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第五章 変わったヲタ

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案の定、魔法の熱を感じ頭を振り拒否の気持ちを表そうとする寺田を押さえようと、僕は、寺田の首の当たりにいるミランダさんの後ろを回ると、寺田の頭を押さえ、ミランダさん治療のサポートをした。

その後僕は、寺田を覆う氷を徐々に溶かしていきながら、ミランダさんがやり易い様に、徹底的にサポートをした。
寺田自身も、最初は暴れようとしたが、最後の方になると、無抵抗になった。
きっと、ミランダさんの魔法のおかけで、自身の身体が楽になったからだろう。
暴れなくなった寺田の猿轡を外してやると、寺田はその細い目を開けて、
「あぁ……。熱が……痛みが消えていく。ありがとう。ありがとう、美しい女神様。本当に感謝致します。」
とミランダさんに、手を合わせ感謝の言葉を述べていた。
挙句、横たわった状態でその汚い手を伸ばし、ミランダさんを触ろうとしたので、
「汚い手で彼女に触らないで貰えますか?先生。もし触ったら、もう一度ベアの前に放り出しますよ?」
と言って脅してやった。
すると寺田は消え入る様な声で
「…………ごめんなさい。」
と言ってまた目を閉じたから、僕は吹き出しそうになってしまった。
あれだけ元の世界で僕をき下ろしたくせに、今は僕の言葉に素直に従う寺田。
どういう風の吹き回しかは定かでは無いが、少なくともは、逆らう事で治療を止められたら困ると思い、従っているだけかもしれないが……。

そんな事を思っていると、
「残る治療は頭部だけになりましたね、のぞむ君。」
と話しかけられ、はっと我に返った。
そして、
「そうですね。ですが、見たところミランダさんの魔法がなくても、ご本人の治癒力で治りそうな程度なので……。薬草を塗った綺麗な布を貼っておけば、あとは王宮の方々にお任せで大丈夫かと思います。それよりミランダさん。僕の願いを聞いて下さりありがとうございました。残りは僕の方でやりますので、ミランダさんは、僕達の本当の仲間・・・・・の治療に専念して下さい。」
と言うと、
「礼には及びませんわ。……のぞむ君の希望は、わたくし、全部叶えて差し上げたいのですもの。」
とミランダさんは僕の顔をじっと見てそう言った。
そんな僕達のやり取りを聞いていたリーダーの1人が、
『のぞむ!ミランダ様を泣かすなよ~。』
と通信機を通じて揶揄ってきた為、
『それより、其方のベアですが……、そろそろ始末しちゃって下さい。』
と言って、僕はその言葉を一蹴した。
すると、
『ったく。乙女心がわかんねぇ男だぜ、のぞむはよ。』
『ま、それがのぞむだから仕方ねぇやな。』
と訳の分からない事を言っていたので、僕は
『魔導士さん。障壁あれの解除をお願い出来ますか?』
と、勇達と、彼等が戦うベアを障壁で囲む様、魔導士さんに頼んだ。
障壁を張るよう依頼した理由は、単純明快だ。先程、勇達の悪巧みにより、レオに翻弄され、恐怖を味わった中島先輩の思いを彼等にも味わって貰いたかったし、何より元の世界で彼等から受けた暴力により、辛く苦しかった僕の気持ちを理解させたかったからだ。

寺田が治療を受けている間、障壁の中でベアの攻撃に翻弄されている勇達をちらちらと見ていた。
僕からの言葉どおり、障壁の中で翻弄されている勇達を、冒険者達は笑い、嘲り、沢山揶揄ってくれた。
それにより僕の溜飲が少しだけ下がったが、完全に恨みが消えるのは、まだ先の話だと思う。と、障壁が無くなり、勇達を笑っていた冒険者達が、勇達を完全放置の状態でベアを追い詰めていく様子を見ながら考えていた。
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