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第四章 留学

第六話 それぞれの覚悟

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成田国際空港にあるファーストクラスのラウンジには、姫菜子と慎也、そして龍輝とその両親が搭乗を待っている姿があった。

子供の留学をきっかけにし、その親同士も意気投合したようで、今ではビジネス仲間としても良い関係を気付いているようだ。

子供は子供同士、親は親同士、それぞれが仲良く話をしている中、館内アナウンスが入った。

「行こう!」

「うん!」

姫菜子を龍輝がエスコートするかの様に歩き出し、それに続いて二人の親も歩き出した。





「あれよね?姫菜子達が乗ってる飛行機って。」

「そうだね。」

「行っちゃうんだね。」

「そうだね。寂しいのか?」

「う、ん……。寂しいよ。玲音もでしょ?」

「俺には菫香がいるから。それに……。」

「それに?」

「俺達にはやるべき事があるだろ?」

「そうだね。あの男をなんとかしないとだものね。」

「姫菜子が帰ってくる迄に彼奴アイツを正気に戻す。そして……」

「あの女を排除。」

「そうだ。俺達の大事な姫を護る為に。」

「うん。寂しいがってる場合じゃないわね。」

「そうだね。あ!」

「あ!飛ぶね。」

「飛ぶな。頑張れ!姫菜子~。」

「行ってらっしゃい!姫菜~。」

大空に羽根を広げ飛び立つ白い大きな鳥に向かい、菫香と玲音が手を振る。

姫菜子と龍輝はアメリカで、菫香と玲音は日本で。

それぞれの戦いが始まった日だった。


✽・:..。o¢o。..:・✽・:..。o¢o。..:・✽

翌日

菫香と玲音のスマホにメッセージが送られてきた。

龍輝からだ。

【無事にアメリカに着いた。姫菜子も元気だ。】

と、直ぐに写真も送られてきた。

そこには、空港に迎えに来てくれた龍輝の伯母である秀麗と笑顔で話す姫菜子があった。

「姫菜、元気そうだね。」

と菫香が言えば、玲音がにこやかに微笑みながら頷く。

そして、さっきから感じる視線の方をチラリと見遣みやると、視線の主は旭陽だった。

いつもは自分達と一緒にいる姫菜子と龍輝が居ない事に気付いたのか?しきりと首を傾げている。

「あの馬鹿。やっと正気に戻るのかしら?」

「さぁ、どうだろうね。放課後の様子で分かるかも。」

「あぁそうね。姫菜子が居ない事に気付いたあの頭悪い女が、どう出て来るかによるわね。」

「もし菫香に何かしてきたら、その時は俺が守るからね。」

「おじ様譲りのアレで?」

「そうそう。これでも父さんと同じブラックベルトだからね。」

そう。玲音は父親流星ルイの影響で、小さい頃から空手を習っている。

万が一陽子が最愛の恋人である菫香に攻撃を仕掛けてきたら、身を呈してでも守る覚悟がある。

昔、母親 菜々子が、菫香の母親 百合香の義妹の白金桃香に誘拐された時、菜々子が監禁されていたマンションに流星自らのりこみ、犯人達と大立ち回りをしたのだ(貴方の駒になんて真っ平御免です をご覧下さい)。

その時役立ったのは、空手の腕前だったと聞く。

だからであろう。
玲音も、最愛の女性を守る為に、父親と同じ様に武道を習う事に決め、幼い頃から鍛錬を欠かさなかった。

本来は温厚な性格の玲音。

それはまるで、普段は主人に従順な大型犬の様。

だが、愛するつがいやおのれの縄張りを守る時だけ牙を剥き、勇敢に戦い敵を蹴散らす狼に変わる。

その姿を恋人の菫香さえも未だかつて見た事はない。が、この後、陽子の言動が玲音の逆鱗に触れてしまうことに。
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