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68. 撃たれた鳥のアフターケア①
しおりを挟む「~~~・・・ップ・・・叔父上がノゾミに返品されたそうで?」
笑いを堪えたままで国王と王太子の執務室にやって来たのは第2王子フィンレーである。
中に居たのは王太子だけだったが・・・
「ああ。コレが叔父上が持って行った花束と一緒に降って来たらしい。叔父上自身は魔女殿のドアから現れたゴーレムに咥えられて戻ってきた」
王太子が大きく黒文字で
『返品。再発送は受け取り拒否』
と書かれた白い便箋をフィンレーに渡すと、とうとう耐えられなくなったらしく
「ブッフォ・・・失礼しました」
吹き出しながら答えた彼は、わざとらしい咳払いをした。
「で、何か問題が? ノゾミの意思表示では叔父上も花も不要なのでしょう。そもそも彼女はルーカスと親しくしているんですから」
「今更だが、重鎮達が慌てている」
「阿呆ですか?」
「それと騎士団長が夫人の元に行こうとして離宮に無断侵入したらしく、ツノウサギ達に拘束されて送り返されてきた」
「馬鹿ですか?」
「陛下も事態を重く見ている」
「・・・はぁ~」
流石に不敬に当たると思ったのか溜息をつくだけで終わらせたようである。
「ノゾミに話しを聞いてきます」
「そうしてくれると有り難い」
眉間のシワを思わず揉む王太子殿下。
「まったく。魔女殿は難しく事は構えないタイプの人間だという私の意見を信じないんだ」
「おや、兄上珍しいですね。女性を褒めるとは」
「彼女は有能だ。恐らくだが異世界で実務関係の文官だったのだろう。そういう人間は実利を重んじる傾向がある。女性というより部下として考えると良く分かるタイプの人間だ」
「兄上のスキルですね」
「ああ。魔女でなければ城に文官として勤めて貰ってるな。老害はサッサとクビにして。とにかく彼女の意思を確認して来てくれると有り難い」
「分かりました」
ドアを閉めて廊下に出てから首を捻るフィンレー。
「ま、いっか。兄上も鈍感だからいい経験だろ」
彼はそのまま騎士団の方に足を向けて歩き出した。
×××
「ルーカス、いる?」
護衛騎士団の団長執務室をノックしながら、返事も聞かずに突入するフィンレーに眉を顰めるルーカス。
「ノゾミに会いに行くから付いてきて」
「今からですか?」
「うん。叔父上のことで上層部がバタついてて。面倒くさいから一気に終わらせたいんだ。時間もないし。魔塔からの報告もそろそろだろうし」
「・・・分かりました」
「馬使うから」
「そんなに急ぐんですか? 何なら跳びますか?」
「ウ~ン・・・その方が手っ取り早いかなぁ。てか、ノゾミがコッチに来てくれないかなぁ」
「王城にですか?」
「うん。結局さ、皆んなノゾミが怒ってるって思ってるんだ」
「ああ。成る程」
「あと侯爵ね」
「父は自業自得です。アレは母が怒っているだけで望は無関係です」
額に皺を寄せるルーカスを面白いモノを見たと、思いながら眺めるフィンレー王子。
「周りはそうは思わないからねえ」
×××
「え? 陛下に会いに行くの?」
望は急に現れたルーカスの申し出に慌てた。
「ああ非公式でいいから会って欲しいらしい」
「ウ~ン、別に良いけど。丁度私もお願いしたい事があるし。一緒に居てくれる? 礼儀とか分からないし」
「勿論だ」
時間は既に夕刻近くだ。
緊急とはいえローザ夫人に断りを入れないわけにもいけないだうと思った望はミミと涼子の2人に伝言を頼むことにして、ルーカスと共に城に転移した。
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