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30. 異世界2日目
しおりを挟む翌日の早朝、ふっかふかの布団の中で快適な眠りから自然と目が覚めた。
寝起きのあまり良くない望が自然に目を覚ますなんて珍しいのだが・・・
「あ。カーテンが開いてる・・・? 昨日の晩ちゃんと閉めた筈なのに・・・」
望の声が聞こえたのだろうか、部屋の外から控えめなノックの音がした。
×××
望は猫耳のメイドがニコニコとしながら自分の髪の毛を器用に編み上げていくのを鏡で確認しながらボーっとしていた。
どちらかと言うと低血圧の望は朝が弱いのだ。
「ねえ、ひょっとすると朝カーテン開けてくれたの?」
「はい。朝日を浴びることで自然に目が覚めるようにとのローザ夫人からの指示でございます」
「成る程、だからかー。私朝あんまり早く起きれないのよね。厚手のカーテンとかで真っ暗にしちゃうと全く目が覚めないのよね」
「そうなんですか・・・」
「これから毎日お願いしていい? なんかこの世界ってやることがいっぱいありそうで、寝坊してる暇なんかなさそうだから」
「もちろんでございます魔女様」
三角の耳をピクピクさせてニッコリとメイド服の彼女が鏡の中で微笑んだ。
「あ、望でいいわ。その魔女様っていうの妙に馴れないから」
「では、ノゾミ様とお呼びいたしますね」
鏡に映る笑顔がメッチャ眩しくて可愛らしかった。
×××
「さてと、やってみますか」
朝食を早めに部屋で食べた後、望はメイドに頼み事をした。
困惑する彼女だったが一生懸命頼み込むと、了承してくれた。
ソレがコレ。
箒である・・・魔女といえば箒よね?
「こんなモノでどうでしょうか?」
猫獣人のミミは、言われた通り立派な箒を持ってきてくれた。
「わーありがとう。コレコレ。これが欲しかったのよ」
思わず彼女の手を取りありがとうと伝えると、はにかんで三角の耳の内側が、頬と一緒にピンク色に染まった。
――ひゃ~~獣人さんって可愛いのね! そういえば兎の耳の子もいたような・・・
「それでは失礼します。御用の際はベルでお呼びください」
「あ、ハイ」
獣人は耳が良いので少々遠くてもベルの音が聞こえるらしく、人族の使用人達と違って離れた場所で仕事も許されているらしい。
人族のメイドや侍従は主人のすぐ近くで待機しないといけないらしい・・・ベルで呼んでも聞こえないから。
×××
箒草がふっかふかの尻尾のように膨らんだ形の理想のマイ箒・・・になる予定の相棒をゲットしてご機嫌な望である。
ご機嫌で鼻歌を歌いながら、トランクの中からシルクのスカーフを引っ張り出して箒の柄の先端に結びつけた。
「ウ~ン、名前付けなくちゃいけないわね・・・箒の名前かー・・・ヨシ」
何やら決まったようだ・・・
「アンタの名前は、マートルよ? 今日から私専用の空飛ぶ箒になりなさい!」
彼女がそう言って箒をコンコンと爪で叩くと箒全体がうっすらラベンダー色に輝いて、なんと箒がピョンと立ち上がると彼女に向かってお辞儀をしたのである。
望は空を飛ぶ箒を手に入れた。
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