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24 自覚 〜王子視点⑦過去〜
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自分が出来ている事を他人に教える事が出来るかといえば答えは
『ノー』
だ。
俺はそれを思い知ったんだ。
×××
あの後、俺が何度も口で説明してもソフィアは首を捻るだけで一向に風魔法を思い通りに操ることは出来なかった。
『浮かす』は『ぶっ飛ばす』になり、『そよ風』は『暴風』になり寝室はまるで嵐が過ぎ去った後の様になったのだ。
「シルファごめん~」
半泣きになったソフィアは俺のベッドの上でいじけたように膝を抱え、天蓋の上に舞い上がった毛布と枕を魔法で引き寄せている俺にひたすら謝った。
「気にするなよ。ほんの少し前まで俺もお前と同じように失敗続きだった。だからお前もそのうちに上手になると思うよ」
「そうなの?」
「うん。生まれつき魔力が多いとさ、自分が思ってる以上に威力が強くなるのは俺も一緒だったんだ。実はそのせいで魔力操作の授業が嫌になって、やる気も自信も無くなってたんだ」
「あんなに上手なのに?」
「今はね。ソフィアのお陰なんだよ上手になったの」
「え?」
「ソフィアが言ってただろ?『斬鉄剣』っていう太刀のこと」
キョトンとした顔をする従姉妹。
「それをどうやって再現するかを試したんだ」
「へ?」
「悪いヤツの、服でも装備でも一瞬で太刀でバラバラにするんだろう?」
――ソフィアはコクコクと頷くがその表情がいかにも『不味いことをやっちまった』と、愛犬が『マテ』ができずに餌を食べてしまったのを、飼い主に見られて困ってるような表情をしている――
「でもさ、この国には『日本刀』っていう太刀が無いんだよ。形だけなら似たようなものは作れたけど白鞘(白木でできた鞘の事)と鋼鉄の組み合わせじゃ強度が違いすぎて武器としては使い物にならないんだ」
「え、そうなの?」
「だから単純に風魔法で再現すれば良いと思ってさ。所謂『風の刃』ってやつ」
つまり魔法のカマイタチだ。
「刀身に風魔法を纏わせて対象物に触れたら魔術が発動するように仕込む事にしたんだ」
――そこまでやる?――
「で、刀身に魔法を纏わす練習を毎日してるうちに繊細な魔法操作が上手になったんだ」
「・・・つまり、練習あるのみ?」
「そういう事だね」
眼の前で『ペシャリ』という効果音付きでソフィアがベッドに突っ伏したのを見てやっぱり可愛いと思った。
「明日から頑張ろうね」
突っ伏したまま俺の言葉に
「はぁい・・・」
と彼女が力なく答えた。
「とにかく、魔法の書籍を探して読む座学から始めようよ。辺境伯邸にも王城と同じ位大きな図書室があるって知ってる?」
「え、そうなの? 知らない」
「父上がそう言ってた。そこで本を見つけて読むことから始めよう」
ソフィアは真剣にコクコクと頷いて、明日の夜又会う約束をして帰って行った。
で。
この時俺は気が付いた事があるんだ。
こんな面白くて可愛い生き物をどうやったら手に入れられるかをちゃんと考えなくちゃいけないって事を。
手綱を握っとかないと逃げられるよね?
『ノー』
だ。
俺はそれを思い知ったんだ。
×××
あの後、俺が何度も口で説明してもソフィアは首を捻るだけで一向に風魔法を思い通りに操ることは出来なかった。
『浮かす』は『ぶっ飛ばす』になり、『そよ風』は『暴風』になり寝室はまるで嵐が過ぎ去った後の様になったのだ。
「シルファごめん~」
半泣きになったソフィアは俺のベッドの上でいじけたように膝を抱え、天蓋の上に舞い上がった毛布と枕を魔法で引き寄せている俺にひたすら謝った。
「気にするなよ。ほんの少し前まで俺もお前と同じように失敗続きだった。だからお前もそのうちに上手になると思うよ」
「そうなの?」
「うん。生まれつき魔力が多いとさ、自分が思ってる以上に威力が強くなるのは俺も一緒だったんだ。実はそのせいで魔力操作の授業が嫌になって、やる気も自信も無くなってたんだ」
「あんなに上手なのに?」
「今はね。ソフィアのお陰なんだよ上手になったの」
「え?」
「ソフィアが言ってただろ?『斬鉄剣』っていう太刀のこと」
キョトンとした顔をする従姉妹。
「それをどうやって再現するかを試したんだ」
「へ?」
「悪いヤツの、服でも装備でも一瞬で太刀でバラバラにするんだろう?」
――ソフィアはコクコクと頷くがその表情がいかにも『不味いことをやっちまった』と、愛犬が『マテ』ができずに餌を食べてしまったのを、飼い主に見られて困ってるような表情をしている――
「でもさ、この国には『日本刀』っていう太刀が無いんだよ。形だけなら似たようなものは作れたけど白鞘(白木でできた鞘の事)と鋼鉄の組み合わせじゃ強度が違いすぎて武器としては使い物にならないんだ」
「え、そうなの?」
「だから単純に風魔法で再現すれば良いと思ってさ。所謂『風の刃』ってやつ」
つまり魔法のカマイタチだ。
「刀身に風魔法を纏わせて対象物に触れたら魔術が発動するように仕込む事にしたんだ」
――そこまでやる?――
「で、刀身に魔法を纏わす練習を毎日してるうちに繊細な魔法操作が上手になったんだ」
「・・・つまり、練習あるのみ?」
「そういう事だね」
眼の前で『ペシャリ』という効果音付きでソフィアがベッドに突っ伏したのを見てやっぱり可愛いと思った。
「明日から頑張ろうね」
突っ伏したまま俺の言葉に
「はぁい・・・」
と彼女が力なく答えた。
「とにかく、魔法の書籍を探して読む座学から始めようよ。辺境伯邸にも王城と同じ位大きな図書室があるって知ってる?」
「え、そうなの? 知らない」
「父上がそう言ってた。そこで本を見つけて読むことから始めよう」
ソフィアは真剣にコクコクと頷いて、明日の夜又会う約束をして帰って行った。
で。
この時俺は気が付いた事があるんだ。
こんな面白くて可愛い生き物をどうやったら手に入れられるかをちゃんと考えなくちゃいけないって事を。
手綱を握っとかないと逃げられるよね?
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