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91 気が付け無かったのは・・・
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この1年の間婚姻式の準備を進める事に忙しくしていたソフィアは異世界での出来事が自分に与えた影響をふと今頃になって思い出す。
前世の地球、この世界から言えば異世界で過去の自分を詐欺のような契約で雇い入れ、死ぬ間際まで社畜のように過すことを受け入れざるを得なかった会社に対しての報復行動を起こすつもりなど最初は無かったのだ。
「私、意外に執念深かったのね。自分でも驚きよ?」
ソフィア本人も忘れたつもりでいたのに、何軒か家電製品のショプを見て回るうちに自分の開発した技術が小出しにされ使われているモノが意外に多いことに気がついた。
『君のつくるものは市場には出せんよ』
『なんでですか! 何処が駄目なんです?』
『コストが掛かり過ぎるんだよそれでは企業としては利益が少なすぎるだろう? そのくらいの事も分からんのか? これだから現場を知らん高学歴の研究員は使えんのだ』
ため息を付くフリをしながらニヤニヤする上司―― ついでにその上司の事も思い出したのだ。
――くそう! 特許取ろうとしたら邪魔したのはこういう事だったのねッ!
そして報復行動に出たのだ。
×××
「私の作った物を大嫌いな連中に何1つ渡さない! 残してやるもんかって夢中になって怒りながら色んな事を短期間でやったよね」
さり気なく彼女の肩を抱き締めてくるシルファの胸にポスンと頭を預ける。
「あっちの箱庭の持ち主に貰えた時間が30時間程度だったからな」
「うん。濃い10日間だったわ。続けてあっちに存在できる時間は3時間って決まりだったし」
1日24時間のうちの3時間が10日分、つまり滞在日程を時間に換算すると30時間しか居られないという制限付き。
しかも合間に里奈の入院先へ行き治癒魔法も使わなければいけなかったソフィア達。
その為毎日行くわけではなく間隔を開けて約半年かけて異世界渡りを行ったのだ。
これは里奈の治療の進み具合の違和感をなくす為でもあったため、行った日はばらばらになる上に治療を行った後の残り時間を使い急ピッチで断罪の準備を進めたのである。
「自分でも不思議なんだけど、忙しくしてるうちに、ホントにどうでも良くなって来て最後に笑えてきちゃってさ。最後は会長の銅像を殴って壊すのが楽しくなっちゃって。崩れた像を見下ろして、ああやっと終わったんだってスッキリしたの」
「確かに楽しそうだったな」
ソフィアの頬に掛かるベリーピンクの髪の毛をそっと耳に掛けてやるシルファ。
「しかもシルファが『俺以外の男の名を呼ぶのは許さーん!』って叫んじゃってさ」
「言うな。黒歴史だ」
恥じ入るように目を閉じる殿下。
「え? でもあれで私はシルファに愛されてるんだって初めて本当に実感したのよ?」
「え?」
鳩が豆鉄砲をくったような顔になり、己の腕の中にいるソフィアの顔をまじまじと見つめる。
「だってシルファって小さい頃からなんか超越しちゃっててさ、自分はこの国の王太子だからって責任感強くてさ。しかも感情を顔に出さないようにしてたじゃん? だから婚約した時も私の事好きで婚約したとは思えなかったもん」
「え? じゃ、何で婚約したと思ってたんだ?」
ん~~? とその愛らしい青紫の瞳を半目にして考えて出した答えは、
「都合がいいから? 立場的に丁度いいから?」
思わず天を仰ぐ美青年。――畜生! 星が綺麗だぜ・・・
「全然伝わって無かったのか・・・ 俺はお前が寝室に寝ぼけて跳んで来た時から好きだったんだぞッ?!」
なんてこったいオーマイガーッ!!
