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46 もちゃもちゃされる魔物

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 「お前らの要請の通り王都のギルドに騎士団からの書状は送っといたが、今度からもうちょい余裕を持って連絡してきてくれんと現場が慌てるぞ」


 ピンクの髪のイケオジ陛下がチャッピーを両手で持ち上げて、しげしげと観察する。


 「伯父様いくら何でもチャッピーをひっくり返さないでくださいッ!」


 下から覗いていたが急に腹側を空に向けてひっくり返す陛下。

 4本のちっちゃな足がパタパタ動く。


 「あ。すまん。つい夢中になってた」


 慌てて陛下が地面にソフビのおもちゃのような魔物を下ろすと、ムッとした顔のソフィアが手を差し出した。

 それを目指してひょこひょこと歩いていくチャッピー・・・ 

 行動だけ見ているとまるきりペットである。


 「いや、初めて見るんでつい」

 「父上、殆どの者が初めてです」


 シルファの口調がめちゃくちゃ冷たい。

 ソフィアの機嫌を損ねると同時に息子も機嫌が悪くなる仕様である。


 「スマン」

 「伯父様、生き物は基本的にお腹側は弱いのですから無理に仰向けにしたらだめです」


 ソフィアが陛下に文句を言うと腕の中にいたチャッピーが


 『主? 我は別に腹は弱くないから大丈夫だぞ』

 「それでも断りもなく他人のプライベートゾーンを見るのは相手に失礼なのよ。いくらチャッピーが平気でも私が嫌なの!」


 唇を尖らせてぶすっとした顔になるソフィアを見上げてフム、と頷くチャッピー。


 「成る程」


 どうやらこの主は伝説の魔物も愛玩動物扱いなのだな、と納得のベヒモスである。



×××

 

 「それより、この庭はなんだって魔石結晶がこんなにゴロゴロしてるんだ?」


 ベンチによっこらせと座る陛下にメイドがササッとお茶を運ぶ。


 「チャッピーが土の上で遊んでるとこうなるみたいです」


 無事返してもらったチャッピーを膝に置き婚約者と従兄弟に挟まれ座るソフィア。


 「遊ぶ?」

 『厳密に言うと、足裏に土が触れると勝手に土中の結晶の粒が勝手に引き寄せられて塊になるのだ。それを我が踏むと更に大きくなる』


 随分チャッピーが庭をチョロチョロ探索していたらしく、花壇も下生えの茂みも木の根元も、そしてベンチの下も結晶が日光に当たるたびにキラキラと輝きを放つ。

 メイド達がその様子をうっとりした顔つきで眺めているのを横目でチラッと見る陛下。


 「うーん。確かにシルファの言う通りソフィアがベヒモスをテイムしたなんてバレたらヤバそうだな」

 「「「でしょ?」」」


 魔石は普通魔獣や魔物を倒すと手に入るが魔石結晶は土中から発掘する物質だ。

 自然界にある金属元素を含むと元素ごとに色が変わり様々な美しい結晶となる。

 魔石同様に魔力を内包しているのでエネルギーとして利用もされるが美しいモノは宝石としても価値があるのだ。

 美しい色で透明度の高いもの程、流通価格が上がる。

 大きいものだと城が買えると言われる位の貴重品なのだが、創り主のベヒモスが無造作に歩き回るだけで庭中が魔石結晶だらけになるとは思わなかったな、と。


 チャッピーとメイド以外は遠い目になった・・・


 「ま、情報を流出しないようにすりゃイイだけだがな」

 「そうですけど、難しいかもしれませんね・・・」


 膝から降りてシレっとメイド達に近寄り、もちゃもちゃと触られたり頭を撫でられたりと猫可愛がりされている伝説の魔物を見て4人は思わずため息を付いた。

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