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第三章 逆行~中学 高校~
第九話 遭遇(パーティ参加へ)
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ギャラリーが出来てから2年後
姫菜子はインターナショナルスクール高等部の1年生になった。
姫菜子にとって高等部進級も嬉しかったが、親友の菫香と菫香の母の親友の*²濱田菜々子の息子 玲音 も同じクラスになった事も嬉しかった。
そして何より嬉しかったのは、ハワイから帰国した旭陽が、姫菜子と同じインターナショナルスクールに入学した事だ。
クラスこそ違ったが、旭陽が日本にいる事、時差を気にせず話が出来る事、そして何より、姫菜子の事を我が事の様に心配し、誰よりも傍にいてくれようとしている旭陽の優しいところが、姫菜子の気持ちを落ち着かせてくれる。
だから、旭陽が同じ学校に通う事になったと聞いた時、姫菜子は飛び上がって喜んだ。
22歳で命を奪われはしたが、もし生きていられたとしたら29歳の姫菜子が、16歳の旭陽と出会う事は無かった。
ましてや旭陽を好きになる事など無かっただろう。
そう。姫菜子は旭陽の事を好きになっていた。
旭陽に会えると思うだけで胸がときめき、本来は13歳も年上である事を忘れてしまいそうになる。
逆行前に婚約までした祥太郎には感じたことの無い【想い】に、姫菜子は戸惑いはするも、(これが本物の恋心なのね。)と思えば自然と笑みが零れてしまうのだ。
そんな想いを抱えながら、でも恥ずかしくて打ち明けられずただ見つめているだけの学生生活をしていたある日。
慎也から、
「冴島家のご長男の亮太郎君の成人を祝う会に呼ばれてるんだが……、姫菜子はどうする?行くか?」
「亮太郎さんのパーティ?」
「あぁ。きっと背の高い男性が大勢来るだろう。どうする?無理しなくてもいいんだよ?」
「そか…。ちょっと考えてもいい?パパ。亮太郎さんのお祝いなら、行かなくちゃいけないって思うから。」
「そうだね。でも無理してまた発作が起きないとも限らないだろ?」
と、姫菜子の発作を心配する慎也。
PTSDの発作は、今のところ祥太郎に対してだけしか出ないのだが、慎也はそれを知らない為、背の高い男性全員が対象だと思っている。
「亮太郎さんのお祝いなら、きっと愛美お姉ちゃんも来るよね?」
愛美とは、冴島家の長女の事で、一昨年矢幡家へ嫁いでいる。
「私、愛美お姉ちゃんに結婚のお祝いをしていなかったでしょ?だから、お姉ちゃんに会いたいの。会って、お祝いをお渡ししたいな。」
「そうか。では愛美君に事情を話して、パーティの間は愛美君の傍にいるのがいいかもしれないな。だが、ご主人の洸矢氏がいるかもしれないぞ?大丈夫なのか?」
「う、うん……。なんとか頑張るよ。」
姫菜子は慎也の言葉に曖昧に答えると、
「ところでパパ。パーティはいつ?」
「来月最初の土曜だと聞いているよ。明日パパとパーティドレスを買いに行こうな。」
「はい。」
元気よく返事をした後、姫菜子は部屋に戻り日記帳を取り出した。
「亮太郎さんの成人パーティなんて前の生であったかしら?」
と、日記をペラペラと捲った。が、日記は9歳の巻き戻りの前までしか書いてないのだから、これから起こりうる事は全て、姫菜子の逆行前の記憶の糸を辿っていかなくてはならない。
数十分頑張ってみたが、どうしても思い出せない。
「逆行前は無かったのかもしれないわね。陽子もこの時点ではまだ現れないでしょうし、警戒するのは祥太郎さんだけで良さそう。それから……愛美お姉様。前の生でもよく可愛がって下さったわ。お会いするのが楽しみよね。」
姫菜子はそう言ってまた、日記帳に
『愛美さんの結婚祝い購入』
『父様とドレス』
『来月最初の土曜 パーティ⇒祥太郎警戒。愛美さんの傍から離れない』
