上 下
14 / 59

風紀委員長様は眠気と戦う(自室編)

しおりを挟む
「さて寝るか」

 如月の言葉に俺も頷く。

 たらふく飯も食って、風呂にも入った。
 お互い寝間着にも着替えたし、あとは明日に備えて寝るだけだ。なんの異論もない。

 ……と思っていたのだが。

「……なぜおまえが俺の部屋にいる」
「いいじゃねえか。寝る前に級友の部屋を探検だ、探検」
「ならもう充分だろう」
「ふうん、寝室も綺麗なもんだな。AVやエロ雑誌とか隠してねえの? 紙よりもデジタル派か? さすがは風紀委員長様といったところか」
「人の部屋を勝手に漁るな」

 勉強部屋から寝室にかけて、楽しそうに如月がチェックしている。
 俺はベッドに腰掛けて、しばらくその様子を眺めていたが、欠伸を噛み殺すのがしんどくなってきた。いつまでもお遊びに付き合っている義理はないので、さっさと毛布を被ることにする。別にみられて困る物は置いていない。見たければ好きに見ればいい。俺は寝る。

「……気が済んだら部屋を出る時、明かりを消していってくれ。おまえも寝不足が続いているのだから、早く寝た方がいいぞ」
「了解」

 言ったらすぐに明かりが消された。
 奴も探検に飽きたらしい。やれやれ、これでやっと寝られる……はずだった。

「……おい如月、ふざけるなよ」

 なぜ貴様が、俺の隣にいる。

「ベッドの大きさも俺の部屋と一緒なんだな、男二人でも悠々と寝られるサイズだ」
「……確認は済んだか?」
「ああ」
「ならとっとと出ていけ。俺に蹴り落とされないうちにな」
「そうつれないことを言うなって。おまえは眠いようだが、俺はもう少しおまえと話をしていたい」
「ならリビングに戻ってもいいぞ」
「面倒だからここでいいじゃねえか。気が済んだら俺が出ていく。別に獲って食うわけでなし……それとも俺が怖いとか?」
「……別に怖くはないが……男に添い寝されたところで楽しくもなんともない。それに俺はすごく眠いんだ。もういい加減寝かせてくれ」

 言ってる傍から、まぶたがくっつきそうなのだ。とっとと出て行ってほしい。
 一人分多い体温のせいで、布団がいつもより暖かく感じて、みるみる眠気が襲ってくる。

「このまま寝てもいいぞ。なんなら腕枕して子守唄でも歌ってやろうか?」
「……うるさい」
「たまには、こうやってダベリながら寝るのも楽しくねえか?」
「全然楽しくない。男のぬくもりなんか……感じたくもない。……地獄だ……地獄……」

 まずい……本格的に眠くなってきた。
 如月に背を向けて、拒否の態度を示してみたものの……俺の抵抗はそこまでで、ズルズルと意識が遠のいていく……。もうどうにでもなれ。

「俺には天国だ」

 そんな如月の声が聞こえたような気がしたが、確認する間もなく、俺は眠りの底へと引きずり込まれた。


 そして翌朝……地獄はまだ続いていた。


 何故俺の目の前に如月がいる? あれから出て行かなかったのか?
 しかも抱き合って……足を絡めあって……これは現実か? まだ寝ぼけているのか? 夢なら一刻も早く覚めてくれ。
 願いを込めて再び目を瞑り、深呼吸をしてから、ゆっくりと目を開けてみた。

 しかし現実は変わらなかった。

 スウスウと気持ちよさげに、俺と同じベッドで如月が眠っている。意外と睫毛が長いんだな……って、そんなこと今はどうでもいい。

 まずは地獄からの脱出だ。
 起こすと面倒そうなので、足を抜いて肩に回された腕をそっとどけてみる。いまのところ起きる気配はない。これはイケる。
 そのまま上半身を静かに起こそうとしたところで、

「……まだ寝てろよ」

 如月に腕を取られて、またベッドへ引きずりこまれた。

「……起きていたのか」
「いや……寝てたさ。まだ起きるにはだいぶ早いだろう? もう少し寝てようぜ」

 押さえつけるように、背中から大きな身体に抱きこまれてしまった。
 こいつ寝ぼけているのか? 俺を親衛隊か何かと勘違いしてないか?
 抱き枕扱いされて腹が立つが、無防備なやつ相手に、いきなり反撃するのも躊躇してしまう。

「……おい離せ。こんな体勢で寝てられるか」
「いい匂いだなあ」
「人の話を聞け。おまえまだ寝ぼけてるだろ? 試しに俺の名前を言ってみろ」
「藤堂玲一」

 即答か。
 分かっているなら、なぜ首筋の匂いを嗅いでくる?

 しかも、先程から尻のあたりに硬いものが当たってきて、非常にバツが悪いのだが……。

 こいつ……、わざと押し付けてきてないか?
 それとも俺が敏感に反応しすぎなのか?
 
 前者であれば、いますぐ息の根を止めてやる。
 後者であれば、朝勃ちは生理現象だしな……気づかぬ振りをしてやるのが武士の情けというものだろう。

「おまえの匂い嗅いでたら、たまらなく犯りたくなってきた。今から一緒に抜かないか藤堂? 気持ちよくスッキリさせてやるぜ?」

 ……よし。こいつの息の根をいますぐ止めよう。

 俺はためらうことなく、会心の肘鉄を奴のみぞおちにくらわせたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

兄弟愛

まい
BL
4人兄弟の末っ子 冬馬が3人の兄に溺愛されています。※BL、無理矢理、監禁、近親相姦あります。 苦手な方はお気をつけください。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

3人の弟に逆らえない

ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。 主人公:高校2年生の瑠璃 長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。 次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。 三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい? 3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。 しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか? そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。 調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m

処理中です...