「だって言ってくれなかったじゃん」
勿論唇を尖らせて不満そうな顔をするソフィア。
――腹立つ程に文句なしに可愛い・・・
「女の子は! ちゃんと言葉にしてくれないとわかんないしッ! 不安なのッ」
――念のため。この2人は今日結婚したとお知らせしておきます。
前世の地球、この世界から言えば異世界で過去の自分を詐欺のような契約で雇い入れ、死ぬ間際まで社畜のように過すことを受け入れざるを得なかった会社に対しての報復行動を起こすつもりなど最初は無かったのだ。
「私、意外に執念深かったのね。自分でも驚きよ?」
ソフィア本人も忘れたつもりでいたのに、何軒か家電製品のショプを見て回るうちに自分の開発した技術が小出しにされ使われているモノが意外に多いことに気がついた。
『君のつくるものは市場には出せんよ』
『なんでですか! 何処が駄目なんです?』
『コストが掛かり過ぎるんだよそれでは企業としては利益が少なすぎるだろう? そのくらいの事も分からんのか? これだから現場を知らん高学歴の研究員は使えんのだ』
ため息を付くフリをしながらニヤニヤする上司―― ついでにその上司の事も思い出したのだ。
――くそう! 特許取ろうとしたら邪魔したのはこういう事だったのねッ!
そして報復行動に出たのだ。
×××
「私の作った物を大嫌いな連中に何1つ渡さない! 残してやるもんかって夢中になって怒りながら色んな事を短期間でやったよね」
さり気なく彼女の肩を抱き締めてくるシルファの胸にポスンと頭を預ける。
「あっちの箱庭の持ち主に貰えた時間が30時間程度だったからな」
「うん。濃い10日間だったわ。続けてあっちに存在できる時間は3時間って決まりだったし」
1日24時間のうちの3時間が10日分、つまり滞在日程を時間に換算すると30時間しか居られないという制限付き。
しかも合間に里奈の入院先へ行き治癒魔法も使わなければいけなかったソフィア達。
その為毎日行くわけではなく間隔を開けて約半年かけて異世界渡りを行ったのだ。
これは里奈の治療の進み具合の違和感をなくす為でもあったため、行った日はばらばらになる上に治療を行った後の残り時間を使い急ピッチで断罪の準備を進めたのである。
「自分でも不思議なんだけど、忙しくしてるうちに、ホントにどうでも良くなって来て最後に笑えてきちゃってさ。最後は会長の銅像を殴って壊すのが楽しくなっちゃって。崩れた像を見下ろして、ああやっと終わったんだってスッキリしたの」
「確かに楽しそうだったな」
ソフィアの頬に掛かるベリーピンクの髪の毛をそっと耳に掛けてやるシルファ。
「しかもシルファが『俺以外の男の名を呼ぶのは許さーん!』って叫んじゃってさ」
「言うな。黒歴史だ」
恥じ入るように目を閉じる殿下。
「え? でもあれで私はシルファに愛されてるんだって初めて本当に実感したのよ?」
「え?」
鳩が豆鉄砲をくったような顔になり、己の腕の中にいるソフィアの顔をまじまじと見つめる。
「だってシルファって小さい頃からなんか超越しちゃっててさ、自分はこの国の王太子だからって責任感強くてさ。しかも感情を顔に出さないようにしてたじゃん? だから婚約した時も私の事好きで婚約したとは思えなかったもん」
「え? じゃ、何で婚約したと思ってたんだ?」
ん~~? とその愛らしい青紫の瞳を半目にして考えて出した答えは、
「都合がいいから? 立場的に丁度いいから?」
思わず天を仰ぐ美青年。――畜生! 星が綺麗だぜ・・・
「全然伝わって無かったのか・・・ 俺はお前が寝室に寝ぼけて跳んで来た時から好きだったんだぞッ?!」
なんてこったいオーマイガーッ!!
「だって言ってくれなかったじゃん」
勿論唇を尖らせて不満そうな顔をするソフィア。
――腹立つ程に文句なしに可愛い・・・
「女の子は! ちゃんと言葉にしてくれないとわかんないしッ! 不安なのッ」
――念のため。この2人は今日結婚したとお知らせしておきます。
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