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第三章 逆行~中学 高校~

第十二話 両思い

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姫菜子を隠した者。旭陽だ。

「Ritchie!What's are you doing here?(ここで何してるの?)」

「I'm here to pick you up, right? Let's go!(迎えに来たに決まってる。帰るよ。)」

どうやら旭陽が姫菜子を迎えに来た様だ。
洸矢に抱き締められそうになった姫菜子を庇うその姿は、さながら白馬に乗った王子様の様だった。

「彼は?」

洸矢が不機嫌を丸出しにして、旭陽の後ろにいる姫菜子に尋ねた。

「彼は…「いい!俺が自己紹介する。」旭陽…」

「It's a pleasure to meet you. My name is Asahi Richard Shiragi. She is my lover. I'll tell you what.」

と言って、旭陽が洸矢に右手を差し出す。

「え?ラバー?君は姫菜ちゃんの彼氏なのか?」

「あぁ、そうだ。俺は姫菜の事が子供の頃から好きだからな。だから、姫菜の事をハグするのは辞めて欲しい。」

姫菜子を己の後ろに隠し、堂々と洸矢に対峙する旭陽。

だが、洸矢も負けてはいない。
自分より少し高い目線の旭陽に向かって、大人の男の貫禄を見せつける様に、

「でも、友愛の意味だってハグはするだろう?僕の場合、兄妹の意味のハグなんだから「それでも駄目だ。姫菜は俺のだから。」!!」

そう言って姫菜子をギュッと抱き締める旭陽。

高校生になり、身長が180cm近くまで伸びた旭陽は、スクールで運動部に入っているせいか?筋肉のバランスがとても綺麗で胸板も厚くて広い。
その為、身長158cmの小柄な姫菜子は旭陽の腕の中にすっぽりと入ってしまう。
おずおずと顔を上げて姫菜子は旭陽を見上げながら、

「We love each other,right?(私達両思いだったのね?)」

「The moment i met you, I knew it was love at first sight.(姫菜に初めて会った時に確信したんだ。一目惚れだったんだよ。)」

「嬉しい!」と言って旭陽に抱きつく姫菜子を、優しい笑顔で受け入れる旭陽。

2人だけの世界に入ってしまった事を咎める様に慎也が「んん」と咳払いをした。

「パパ!」

慎也の咳払いに、旭陽との世界に入り込んでいた姫菜子の顔が羞恥に染まった。

「君達の交際の話はまた後日だ。それより旭陽君。姫菜子を頼めるのかな?」

「はい!勿論です。」

と姫菜子とは逆に旭陽はとても冷静に返した。

「姫菜。パパはまだ仕事があるから一緒には帰れないけど、白鷺の奥さんが待っててくれていると思うから。」

「うん。大人しく待ってるわ。」

「あぁ。旭陽君、宜しく頼むよ。」

「Yes, sir. Hina. Come on with me. I parked over there.」

そう言って姫菜子の手を引き歩きだす。

「姫菜ちゃん。またお話しましょうね。」

愛美が優しく姫菜子の背中に言うと、姫菜子は振り向きそれに微笑みながら「はい」と答えた。

そして二人は冴島の屋敷から、車に乗って出ていった。

二人を見送っているその場に居合わせた者達には、その背中に刺すような視線を送っている者達がいることに、気づく様子は無かった。
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