可愛い・・・――
ぽ―っと頬をピンク色に染めて見つめていると、彼の青い目と視線がぶつかった。
「おい・・・?」
「スタンさん、笑うと可愛いですね」
困惑して、里奈の顔を見ると肩を竦める。
「オジサンをからかうなよ」
「だって、本当のことですから」
ウフフと可憐に笑うリナは文句なしに美少女、いや、もうすぐ20歳を迎えるので美しい女性と言っても良いだろう。
この世界では16歳が成人だが結婚適齢期と言われる年齢は結構長く、それこそ30歳目前迄は何も言われることもないのだ。
しかも平民は結婚も再婚も平気である。
魔物に襲われて命を落とす様な世界なので、誰の子であろうが皆で育てる風潮がある為だ。
そのためか年の差婚もあまり周りも気にしない――
なんて素晴らしい世界だろうと、胸の内で小躍りするリナ。
『頑張ってドキ♡キュン♡さえさせれば、両思いになってゴールインだって夢じゃないものッ』
1人で腹の中で選手宣誓の如く、スタンを落とすために再度気合を入れる。
「ほら行くぞ。弟の護符を見に行くんだろう?」
彼に手を差し出されて
『え?』
という顔に一瞬なったがこの好機を逃すものかとガッツリ握る。
「はい、宜しくお願いします。弟の属性魔法は私と違いすぎなので。よくわからないんです」
そう言って立ち上がる。
リナの得意な魔法は火、雷、土だが、弟は水と風で、彼女の得意な属性とは全く違っていた。
まだ学園に入学する迄に1年あるが魔力量がリーナと同じように多いらしく、魔力暴走を起こしかけたと両親から手紙が来たのだ。
リーナの時は、まだ里奈が目覚めておらず火の要素だけだったので店の勧める護符で良かったが、複合系の子供の場合は慎重に選ばなければいけない。
それを理由にぼったくりのような金額を請求してくる魔石商人も王都には多くいるからだ。
この辺りの政治的な改革はヤンデレ王太子が頑張っているらしいが、まだまだ悪徳商人や小狡い小売店も多い為平民は同じ属性持ちの知合いに選んでもらう事が多い。
今回里奈は、万能魔法いのソフィアに相談したが、
『水と風、それスタンさんの得意な魔法じゃない? デートの口実になっていいじゃん』
と、かる~く断られ、本日のデート()が実現したのである・・・ と言っても何だかんだ理由を付けては2週間毎にほぼ会っているのだが・・・
「大通りの店だと値段が高いだけでぼったくってくるから職人街に行くぞ」
スタンに手を引かれて歩き出すリナ。
頭の中はお花が咲き乱れ中である。
「そういやあ俺な、友人2人に借金を返し終わったんだよ」
「え? 例のギルドの分ですか?」
「ああ。意外に早く終わったんだよ。高額報酬の依頼を選んで受けてたからな」
「・・・じゃあ、ギルドに戻るんですか?」
手を繋いだままで一歩だけ先を歩いていた彼が首を傾げる。
「ウ~ン、ギルド職員って思った以上に薄給なんだよな」
「え、そうなんですか?」
「ああ。冒険者やってたら収入が不定期だけど報酬は結構多くて貯金も可能だ」
スタン、こう見えてもS級冒険者なのである。
まあ、だから魔人に器として捕まったのだが・・・
テーブル下のにぎり拳でやる気注入中のリナの耳に聞こえたチャラい声。
スタンと現在パーティーを組んでいる若手の冒険者で、現在ソニアに猛アタック中 ――本人談―― のレオナルドである。
片耳にはシャラシャラ音のするくらい長い派手なピアス、首には琥珀色の魔石結晶の付いたチョーカー。
明るいハニーブロンドのショートカットはヘアオイルで後ろに向けて流してオールバックにしている。
すっかりリナも忘れていたのだがこのレオナルドという男は『ドキ☆キュン魔法少女リーナ♡貴方のハート狙い撃ちしちゃうぞ☆』シーズン2の攻略対象者の1人だったのだ。
「うへえ・・・」
最初会った時はこの髪型ではなく、ごくごく普通のツーブロックスタイルだったので実は全く気が付かなかったのだ。
最近髪が伸びたらしく、このヘアスタイルになって初めて、
『見たことがあるような、ないような?』
とモヤッとしていたのだが、魔石商人から手に入れたという守りの護符のピアスと物理攻撃反射のネックレスを彼が装備した後で、やっと思い出したのである。
