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第四章 留学

第十一話 姫菜子と龍輝とホストファミリー

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「着いた~!」

そう言って、長い手足をぐーっと伸ばして伸びをする龍輝。

いくらファーストクラスだったとしても、背の高い龍輝にとっては窮屈だった……わけではなく、

「暇だった~!」

単に退屈だったらしい。

ともあれジョン・F・ケネディ国際空港に到着した姫菜子達は、迎えに来た秀麗と夫のウィリアム=バークリーの熱烈歓迎を受けた。

『よく来てくれたわね。ロン、姫菜子。自分の家だと思って、リラックスして頂戴ね。』

『初めまして。Mr.ウィリアム、Ms.秀麗シゥリー。香住姫菜子と申します。宜しくお願い致します。』

『まぁ!綺麗なクィーンズイングリッシュだわ。ね?そう思わない?ウィリアム。』

『あぁ。久しぶりに母国の英語を聞いたよ。初めまして、姫菜子。龍輝とは久しぶりだな。私が龍輝の伯父のウィリアム=バークリーだ。此方にいる間は、私を父と思ってくれていいよ。』

『米国のお父様ですね?宜しくお願い致します。』

『貴方が父親なら、私は母親ね。宜しくね、私の娘スー ニィァン

『スーニィァン?』

『そうよ?"私の娘”という意味よ。』

秀麗から娘と言われ、姫菜子は嬉しくなった。

旭陽の母親も、姫菜子の事を娘の様に可愛がってくれるが、ここまでストレートに"娘”と言ってくれた事はないからだ。

姫菜子は龍輝に、中国語でお母さんとはどう言ったらいいの?と日本語で聞いた。

龍輝は、姫菜子が自分を頼ってくれている事、そして下から自分を見上げながら首を傾げながら聞いてくる彼女が可愛くて仕方がなくなった事で、思わず抱き締めてしまった。

そして姫菜子の耳元で、

「我爱你(愛してる)。」

と囁いた。

龍輝のその言葉は、中国語が分からない姫菜子にもしっかり分かった。

姫菜子は、龍輝の突然の告白と抱擁に真っ赤になりながらも、龍輝の腕の中から出ようと必死にもがいた。

「龍輝君。姫菜を離して貰えるかな?」

と「ウォッホン!」と大きくわざとらしい咳払いを一つした慎也が龍輝を睨みながら言った。

《貴方の気持ちは分かるけど、姫菜子さんのお父様の前では控えなさいね。》

と麗蘭から中国語でたしなめられると、

《分かった。じゃ、彼女の父さんが日本へ帰ったら口説き落とす事にするよ。》

と言ってニヤリと笑う龍輝に、彼の両親と秀麗が

《そうね。頑張りなさい龍輝。》

と言って笑っていた。が、北京語が分からないウィリアムと慎也は顔を見合わせ肩をすくめている。

肝心の姫菜子は、自分が龍輝にした質問への答えが聞けないままの事に怒りを感じ、龍輝の腕の中で顔を見上げて睨み付けるも、龍輝にとっては逆効果だったようで、

「睨んでも可愛いだけだからな。」

と言って、益々姫菜子を抱き締める力を強くしただけだった。

まさか同じ頃、日本では旭陽が陽子の暗示呪いから解放されており、姫菜子を傷つけた事を後悔しているなんて思いもしなかった。


こうして、姫菜子・旭陽・龍輝、そして陽子の4名ががっちりと絡んだ運命の歯車が、ゆっくりと動き始めた。
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