20 / 110
20 人類の本能ちょい待った!
しおりを挟む
「ソレはもう終わった事ですので良いのですお父様。モンスターの発生はお父様せいでは御座いません。それ位は私も理解しておりますから」
ため息を付きながらそう言うソフィアは自分の横の何もない空間から書類の束を取り出して執務机の上に『ドシン』と置いた。
「毎度毎度、ソフィアの空間魔法には驚かされるな」
横に立つシルファ王子が置かれた書類の束とソフィアが手を突っ込んでいたであろう辺りを見比べる。
「何でこんなに書類があるの?」
若干引き攣り気味の笑顔で愛娘の方を向き直る辺境伯領主。
「取り急ぎ、食堂で食事をしながらですが、隊長の報告と共に今回の顛末を書式にしておきました」
シレっと答えるソフィア。
元社畜としては仕事時間を無駄にするのは罪悪らしい。
食事も仕事かと言われれば微妙なところだが・・・
「そう、いつもありがとう」
更に笑顔が引き攣る父。これを読むのか? と顔に書いてあるようだ・・・
「詳細はそこに書いてあります。冒険者と名乗る他国からの流れ者達の取り調べは隊長に采配をお願いしました。後はコレです」
肩から下げていたバッグから取り出す例のツートーンカラーのボールである。
「ナニソレ?」
「この中にベヒモスの子供が入ってます」
「・・・・は?」
「読んでもらえば分かると思いますが、私の魔法技術を駆使して即席で作った捕獲用魔道具です」
駆使して作り上げた至高の作品でなく即席という辺りが笑いを誘うが、ソフィアは執務机の上に取り敢えずコロリとボールを置いた。
恐る恐る顔を近づけて匂いを嗅ぐ父。
「父様、匂いはしません・・・ ボタンを押さないっ!!」
指を近づけていた辺境伯が慌てて手を背中に引っ込めた。
「その真ん中の金色のボタンには絶対に触らないように! ベヒモスが飛び出しますよ?!」
人間はスイッチとかボタンがあると触りたくなる本能があるらしいが、辺境伯は本能に忠実な人の烙印を娘にもうちょいで押される寸前だったようだ・・・
「テイムとは違いますから、こちらの命令は効かない筈です。言うならばただの猛獣の生け捕り状態です」
ちょっとだけ領主と侍従の顔色が悪くなった・・・。
×××
「・・・・ というわけで、そのボールの中に作られた疑似世界でベヒモスは暮らしてますから、そのまま置いといてもボタンを触ってロックを解除しない限り出てこれませんので」
独自の空間構築理論をぶっ込んだ解説をされ、首を傾げる父、侍従、従兄弟のアジェスと、小隊長。
ウンウンと頷く魔術師達と婚約者のシルファの二手に別れた聴衆者達に向かい、
「問題はこのボールの中のベヒモスをどうするかです。絶滅危惧種なんでしょ?」
やはりソフィアにとってはただのヘビメタチックなクロサイという扱いらしい・・・
「絶滅危惧種と言えないこともないがなぁ。魔物だからね・・・」
ウ~ンと腕組みをして眼の前のおっかないボールのボタンを睨む辺境伯。
「ダンジョンで見てたんですけど土魔法で結晶化した魔石を呼び出して小さいものをかけ合わせて大きくしてましたが、アレって普通なんですか?」
ソフィアは生まれてこの方、様々な魔物を見てきたがあんな高度なことをする魔物は初めてだったのだ。
「伝説としては魔石を呼ぶ唯一の魔物とされてるな」
流石は王太子。
ソフィアの婚約者は博識だった。
ため息を付きながらそう言うソフィアは自分の横の何もない空間から書類の束を取り出して執務机の上に『ドシン』と置いた。
「毎度毎度、ソフィアの空間魔法には驚かされるな」
横に立つシルファ王子が置かれた書類の束とソフィアが手を突っ込んでいたであろう辺りを見比べる。
「何でこんなに書類があるの?」
若干引き攣り気味の笑顔で愛娘の方を向き直る辺境伯領主。
「取り急ぎ、食堂で食事をしながらですが、隊長の報告と共に今回の顛末を書式にしておきました」
シレっと答えるソフィア。
元社畜としては仕事時間を無駄にするのは罪悪らしい。
食事も仕事かと言われれば微妙なところだが・・・
「そう、いつもありがとう」
更に笑顔が引き攣る父。これを読むのか? と顔に書いてあるようだ・・・
「詳細はそこに書いてあります。冒険者と名乗る他国からの流れ者達の取り調べは隊長に采配をお願いしました。後はコレです」
肩から下げていたバッグから取り出す例のツートーンカラーのボールである。
「ナニソレ?」
「この中にベヒモスの子供が入ってます」
「・・・・は?」
「読んでもらえば分かると思いますが、私の魔法技術を駆使して即席で作った捕獲用魔道具です」
駆使して作り上げた至高の作品でなく即席という辺りが笑いを誘うが、ソフィアは執務机の上に取り敢えずコロリとボールを置いた。
恐る恐る顔を近づけて匂いを嗅ぐ父。
「父様、匂いはしません・・・ ボタンを押さないっ!!」
指を近づけていた辺境伯が慌てて手を背中に引っ込めた。
「その真ん中の金色のボタンには絶対に触らないように! ベヒモスが飛び出しますよ?!」
人間はスイッチとかボタンがあると触りたくなる本能があるらしいが、辺境伯は本能に忠実な人の烙印を娘にもうちょいで押される寸前だったようだ・・・
「テイムとは違いますから、こちらの命令は効かない筈です。言うならばただの猛獣の生け捕り状態です」
ちょっとだけ領主と侍従の顔色が悪くなった・・・。
×××
「・・・・ というわけで、そのボールの中に作られた疑似世界でベヒモスは暮らしてますから、そのまま置いといてもボタンを触ってロックを解除しない限り出てこれませんので」
独自の空間構築理論をぶっ込んだ解説をされ、首を傾げる父、侍従、従兄弟のアジェスと、小隊長。
ウンウンと頷く魔術師達と婚約者のシルファの二手に別れた聴衆者達に向かい、
「問題はこのボールの中のベヒモスをどうするかです。絶滅危惧種なんでしょ?」
やはりソフィアにとってはただのヘビメタチックなクロサイという扱いらしい・・・
「絶滅危惧種と言えないこともないがなぁ。魔物だからね・・・」
ウ~ンと腕組みをして眼の前のおっかないボールのボタンを睨む辺境伯。
「ダンジョンで見てたんですけど土魔法で結晶化した魔石を呼び出して小さいものをかけ合わせて大きくしてましたが、アレって普通なんですか?」
ソフィアは生まれてこの方、様々な魔物を見てきたがあんな高度なことをする魔物は初めてだったのだ。
「伝説としては魔石を呼ぶ唯一の魔物とされてるな」
流石は王太子。
ソフィアの婚約者は博識だった。
8
お気に入りに追加
566
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる