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第十一章 領域封印(準備編)

閑話

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ここで説明しておこう。
それは、愛子以外にも称号を剥奪された者のその後を。

先ずは、聖女の称号を剥奪された西山愛子だ。
望が勇達と戦って勝った際、賢と昴が放った攻撃を、望が愛子を庇った事で怪我をしてしまったのだが、傷付き倒れた望を助けなかっただけでなく、同じく傷付いた自分の仲間(勇・賢・昴の3人)の治癒もせず、ただオロオロとするだけで何もしなかった(正確には出来なかったのだが)事をミランダにとがめられた。
結果、愛子は王に聖女の称号を剥奪されてしまったのだ。

また愛子以外にも称号を剥奪された者達と言えば、望達が通う学校の教師である寺田昭弘と、望達より1つ年上の中島洋平だ。

彼等は先の大規模討伐の際、「そこでしっかり己の力を示し役割りを果せ。さもなくば……」と王から最後通告をされていたにも関わらず、ただ足手まといになっただけ。それにより不適合者の烙印を押されてしまい、称号を剥奪されてしまったのだった。

2人からしたら、 「王国そっちが勝手に召喚しただけなのに横暴だ!」と文句を言ういちゃもんをつける権利はあったはずなのだが、そんなことより、もう二度と魔獣との戦いあんなことをしなくてもいいのだと思うと、素直に称号剥奪に応じたという。

そして愛子と昭弘と洋平は今、望と違って称号剥奪後も市井に落とされるは事無かった。一応客人として城内には居るのだが、今までどおりの高待遇を受ける事はなく、又部屋も城の使用人部屋に移され、そこで只管ひたすら日がな一日を過ごしている。


相田勇・田代賢・中山昴の3人も同様に、望との直接対決に敗れ、称号を"剥奪”、ではなく自ら"返還”した(事にした。国王からは剥奪命令が出ていたが、"大規模討伐の際何もしなかった西山達とは違いこの3人は"それなり”ではあるが、一応魔獣と戦ったという実績があった為、お情け・・・をやっても良いのでは?”と言ったルードリッヒの提案で返還そうなった)。
それにより、これら3人も上記3人と同じ処遇になるはずだったのだが、大規模討伐の際の動きを買われたのと、その後もクリスタルドラゴン討伐に自ら進んで志願した事で、3人同室ではあったが、貴族用の客間を与えられていた。
また、世話をする侍女をつけても貰え、食事も貴族のそれと同じ物を与えられた。
しかし彼等は高待遇それに対して慢心することなく、勇者・賢者・魔法使いとしてのスキルを向上させる訓練を続け、また領域についての知識を得る為の講義
真面目に受けている。


そして、彼ら以外に処罰・・を受けた者達がいた。
それは国王とダ・マーレだ。

先ずはダ・マーレ
彼は勇達を召喚した際、魔力無しと認定された望への不適切な対応をルードリッヒから責められたばかりか、他神官への暴挙や寄付金の横領迄もが明かされ、身分を剥奪され魔力封じの魔道具を着けられ、魔獣の森に放り出された。
一応森には、魔獣監視小屋と呼ばれる掘っ建て小屋が有り、ダ・マーレはそこで監視員として、残りの余生を魔獣に怯えながら送る事となったのだ。

これらダ・マーレへの処罰について、ルードリッヒ曰く
「魔力を持たない望が、市井に落とされた時、はたしてどんな気持ちだったかを身をもって知るといいよ。それに、此方の都合で召喚した異世界からのお客人に対する極悪非道な行いをする者に、聖職者として従事する資格は無いからね。」
と、それはそれは綺麗な笑顔でそう言っていた。

そして最後は国王だ。
異世界人召喚後の望への対応等々をダ・マーレ(部下)に一任(要は丸投げ)し、詳細を把握しなかったという職務怠慢を息子であるルードリッヒに問われた。
国王はそれを潔く認め、ミランダが領域封印後、王太子を国王にして自らは退位すると宣言した。

この一連の処罰を言い渡したルードリッヒは、とてもすっきりとした顔で城内で与えられた己の部屋に戻ると、公爵としての仕事に精を出したのだった。
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