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47. 異世界3日目
しおりを挟む朝が来た。
窓の外の小鳥の囀りと明るくなった部屋のお陰で今日も自然と目が覚めた望。
「ウ~ン、たった2日で朝の明るさが目覚めに必要なのが良く分かったわ」
布団の上で目を擦りながら呟くと、部屋がノックされた。
×××
あの後、ローザ夫人が王城から帰って来るなり望は彼女にお礼を言われた。
『貴族達の騒ぎを納めてくれてありがとうございます』
・・・とは言われたが、騒ぎを起こしたのは涼子、というか彼女の爆弾発言だったわけで。
彼女のペアであり相棒とも言える望がその場を抑えるのも、ある意味仕方がないことだったわけで――あの雑把な多分腹黒王子にも言われたのもあるが。
『いえ、涼子ちゃんがお騒がせして申し訳ありませんでした』
とだけ言って頭を下げておいた。
ローザ夫人はそれにはなにも言わずニッコリと微笑んでいたが・・・まぁ良いか、と流すことにした。
一方ルーカスはローザ夫人と入れ違いで
『王城へ戻り騎士団をしごいてくる』
とだけ言い残してその場で転移して行った。
大広間で望達の後ろに控えていた騎士の2人が廊下を覗くとこっちを向いてニカッと笑いながら敬礼していたので、ルーカスと交代で彼女達の部屋の護衛をするのだろう。
詳しいシフトや護衛内容のことは未だに聞いていないのでわからない。
そもそも最強の魔女や世界の理を尽く無視できる聖女に護衛が何故必要なのかが謎だ。
まあ2人共魔物に未だに慣れてないから必要なのかもな、と、望は勝手に納得する事にした。
×××
「ノゾミ様、今日の髪型はどうしますか?」
猫耳メイドのミミさんが望の髪の毛を漉きながら聞いてきた。
「どうっていうか・・・そのままでも良いんだけど。でも服をどうするかがそもそも決まってないのよね」
「そうですよね~」
望のサイズが特殊サイズなので、今日の午後、デザイナーさんが来ることになっているらしい。
望の身長はローザ婦人とあまり変わらないので服を借りようかとも思ったが、ミミからは凸凹が違う! と言われ――涼子と同じ様に彼女も『ココだ!』と胸の前の空間で手をモニョモニョさせていた――その案は却下になった。
涼子はリュックの中に何枚もTシャツやクロップドパンツ等を入れて持っていた為、当分はそれを着る! とローザ夫人の申し出を突っぱねていた。
『ドレスとかいやだもん~!』
現代女子はスポブラと、びよんと伸びる○ニクロテイストが好きなんだそうだ。
その辺りは望はどうでもいい人種だった事もあり、無いよりマシだと作って貰う事にしたのである。
但しデザインは口出しする気満々だが。
ワードローブの中にあった筈のドレス達は目が覚めると撤去されていて、黒とグレー、濃い青いドレスだけが残されていて好きにして良いと言われた。
「濃い青・・・」
ローザ夫人が何かを感じていたのか、それともルーカスが彼女に何かを言ったのか・・・
この世界ではパートナーがいるならその色を纏うのが普通で、婚約者の場合は女性側が贈られた髪飾りをつけるのだという。
髪飾りを着けないのはフリーの証拠らしいので、
『え。ヤバいかも』
と、涼子が呟いていた。
彼女の髪の長さでは確かに髪飾りは着けられないのでどうするのだろうと考えていたら、
『カインさんと仲良くはなったけどさ、望さん達みたいにまだステディな仲じゃないよ』
と言われウィンクされた。
一回り近く年下の彼女のほうが余裕があるような気がするのは何故だろう・・・
大きく溜息をついたあと、鏡に映る猫耳メイドに声を掛けた。
「ミミさん、又ハサミと針を借りてイイ?」
彼女はニッコリ笑って裁縫道具の入った箱を差し出した。
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