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21. 離宮
しおりを挟む離宮。
要するに王族の住む、別称本宮と呼ばれる事もある、王宮とは違うお城っぽい建物である。
特別な賓客をもてなすゲストハウスとして使われるモノもあれば、訳アリ王族を突っ込んどく場所もある。
因みに王城は国の仕事場なので官僚とか文官、武官、騎士団なんかもゴチャゴチャいっぱいいるし、迎賓館みたいな場所も漏れ無く併設されている場所、と王子達に説明された。
――役所とパーティー会場と訓練場が一緒くたになった建物か、と望達は理解した。
「じゃあ、明日行くのは王城?」
「そうだね」
「で、ここが離宮ですか・・・」
美しい芝生が敷き詰められた中に、花壇があり色とりどりの花が咲き乱れている。
その真ん中にで~んと白い壁に緑の屋根。2つの尖塔が装備された限りなくちっちゃくしたノイシュバンシュタイン城みたいなのが建っている。
ディズニーランドにある有名なアレとよく似たヤツである。
「え、オランダちゃうし・・・可愛い~」
「だよね~。何処行っちゃったんでしょオランダ風?」
馬車の窓から肩を並べくっついて覗いていた望と涼子の2人の口から思わず言葉が漏れた。
「いきなりドイツに来ましたね」
「まあ、ヨーロッパだけどね。こう、何ていうかゴッツイのがドーンと来るって想像してたわ」
「ホントですよね。でも綺麗です」
2人の乙女達の会話に首を傾げる王子達。
「離宮がどうかしたのか?」
「あ、いえいえ。ここまでの道のりで見た町並みとはちょっと趣きが違うなと思っただけですから。お気になさらず」
「そうそう、なんか町並みは四角い建物が多かったでしょ? だから離宮も似たような感じだと勝手に考えてたんですけど、可愛いお城だなって思ってビックリです」
えへへと笑う涼子と真面目な顔で答える望。
「「それって喜んでるの(か)?」」
「「勿論です!!」」
喰い気味で身を此方に乗り出す彼女達に、ちょっとだけ引き攣り笑いになる王子達。
いくら可愛くてもディズニーランドのアレには泊まれないのである。
泊まってみたいと思う人は大勢いるが、そもそもそういう目的の建造物ではないからなのだが、それによく似た離宮に泊まれると知ってついついハイテンションになる乙女達・・・
「すご~い! シンデレラ城よ~! 涼子ちゃん!」
「お姫様ですよ望さん! あ、望さん魔女だからピッタリ?」
「それだとかぼちゃとネズミがいるわね~」
「やだあ、私灰被ってみる?」
「それはしないでいいと思うわ」
「「・・・?」」
楽しそうだからいいかな、と思う王子達である。
既にこの状況に馴染み始めている・・・いや、既に楽しんでいる望と涼子。
流石、女は強し・・・
×××
馬車のドアが御者によってガチャリと開いた。
当然だが、リュックをしっかり背負った涼子が我先に飛び出し、大股で2、3歩進んだところで背伸びをする・・・
「ウ~ン。異世界の馬車って意外と揺れなくて快適だったけど、流石に背中がぁ・・・」
苦笑いしながら涼子に続こうと、馬車の出口に立った望に差し出された手があった。
「あ。ありがとうございます」
手の主を見ようと視線を向けた先にいたのは、召喚された部屋にいた5人目の男、黒髪の騎士様だった。
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