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第十一章 領域封印(準備編)
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望達がクリスタルドラゴンの魔石を採取しに行っている間、ミランダは公爵家の広い敷地内で特訓に励んでいた。
元々ミランダは結界師であり、聖女が張る結界とはまた違うものだ。もちろん〖治癒魔法〗も〖回復魔法〗もそうであり、聖女のものとは異なっている。更に決定的に違うのは、〖浄化魔法〗という聖女だけが発動することの出来る、所謂"聖魔法”は全く使えないのだ。
本来であれば聖魔法は召喚された西山愛子が出来て然るべきだった。が、愛子はそれ等聖女が身につける為の訓練を放棄し、男漁りに興じていた事が、先日の直接対決で露呈されてしまったのだ。
その為愛子は、聖女の称号を剥奪され、代わりにミランダが本来とは違う聖女の役目を担うことになったのだ。
国王より勅命を貰った翌日から、ミランダは封印をする為の〖聖魔法〗の会得をする訓練を始めた。
だがミランダは、本来の適正と違う職に戸惑い、魔法の修得に苦戦していた。
特に封印に使用する"聖なる杖”に、ミランダは魔力を通せないでいたのだ。
そこで、クリスタルドラゴンの魔石をその杖に付与すれば、ミランダの魔力の効果を増大してくれるのでは?と望が提案し、相田勇達の試験も兼ねて採取に出掛けたのだった。
「あまり根を詰めるとお身体に毒ですぞ、ミランダ殿下。少しご休憩なされては?」
と執事のダンヒルがそう言った為、
「そうですね。少しだけ休憩を取りますわ。お茶を入れて下さる?」
「はい、畏まりましたミランダ殿下。既に四阿に用意してございます。」
そう言ってミランダを四阿に先導するダンヒル。
ダンヒルについて四阿に到着したミランダは、椅子に腰掛けるとダンヒルの入れたピーチティーを飲んでふぅ~とひと息ついた。
すると
「ミランダ殿下に申し上げます。」
とダンヒルに言われ
「あら、何かしら?ダンヒル」
「恐れながら殿下は、何をそんなに気を急いておられるのです?」
「わたくしが?ダンヒルにはそう見えるのかしら」
「はい、左様にございます。我武者羅に精を出されるのも良い事なのかもしれませぬが、効率が悪くなるのであればそれでは元の木阿弥というもの。」
「元の木阿弥?それはなんという意味ですの?」
「ここより遠き国に伝わる言葉で、"苦労や努力にもかかわらず、もとの状態にもどってしまうこと。”にございます。」
「そう……確かに効率が落ちれば元の木阿弥ですわね。」
「はい、左様にございますな。ですからここは、ルードリッヒ殿下達がお戻りになられるまで、詠唱の練習等なされていてはいかがでしょう?」
「そうですわね。そう致しましょう」
ミランダはダンヒルの提案に同意すると、その後はのんびりとティーカップを傾け、美味しいピーチティーを飲みながら、封印の詠唱と紡ぎ出す魔法陣の復習や、領域について書かれていた文献を読んだりして、暫しの休憩時間を過ごした。
その後また、ミランダは訓練を始めたのだが、休憩前とは打って変わり、焦り等を全く感じさせない様なやり方になっていた。
その為、周囲の者も彼女の身体を必要以上に案じたりする事なく見守っていられたのだった。
元々ミランダは結界師であり、聖女が張る結界とはまた違うものだ。もちろん〖治癒魔法〗も〖回復魔法〗もそうであり、聖女のものとは異なっている。更に決定的に違うのは、〖浄化魔法〗という聖女だけが発動することの出来る、所謂"聖魔法”は全く使えないのだ。
本来であれば聖魔法は召喚された西山愛子が出来て然るべきだった。が、愛子はそれ等聖女が身につける為の訓練を放棄し、男漁りに興じていた事が、先日の直接対決で露呈されてしまったのだ。
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そこで、クリスタルドラゴンの魔石をその杖に付与すれば、ミランダの魔力の効果を増大してくれるのでは?と望が提案し、相田勇達の試験も兼ねて採取に出掛けたのだった。
「あまり根を詰めるとお身体に毒ですぞ、ミランダ殿下。少しご休憩なされては?」
と執事のダンヒルがそう言った為、
「そうですね。少しだけ休憩を取りますわ。お茶を入れて下さる?」
「はい、畏まりましたミランダ殿下。既に四阿に用意してございます。」
そう言ってミランダを四阿に先導するダンヒル。
ダンヒルについて四阿に到着したミランダは、椅子に腰掛けるとダンヒルの入れたピーチティーを飲んでふぅ~とひと息ついた。
すると
「ミランダ殿下に申し上げます。」
とダンヒルに言われ
「あら、何かしら?ダンヒル」
「恐れながら殿下は、何をそんなに気を急いておられるのです?」
「わたくしが?ダンヒルにはそう見えるのかしら」
「はい、左様にございます。我武者羅に精を出されるのも良い事なのかもしれませぬが、効率が悪くなるのであればそれでは元の木阿弥というもの。」
「元の木阿弥?それはなんという意味ですの?」
「ここより遠き国に伝わる言葉で、"苦労や努力にもかかわらず、もとの状態にもどってしまうこと。”にございます。」
「そう……確かに効率が落ちれば元の木阿弥ですわね。」
「はい、左様にございますな。ですからここは、ルードリッヒ殿下達がお戻りになられるまで、詠唱の練習等なされていてはいかがでしょう?」
「そうですわね。そう致しましょう」
ミランダはダンヒルの提案に同意すると、その後はのんびりとティーカップを傾け、美味しいピーチティーを飲みながら、封印の詠唱と紡ぎ出す魔法陣の復習や、領域について書かれていた文献を読んだりして、暫しの休憩時間を過ごした。
その後また、ミランダは訓練を始めたのだが、休憩前とは打って変わり、焦り等を全く感じさせない様なやり方になっていた。
その為、周囲の者も彼女の身体を必要以上に案じたりする事なく見守っていられたのだった。
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