【完結】ずっと貴方が好きでした〜死んだと思ったのに再会しました？！ 異世界で・・・！〜

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６５. 鳥も鳴かずば・・・①

　国王と重鎮達が、結果を予測して王弟を望に託した（？）のはある程度理解が出来たが、望的には問題が１つ残る。

　侯爵とローザ夫人の離縁の事だ。

　皆の話しを聞く限り、侯爵自身はかなりな愛妻家のはずなのだが・・・


「ねえ、じゃあローザさんが侯爵と離婚するって言い出したのはどうしたらいいのかな？」


　ローザ夫人が退出していく後ろ姿を見送った後、望がウ～ンと考えながら問うと


「え？　ほっときゃいいんじゃないの？　いい大人なんだからさ」


　ケロッとした顔でお菓子を頬張る涼子と


「そうだな。夫婦喧嘩に鼻を突っ込んだらろくなことにはならん。古今東西仲裁しようとしたやつが損をするぞ」


　と言うのは、カイン。

　横にベッタリとくっついて座るルーカスに視線を向けると


「ほっといていい」


　と素知らぬ顔だ。


「望は気にしなくていい。いつものことだ」


　ルーカスの言葉にええ～・・・となる望。


「仲裁しなくて本当にいいの？」

「ああ。侯爵夫妻に関しては心配はいらない。どうせ母が勝つからな」

「え。勝ったら離婚するんじゃ・・・」

「多分だがソレはないな。相思相愛の夫婦だが夫婦喧嘩の度に負けるのは父だ。勝者は必ず母だ」

「パフォーマンスなの？」

「いいや。本当に離縁したこともあるな」

「あるって・・・えぇ～・・・でも」

「それでも今は夫婦だ」


　肩を竦めるルーカスを何とも言えない顔で見つめていると、カインが


「神殿と王家が絡むんだよ、この世界の貴族の婚姻の事は。最終的には神殿が決定する」

「望さん、心配いらないってウチの両親もあんなのやってるよ。仲が良すぎても喧嘩になるんだってば。挟まれる子供はたまったもんじゃないけど心配するだけ無駄無駄！」

「・・・そ、そう。私そういうのよくわかんないから」

「そっか～。でもそのうち自分達が似たような事をやるんじゃない？　夫婦になったらさぁ」


　肘を付いてニマニマ笑う涼子は望とルーカスの顔を交互に見比べる。


「りょ、涼子ちゃんたら・・・」

「・・・」


　両者共に顔が赤くなった。



×××



　その後ルーカスは休憩が終ったと言って王城に戻って行った。


「ツノウサギ達の警戒レベルを高くしておく」


　窓から顔を出し、犬笛みたいなモノを吹いていたのでそれで指示しているっぽい。魔力を載せてこちらの意思を伝えるのだという。

　この世界は大なり小なり皆魔力持ちなので、訓練さえすれば『魔笛』は誰でも使えるとルーカス健一は言っていた。
　ただ、『魔笛』そのものが登録制なのだと教えられた。

　どうやら警戒レベルを王弟殿下が訪問して来る以前よりかなり上げたらしく、


「登録されて居ない者は一切通過できないようにしたから、もう大丈夫だ」

「ふうん？」


　誰が登録されていて、誰がされていないのかが分かっていない望としては、割とどうでもいい事だった・・・


　筈だったのだが。



×××



　護衛達の声が廊下で聞こえ、ドアをノックする音がした。

　リビングと望の私室の両方だったので、同じ内容が涼子とカインにも伝えられたのだろう。

　伝言を受け取ったミミが護衛に何かを囁いて、彼は下がっていった。


「何かあったの？」

「はい。ツノウサギ達が獲物を捕らえたようで、その報告でした」


　いい笑顔で微笑む美人な猫獣人。


「フォルテリア侯爵閣下でございます。いかが致しますか？」


　望は、

『ブフォッ』

　と、飲みかけていた紅茶を吹いてしまった・・・