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第三章 逆行~中学 高校~
第十八話 新しい友達
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「お前達。付き合い出したんだって?」
不躾に姫菜子と旭陽が定期テストの勉強している所へ来て話しかけたのは、在日中国人の張 龍輝だ。
龍輝は父親の仕事の関係で中学の頃から日本に来ているのだが、日本の学校に馴染めず(学校側から見ての)問題行動を起こしてばかりいたようで、父親の博龍が理事長に頼み込み、転校させた様だった。
元々色々な人種の生徒達がいる学校なのだから、肌の色も目の色も考え方も多種多様だ。
だから姫菜子や菫香達は、この転校生に対して、別段偏見も無かった。
龍輝はとても明るい性格で、誰とでも直ぐに仲良くなれる。また、曲がったことが大嫌いで、自分の意見をしっかり持っている。
だからこそ、一部の日本人教師の理不尽な理屈や行き過ぎた指導という名の言葉の暴力に耐えるクラスメイトを庇い、真っ向から対峙した為、教師から疎まれてしまい、転校を余儀なくされたのだろう。
姫菜子はそんな龍輝から、よくデートに誘われていた。
姫菜子は誘われる度に断っていたが、龍輝のそれは最早ルーティンと化していた。
「おはよ、姫菜子。今日も可愛いよ。僕とデートしよう。」
これが毎朝あるのだ。
最初の頃は丁寧に断っていた姫菜子だったが、今では適当に流す術を覚えた。
それが、姫菜子が旭陽と付き合う事になったと聞いた為に、図書室で勉強している姫菜子達の所へ来て、冒頭の言葉をぶつけたのだ。
「姫菜子。僕があんなにデートに誘ったのに…悲しいよ。」
と姫菜子の向かい側の席に座り、机に突っ伏して泣く龍輝の頭を撫でてあげようと姫菜子が手を伸ばしたその瞬間!
龍輝がガバッと頭を上げ姫菜子の手を握ろうとしたが、旭陽がそれを阻止した。
「Don't disturb!(邪魔するな!)」
「Don't tach her!She is mine.(触るな!彼女は俺のだ。)」
「闭嘴(黙れ)」
「Vous êtes dérangés! Ceci est une bibliothèque, donc si vous ne pouvez pas vous taire, sortez(煩いのは貴方達の方だわ!ここは図書室なんだから、静かに出来ないのなら出て行きなさい。)」
玲音と恋人同士になった菫香が、母親直伝のフランス語で、旭陽と龍輝を諌めた。
バイリンガルの旭陽、トリリンガルの龍輝でも、フランス語は分からない。
勿論、姫菜子も玲音にも……。
ぽか~んと口を開けている面々に、
「『煩いのは貴方達の方だわ!ここは図書室なんだから、静かに出来ないのなら出て行きなさい。』って、菫香は言ったのよ?本当にその通りだわ。迷惑だから、喧嘩なら他所でやって頂戴。」
とフランス人のクリスチーヌが、左手を腰に当て、右手で金髪をかきあげた。
(まるで今流行りの悪役令嬢の様だわ。)
とクリスチーヌを見て思う姫菜子。
「わ、悪かったよ。僕はずっと姫菜子が好きだったから、後から来た旭陽に取られて悔しかったんだ。」
と龍輝は小声で話始めた。
その姿はまるで捨てられた仔犬の様だ。
「ごめんなさい。私はずっと旭陽の事が好きだったの。だから、龍輝の気持ちは嬉しいけど、受け取れないわ。」
「そうか……。でも!僕が姫菜子を好きなのは変わらない。だからずっと好きでいるよ。」
「ありがとう、龍輝。私達、きっと良いお友達になれるわね。」
「姫菜子と友達。分かった!じゃ、僕も勉強一緒にやる。」
旭陽よりも少し背が低い龍輝だったが、嬉しそうに鞄から教科書やノート 筆記用具を出して、いそいそと勉強を始めるその姿に、姫菜子は
