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第五章 変わったヲタ

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「それは……なんですの?」
僕が取り出したスマホを見たミランダさんが、不思議そうな顔をし、小首をかしげて聞いてきたが、
「今は一刻を争う事態ですので、これについての説明はまた後日致します。先ずは……」
と言ってお手製のカメラスタンドを鞄から取り出してその場に立て、スマホを設置し起動させた。そして写真アプリからビデオモードにするとアングルや高さ等を調節し、録画を始めた。

横たわっている寺田のすぐ横に座った僕は、顔だけ出した状態で氷漬けになっている寺田に呼びかけた。
「先生!寺田先生!大丈夫ですか?」
「う……うぅ……。」
だが火傷のショックからだろう。呼びかけに応じない─いや応じる事が出来ないでいる寺田に治療を施して貰うため、僕は、寺田を覆っている首から胸までの氷を、先程中山から貰った水(一先ず異空間に保管しておいたもの)をかけて氷を溶かすと、再度
「火傷の具合を見ます。服を切りますね。」
と呼びかけながら、取り出した短剣タガーで、焼け焦げボロボロになっている寺田の服を切った。

火傷はそれなりに酷くはあったが、ミランダさんなら治せそうだ。
「先生。これからミランダさんに、治癒魔法をかけて貰います。少し辛いかもしれませんので、舌を噛み切らないように、これを咥えて下さい。」
と言って、僕は寺田の口に有無を言わさず猿轡を装着した。
一応この処置をしたのには、列記とした理由がある。
怪我や病気に対して治癒魔法を受ける際、魔力が体内に入ってくる時に感じる熱は、"温かくて心地よい”と感じるのものなのだが、今回寺田が受ける治癒魔法は火傷の治療となる。今の寺田にとって、熱さ・・トラウマとなっており、治癒により発生する熱に拒否反応を起こし暴れ出す可能性がある。だが、患者である人間が暴れてしまっては、いくら高位の治癒士であっても、治療は上手く行かない。
しかも、この世界には鎮痛剤も麻酔も無い為、痛みに慣れていない寺田は、少しの熱さだとしても十中八九暴れ出すに違いない。
寺田が暴れて、ミランダさんに怪我をさせる訳にはいかないと思ったからこその、猿轡作戦だった。

「さぁ先生。直ぐに楽になりますよ。」
と言って、僕はミランダさんを仰ぎみると、
「ミランダさん。申し訳ありませんが、僕の隣りに来て、先ずは彼の喉の内部に治癒魔法をかけて下さいますか?」
とカメラに被って、寺田の治療風景の撮影が出来なくならない様に、ミランダさんを誘導した。

僕の言葉に少しだけ頬を赤く染めたミランダさんは、
「分かりましたわ。喉の治療から始めればよろしいんですのね?」
と言って、僕の隣りに来て立膝になると、両手を寺田の喉に翳して呪文(殆ど詠唱無しだが)を唱え治療を始めた。
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