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第八章 王との謁見(相応しいのは誰だ?直接対決編)

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え?三日も寝てたの?僕……。
道理で身体も重いし声も出難い理由わけだ。

「先ずはお水を飲みましょうね、のぞむ君。貴女、手伝って頂けるかしら?のぞむ君を寝台の上に座らせたいんですの。」
とミランダさんが水差しとコップを持ってきてくれた女の人(多分だけど、ここで働いてる侍女さんとかだろうね。)に声をかけたんだ。するとその人は
「畏まりました。」
と言って、銀のトレーに乗せた銀食器等が乗ったワゴンを僕が寝ているベッドの脇に置き、ミランダさんと一緒に僕の上半身を起こしてくれた。
そして、ソファにあったクッションを僕の背中に挟んでくれ、
「失礼致しました。」
と言って、部屋を出ていったんだ。

ワゴンが置かれたベッドの左側に移動したミランダさんは、ガラスの水差しから銀のコップにオレンジの果実水を注ぎ込むと、
「失礼致しますわね。」
と言って、その水を一口含んで飲み込んだ。そして、
「毒は入ってはおらない様ですわ。」
「え?毒…です、か?」
「えぇ、そうですわ。毒の有無を確かめる為に銀食器に水を注ぎましたが、念の為にわたくしが毒味を致しましたの。元王族として毒には慣らされておりますけれども、のぞむ君は違いますでしょう?」
と言って、「さ、どうぞ。」と銀のコップ…さっきミランダさんが使ったそのまんまのコップを僕に差し出すミランダさん。
関節キスとか思わないのかな……。
なんて事を思いながら、僕は差し出されたコップを両手で受け取り、果実水を飲んだんだ。

一口飲むごとに身体中の細胞に水が行き渡っていく様な感覚だ。
コップの水を全て飲み干した僕は、ミランダさんにお代わりをお願いした。
「お代わりですのね?お待ちになって。」
と言って、彼女は僕からコップを受け取り、また水差しから果実水をコップに注ぎ入れてくれた。
そして、その手をコップに翳してから、僕に渡してくれたんだ。
「果実水に回復魔法をかけておきましたの。きっと直ぐに元気になりましてよ。」
と可愛らしい笑顔を浮かべ、僕にそう言ってくれたんだ。

その回復魔法がかかった果実水を飲む度、僕は少しずつ元気になっていった。
そしてミランダさんから、僕が倒れた後の話を聞かせてもらったんだ。

「へぇ~。そんな事があったんですね。あぁそうだ。ありがとうございました、ミランダさん。僕の我儘、聞いてくれたんですよね?」
と聞くと、
「えぇ。叶えましたわよ。不本意ではございましたけど。」
と言って口を尖らすミランダさん。
ハハハと笑う僕に、
「でも……そのおかげで、愛子さん…でしたわね。彼女はのぞむ君の事を諦めて下さったみたいでしたので、良しと致しますわ。」
とわけの分からない事を言っている。
「西山さんが僕の事を諦めた?それって……彼女が僕の事を好きって事ですか?」
と聞くと、
「そうですわ。あの方は、のぞむ君の事がお好きでしたのよ。」
とミランダさんがキッパリと言っている。
「もし仮に彼女が僕の事を好きそうだとしても、僕が彼女を好きになる事はありませんよ。」
「本当ですの?のぞむ君」
「本当です。それに僕は…その……。」
「如何なさいましたの?のぞむ君。お顔が真っ赤ですわよ?大変ですわ!熱が上がってしまったのかしら。待っていらしてのぞむ君。今、魔法で熱を……。」
「だ、大丈夫です。熱なんてありませんから!と、それより教えて下さい。こ、此処は何処ですか?」
と、本当に魔法を発動しそうになるミランダさんを慌てて止める為に質問をしたんだ。
「本当に大丈夫ですの?でしたらよろしいのですが……。そうでしたわね。此処は城内にございます、離宮内の客間ですわ。」
離宮の客間……。豪華だな。客間っていうくらいだから、各国の要人が来た時用の部屋なんだろう。上流階級の人間を適当な部屋に泊まらせたりとかしたら、それこそ国際問題だもんな。と、ミランダさんの言葉を聞いて、豪華な内装の部屋の理由に一人納得していると、部屋のドアをノックする音が聞こえたんだ。
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