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80. 運命の
しおりを挟む翠の呆けた声でちょっと冷静になるルーカス・・・
――そうだよ俺、アッチで死んだんだった。
『・・・望に代わります。ホラ望』
『おかあさーん! わたし消えちゃうよ。どうしよう・・・』
「どうしようって、アンタ、絶対に何か変な事したんでしょ? 折角わざわざ異世界まで行って命拾いしたのに、何でそんな事になってんのよ!! いい加減にしなさいよッ」
『うわ~ん健一どうしよう。お母さん怒ってるっ』
『当たり前だ!』
「なんで健一君がいるのかはわかんないけど、アンタとどうせ一緒で異世界転移か、異世界転生かなんかしたんでしょ」
『うわ、翠さん鋭い』
「Wikiに載ってる!」
翠は溜息を付き、勇は後ろでオロオロしていた・・・
×××
『で、今は半分透けたままなのね?』
額を押さえて怒鳴りたいのを堪えている母親の姿が脳裏に浮かぶ望。
「うん。これ以上は透けないみたい」
因みに身体を離したら消えそうな気分になる為、ルーカスが、ガッチリ抱き抱えてくれている。
『原因はいいわ。対処法を考えるのよ。病気や怪我と似たようなもんよ。どうしたら元に戻るかを考えなさい。その天使みたいな人が言ってたんでしょ? 魔力に乗せてだっけ?』
「魔力に載せた思考は実現しますだったと思うんだけど・・・」
『じゃあ、魔力に乗せて考えりゃいいんじゃないの? 絶対この世界で生きてやる! とか、異世界で健一君とずっと生きていく! とか』
「翠さん俺、今ルーカスです」
『黙れ。健一』
「スミマセン。黙ってます」
『兎に角、消えない様に~みたいに後ろ向きは多分駄目だと思うわ。言葉でイメージしちゃって不安になっちゃうから。患者さんもそうなんだけど『早く治りたいです』って言う人より『退院したらこんな事したいんです!』って口にする人のほうがかなり早く退院するのよね』
「う・・・成る程。後ろ向きじゃなくて前向きか」
『原因は後からでいいんだって。原因探るのなんか諦めな。どうせアンタがアホな事をどっかで考えて、そうなってるのよ。兎に角前向きなイメージをするのよ分かった?』
「・・・うう。分かったやってみる」
『やってみる? ああん?』
「やります~」
『折角生まれ変わった健一君と会えたんだから、今度こそ結婚しなさいよ。でないと嫁き遅れ決定よ』
「うわ・・・」
酷い言い様の母である。
『アンタ健一君以外と結婚できないでしょうが!』
「うん。まあ。ハイそうです」
『健一君?』
「ハイ! 居ますよ。翠さん」
『娘を宜しくね』
「任せて下さい。絶対に幸せにします」
『約束よ。10年前は怒ってたんだからね。でもそっちで幸せになってくれたらそれでいいわ。許したげる』
「はい。ありがとうございます」
×××
望の赤いスーツケースから着信音がして、全員がハッと正気に戻り母親と会話したいだろうと気を遣って退室した涼子達以下5名。
護衛騎士達も廊下で内心は心配だろうが、廊下での護衛に戻って行った。
「どうしよう~、どうしよう~望さんが消えちゃったら・・・」
リビングで、まるで動物園の檻の中の小熊のように部屋の中をグルグルと回る涼子。
「大丈夫ですよ! リョーコ様、ノゾミ様の母上様は、看護のプロだって言ってましたからきっと何とかしてくれます!」
とグッと握り拳を作るミミと
「そうですよ、絶対に大丈夫です。 小侯爵様だってついてますから~」
紅茶を入れながら、ウルウルした目でソワソワ耳を動かすルル。
「だといいんだけど・・・。所で何だかルーカスさん、望さんのお母さんの事知ってたっぽいよね・・・」
「「・・・そうですね」」
「望さんのお母さんもルーカスさんを知ってたし・・・あの2人ってひょっとして元々知り合い? まさかね・・・いや待てよ? んん?」
――『俺です! 稲田健一です』
「んん? あれ?」
「どうかなさいましたか?」
「それにしても、いつの間に小侯爵様は異世界の言葉を覚えたのでしょう?」
ルルの言葉を聞いて首を傾げた涼子。
「え?」
ウンウンと頷くミミ。
「デンワというモノで話す時に我々のわからない言葉で喋っていたのは驚きました」
「望様のお母様も同じ言葉でしたね。あんな短期間で異世界の言葉を覚えるなんて。愛のなせる技でしょうか?」
「そうかも! 流石ですね」
2人がキャッキャと話す横で、
「・・・ソレって」
――転移者特典ってアレンおじいちゃんが前に言ってなかった? やっぱりルーカスさんて、転移者かひょっとして転生者なんじゃ・・・で、元々望さんの特別な相手で異世界で再会して・・・
「すごいッ! なんてロマンチックなのッ!」
「「そうですよね~~!」」
「運命の2人だねッ!」
「「ホントです~~!!」」
若干ズレてるが、喜び方はほぼ一緒。
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