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20 人類の本能ちょい待った!

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 「ソレはもう終わった事ですので良いのですお父様。モンスターの発生はお父様せいでは御座いません。それ位は私も理解しておりますから」


 ため息を付きながらそう言うソフィアは自分の横の何もない空間から書類の束を取り出して執務机の上に『ドシン』と置いた。


 「毎度毎度、ソフィアの空間魔法には驚かされるな」


 横に立つシルファ王子が置かれた書類の束とソフィアが手を突っ込んでいたであろう辺りを見比べる。


 「何でこんなに書類があるの?」


 若干引き攣り気味の笑顔で愛娘の方を向き直る辺境伯領主パパン


 「取り急ぎ、食堂で食事をしながらですが、隊長の報告と共に今回の顛末を書式にしておきました」


 シレっと答えるソフィア。

 元社畜としては仕事時間を無駄にするのは罪悪らしい。

 食事も仕事かと言われれば微妙なところだが・・・


 「そう、いつもありがとう」


 更に笑顔が引き攣る父。これを読むのか? と顔に書いてあるようだ・・・


 「詳細はそこに書いてあります。冒険者と名乗る他国からの流れ者達の取り調べは隊長に采配をお願いしました。後はコレです」


 肩から下げていたバッグから取り出す例のツートーンカラーのボールである。


 「ナニソレ?」

 「この中にベヒモスの子供が入ってます」

 「・・・・は?」

 「読んでもらえば分かると思いますが、私の魔法技術を駆使して即席で作った捕獲用魔道具です」


 駆使して作り上げた至高の作品でなく即席という辺りが笑いを誘うが、ソフィアは執務机の上に取り敢えずコロリとボールを置いた。

 恐る恐る顔を近づけて匂いを嗅ぐ父。


 「父様、匂いはしません・・・ ボタンを押さないっ!!」


 指を近づけていた辺境伯が慌てて手を背中に引っ込めた。


 「その真ん中の金色のボタンには絶対に触らないように! ベヒモスが飛び出しますよ?!」


 人間はスイッチとかボタンがあると触りたくなる本能があるらしいが、辺境伯は本能に忠実な人の烙印を娘にもうちょいで押される寸前だったようだ・・・


 「テイムとは違いますから、こちらの命令は効かない筈です。言うならばただの猛獣の生け捕り状態です」


 ちょっとだけ領主と侍従の顔色が悪くなった・・・。



×××



 「・・・・ というわけで、そのボールの中に作られた疑似世界でベヒモスは暮らしてますから、そのまま置いといてもボタンを触ってロックを解除しない限り出てこれませんので」


 独自の空間構築理論をぶっ込んだ解説をされ、首を傾げる父、侍従、従兄弟のアジェスと、小隊長。

 ウンウンと頷く魔術師達と婚約者のシルファの二手に別れた聴衆者達に向かい、


 「問題はこのボールの中のベヒモスをどうするかです。絶滅危惧種なんでしょ?」


 やはりソフィアにとってはただのヘビメタチックなクロサイという扱いらしい・・・


 「絶滅危惧種と言えないこともないがなぁ。魔物だからね・・・」


 ウ~ンと腕組みをして眼の前のおっかないボールのボタンを睨む辺境伯。


 「ダンジョンで見てたんですけど土魔法で結晶化した魔石を呼び出して小さいものをかけ合わせて大きくしてましたが、アレって普通なんですか?」


 ソフィアは生まれてこの方、様々な魔物を見てきたがあんな高度なことをする魔物は初めてだったのだ。


 「伝説としては魔石を呼ぶ唯一の魔物とされてるな」


 流石は王太子。


 ソフィアの婚約者は博識だった。





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