と書き、鍵をかけると引き出しの隠し場所へ保管した。
*²濱田菜々子⇒【貴方の駒になど真っ平御免です】の登場人物です。
姫菜子はインターナショナルスクール高等部の1年生になった。
姫菜子にとって高等部進級も嬉しかったが、親友の菫香と菫香の母の親友の*²濱田菜々子の息子 玲音 も同じクラスになった事も嬉しかった。
そして何より嬉しかったのは、ハワイから帰国した旭陽が、姫菜子と同じインターナショナルスクールに入学した事だ。
クラスこそ違ったが、旭陽が日本にいる事、時差を気にせず話が出来る事、そして何より、姫菜子の事を我が事の様に心配し、誰よりも傍にいてくれようとしている旭陽の優しいところが、姫菜子の気持ちを落ち着かせてくれる。
だから、旭陽が同じ学校に通う事になったと聞いた時、姫菜子は飛び上がって喜んだ。
22歳で命を奪われはしたが、もし生きていられたとしたら29歳の姫菜子が、16歳の旭陽と出会う事は無かった。
ましてや旭陽を好きになる事など無かっただろう。
そう。姫菜子は旭陽の事を好きになっていた。
旭陽に会えると思うだけで胸がときめき、本来は13歳も年上である事を忘れてしまいそうになる。
逆行前に婚約までした祥太郎には感じたことの無い【想い】に、姫菜子は戸惑いはするも、(これが本物の恋心なのね。)と思えば自然と笑みが零れてしまうのだ。
そんな想いを抱えながら、でも恥ずかしくて打ち明けられずただ見つめているだけの学生生活をしていたある日。
慎也から、
「冴島家のご長男の亮太郎君の成人を祝う会に呼ばれてるんだが……、姫菜子はどうする?行くか?」
「亮太郎さんのパーティ?」
「あぁ。きっと背の高い男性が大勢来るだろう。どうする?無理しなくてもいいんだよ?」
「そか…。ちょっと考えてもいい?パパ。亮太郎さんのお祝いなら、行かなくちゃいけないって思うから。」
「そうだね。でも無理してまた発作が起きないとも限らないだろ?」
と、姫菜子の発作を心配する慎也。
PTSDの発作は、今のところ祥太郎に対してだけしか出ないのだが、慎也はそれを知らない為、背の高い男性全員が対象だと思っている。
「亮太郎さんのお祝いなら、きっと愛美お姉ちゃんも来るよね?」
愛美とは、冴島家の長女の事で、一昨年矢幡家へ嫁いでいる。
「私、愛美お姉ちゃんに結婚のお祝いをしていなかったでしょ?だから、お姉ちゃんに会いたいの。会って、お祝いをお渡ししたいな。」
「そうか。では愛美君に事情を話して、パーティの間は愛美君の傍にいるのがいいかもしれないな。だが、ご主人の洸矢氏がいるかもしれないぞ?大丈夫なのか?」
「う、うん……。なんとか頑張るよ。」
姫菜子は慎也の言葉に曖昧に答えると、
「ところでパパ。パーティはいつ?」
「来月最初の土曜だと聞いているよ。明日パパとパーティドレスを買いに行こうな。」
「はい。」
元気よく返事をした後、姫菜子は部屋に戻り日記帳を取り出した。
「亮太郎さんの成人パーティなんて前の生であったかしら?」
と、日記をペラペラと捲った。が、日記は9歳の巻き戻りの前までしか書いてないのだから、これから起こりうる事は全て、姫菜子の逆行前の記憶の糸を辿っていかなくてはならない。
数十分頑張ってみたが、どうしても思い出せない。
「逆行前は無かったのかもしれないわね。陽子もこの時点ではまだ現れないでしょうし、警戒するのは祥太郎さんだけで良さそう。それから……愛美お姉様。前の生でもよく可愛がって下さったわ。お会いするのが楽しみよね。」
姫菜子はそう言ってまた、日記帳に
『愛美さんの結婚祝い購入』
『父様とドレス』
『来月最初の土曜 パーティ⇒祥太郎警戒。愛美さんの傍から離れない』
と書き、鍵をかけると引き出しの隠し場所へ保管した。
*²濱田菜々子⇒【貴方の駒になど真っ平御免です】の登場人物です。
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