しかも帝国とは真反対の王国の出身で高位貴族の次男だったか3男だったか。そんな出自で非常に面倒なので彼女としては相手にしたくない男でもあるのだ。
基本女好きなのでリナにもコナは掛けてきたが彼女の塩対応と、何故かスタンの睨みで結局ソニアに戻って行った・・・
里奈にとっては、シーズン2はソフィアの出番が殆どなかったゲームだったので印象が薄い。
水彩画のような背景で王宮の謁見室に座っている王太子妃ソフィアを見るに至るだけのゲームだったので、それこそ冷凍室に放り込んだばかりの製氷皿の上に張りかけの氷程度の薄さの印象のゲームだったのだから仕方ないだろう・・・。
「ああ、レオナルドさん。お疲れ様です」
ソニアはペコリとスタンに向かい頭を下げると
「それでは失礼します」
彼女もレオナルドにはさして興味もないらしく、あっさり踵を返して去っていく。
「アレ? ソニアちゃん? ねえねえこないだの返事は~?」
その後ろを追いかけていくレオナルド。
「あれ、何ですか?」
「ああ、彼女はレオナルドが苦手らしいな」
苦笑いで見送るスタンを座ったまま見上げる里奈。
――ああ、その笑いジワが素敵です。何ていうか可愛い・・・――
ぽ―っと頬をピンク色に染めて見つめていると、彼の青い目と視線がぶつかった。
「おい・・・?」
「スタンさん、笑うと可愛いですね」
困惑して、里奈の顔を見ると肩を竦める。
「オジサンをからかうなよ」
「だって、本当のことですから」
ウフフと可憐に笑うリナは文句なしに美少女、いや、もうすぐ20歳を迎えるので美しい女性と言っても良いだろう。
この世界では16歳が成人だが結婚適齢期と言われる年齢は結構長く、それこそ30歳目前迄は何も言われることもないのだ。
しかも平民は結婚も再婚も平気である。
魔物に襲われて命を落とす様な世界なので、誰の子であろうが皆で育てる風潮がある為だ。
そのためか年の差婚もあまり周りも気にしない――
なんて素晴らしい世界だろうと、胸の内で小躍りするリナ。
『頑張ってドキ♡キュン♡さえさせれば、両思いになってゴールインだって夢じゃないものッ』
1人で腹の中で選手宣誓の如く、スタンを落とすために再度気合を入れる。
「ほら行くぞ。弟の護符を見に行くんだろう?」
彼に手を差し出されて
『え?』
という顔に一瞬なったがこの好機を逃すものかとガッツリ握る。
「はい、宜しくお願いします。弟の属性魔法は私と違いすぎなので。よくわからないんです」
そう言って立ち上がる。
リナの得意な魔法は火、雷、土だが、弟は水と風で、彼女の得意な属性とは全く違っていた。
まだ学園に入学する迄に1年あるが魔力量がリーナと同じように多いらしく、魔力暴走を起こしかけたと両親から手紙が来たのだ。
リーナの時は、まだ里奈が目覚めておらず火の要素だけだったので店の勧める護符で良かったが、複合系の子供の場合は慎重に選ばなければいけない。
それを理由にぼったくりのような金額を請求してくる魔石商人も王都には多くいるからだ。
この辺りの政治的な改革はヤンデレ王太子が頑張っているらしいが、まだまだ悪徳商人や小狡い小売店も多い為平民は同じ属性持ちの知合いに選んでもらう事が多い。
今回里奈は、万能魔法いのソフィアに相談したが、
『水と風、それスタンさんの得意な魔法じゃない? デートの口実になっていいじゃん』
と、かる~く断られ、本日のデート()が実現したのである・・・ と言っても何だかんだ理由を付けては2週間毎にほぼ会っているのだが・・・
「大通りの店だと値段が高いだけでぼったくってくるから職人街に行くぞ」
スタンに手を引かれて歩き出すリナ。
頭の中はお花が咲き乱れ中である。
「そういやあ俺な、友人2人に借金を返し終わったんだよ」
「え? 例のギルドの分ですか?」
「ああ。意外に早く終わったんだよ。高額報酬の依頼を選んで受けてたからな」
「・・・じゃあ、ギルドに戻るんですか?」
手を繋いだままで一歩だけ先を歩いていた彼が首を傾げる。
「ウ~ン、ギルド職員って思った以上に薄給なんだよな」
「え、そうなんですか?」
「ああ。冒険者やってたら収入が不定期だけど報酬は結構多くて貯金も可能だ」
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