(大型犬みたいだわ。大きなしっぽが見えそうね。)
と思っていた。
不躾に姫菜子と旭陽が定期テストの勉強している所へ来て話しかけたのは、在日中国人の張 龍輝だ。
龍輝は父親の仕事の関係で中学の頃から日本に来ているのだが、日本の学校に馴染めず(学校側から見ての)問題行動を起こしてばかりいたようで、父親の博龍が理事長に頼み込み、転校させた様だった。
元々色々な人種の生徒達がいる学校なのだから、肌の色も目の色も考え方も多種多様だ。
だから姫菜子や菫香達は、この転校生に対して、別段偏見も無かった。
龍輝はとても明るい性格で、誰とでも直ぐに仲良くなれる。また、曲がったことが大嫌いで、自分の意見をしっかり持っている。
だからこそ、一部の日本人教師の理不尽な理屈や行き過ぎた指導という名の言葉の暴力に耐えるクラスメイトを庇い、真っ向から対峙した為、教師から疎まれてしまい、転校を余儀なくされたのだろう。
姫菜子はそんな龍輝から、よくデートに誘われていた。
姫菜子は誘われる度に断っていたが、龍輝のそれは最早ルーティンと化していた。
「おはよ、姫菜子。今日も可愛いよ。僕とデートしよう。」
これが毎朝あるのだ。
最初の頃は丁寧に断っていた姫菜子だったが、今では適当に流す術を覚えた。
それが、姫菜子が旭陽と付き合う事になったと聞いた為に、図書室で勉強している姫菜子達の所へ来て、冒頭の言葉をぶつけたのだ。
「姫菜子。僕があんなにデートに誘ったのに…悲しいよ。」
と姫菜子の向かい側の席に座り、机に突っ伏して泣く龍輝の頭を撫でてあげようと姫菜子が手を伸ばしたその瞬間!
龍輝がガバッと頭を上げ姫菜子の手を握ろうとしたが、旭陽がそれを阻止した。
「Don't disturb!(邪魔するな!)」
「Don't tach her!She is mine.(触るな!彼女は俺のだ。)」
「闭嘴(黙れ)」
「Vous êtes dérangés! Ceci est une bibliothèque, donc si vous ne pouvez pas vous taire, sortez(煩いのは貴方達の方だわ!ここは図書室なんだから、静かに出来ないのなら出て行きなさい。)」
玲音と恋人同士になった菫香が、母親直伝のフランス語で、旭陽と龍輝を諌めた。
バイリンガルの旭陽、トリリンガルの龍輝でも、フランス語は分からない。
勿論、姫菜子も玲音にも……。
ぽか~んと口を開けている面々に、
「『煩いのは貴方達の方だわ!ここは図書室なんだから、静かに出来ないのなら出て行きなさい。』って、菫香は言ったのよ?本当にその通りだわ。迷惑だから、喧嘩なら他所でやって頂戴。」
とフランス人のクリスチーヌが、左手を腰に当て、右手で金髪をかきあげた。
(まるで今流行りの悪役令嬢の様だわ。)
とクリスチーヌを見て思う姫菜子。
「わ、悪かったよ。僕はずっと姫菜子が好きだったから、後から来た旭陽に取られて悔しかったんだ。」
と龍輝は小声で話始めた。
その姿はまるで捨てられた仔犬の様だ。
「ごめんなさい。私はずっと旭陽の事が好きだったの。だから、龍輝の気持ちは嬉しいけど、受け取れないわ。」
「そうか……。でも!僕が姫菜子を好きなのは変わらない。だからずっと好きでいるよ。」
「ありがとう、龍輝。私達、きっと良いお友達になれるわね。」
「姫菜子と友達。分かった!じゃ、僕も勉強一緒にやる。」
旭陽よりも少し背が低い龍輝だったが、嬉しそうに鞄から教科書やノート 筆記用具を出して、いそいそと勉強を始めるその姿に、姫菜子は
(大型犬みたいだわ。大きなしっぽが見えそうね。)
と思っていた。
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