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第四章 大規模討伐と彼等との再会
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「勇達……いや、西山・寺田先生・中島先輩が使い物にならないだなんて……嘘だろ……。」
ミランダさんに見せてもらった手紙を読み終えた僕は、手紙を差し出された状態に戻すと、ミランダさんにお返ししながらそう言った。
「嘘ではない。俺は王宮騎士団長をやっているリックベルソンから直接その者達の様子を聞いたんだから間違いは無い。」
と手紙の内容に間違いは無いと断言したカールソンさん。
「リック騎士団長の話だと、のぞむ達が此方に召喚された当時、他の者達は皆、のぞむに魔力が無いと言って馬鹿にしていたそうだね。」
とルードリッヒさんからそう問われ、僕は「はい。」と頷いた。
「でも、のぞむ君は、今では私達のパーティーにはなくてはならない存在ですわ。そうですわよね?お兄様。」
「ミランダの言うとおりだよ。俺はのぞむの腕を買っている。君は、冒険者としても付与師としても素晴らしいし。なにより努力家だからね。」
「俺の厳しいトレーニングにもよく耐えたしな。」
と三人から褒められてしまい、なんかムズムズするなと思っていると、カールソンさんから、一緒に召喚された勇達のその後の様子を聞かされた。そしてその話により、何故僕達が他の冒険者達と一緒に討伐に呼ばれたのかを理解する事が出来たんだ。
カールソンさんからの話はこうだった。
王宮に残った勇達は、それぞれの職に合わせた訓練や指導を受けており、今までにも何度か魔獣と戦っていた。が、実際に魔獣を倒していたのは勇 賢 昴の三人だけであり、愛子と昭弘に関しては、毎回何か理由を付けては全く戦おうとはしなかった。
洋平に至っては、どうやら王宮に与えられた部屋から出ようともしなかったらしい。
それに剛を煮やした王は、今回の魔獣戦で勝利を収めたあかつきには、それぞれが希望する物を与えると約束し、六人を森へと向かわせる事にした。
騎士達に護衛されながら現地に到着した勇達は、それぞれ欲しい物を口にしながら、意気揚々と魔獣戦が多く出現するポイントまで自分達だけで向かった。が、何故かものの10分もしない内に、走って騎士達が待つ場所に戻ってしまったのだ。
それだけであればまだ良かったが、既に魔獣と一戦混じえた後だった状態で背を向け逃げ帰ってきた様で、勇達を追って傷を負った魔獣達も後を追って来てしまったのだ。
一応警戒をしていた騎士達だったが、突然魔獣の群れが攻めてきた為、臨戦態勢に入るのが少し遅れてしまった。
それでも騎士達は、日頃の訓練と連携した動きの賜物で、魔獣を全滅する事が出来た。が、やはり十数名の怪我人を出してしまった。
そこで聖女である愛子に、治癒と怪我人の治療の間、念の為の結界張りを依頼したのだが、
「そんな事出来ないもん!だって愛子、そんなの誰からも教えて貰ってないもん!」
の一点張りで、治癒魔法をかける事も結界を張ることもせず馬車の中に閉じこもってしまったという。
確かに愛子には、まだ治癒魔法も結界を張る事も出来ないのだが、それは彼女が少しも学ぼうとしないせいであって、誰も教えていないわけではない。
それなのに、身勝手な振る舞いをした愛子に対し、騎士団長は心底呆れてしまった。
しかし怪我人をこのまま放っておく訳にも行かず、他に治癒魔法を唱える事が出来る、僧侶の昭弘にそれを頼んだ。だが、彼もまた、
「俺はあくまで生徒達の保護者で、本職は教師だ。教師は、生徒達を見守り、その都度適切な指導をするのが仕事であり、治癒魔法等という行為は教師の本分では無い。」
と訳の分からない理屈を捏ね、その役目を果たそうとはしなかった。
その保護対象である生徒達が、先程、魔獣達の攻撃を受け、危険にさらされていたにも関わらず。しかもその生徒達が、僅か数分前迄、未熟ながらも必死で騎士達に混じって戦っていた時に、この男はその時間ずっと馬車の後ろに隠れており、いつものように何もしなかったのだ。
昭弘は何も反論してこない騎士団長を見て、上手く論破出来たと自慢げにしていたが、騎士団長はただ呆れて何も言わなかっただけだった。
この様な愚かな者達のせいで、大事な部下である騎士達を亡くす事は出来ないと思った騎士団長は、部下に言って、馬車の荷台に(このような事もあろうかと、秘密裏に用意してあった)ポーションを持ってこさせ、怪我人達に飲ませる事で対応したのだ。
因みに中島だが、一応魔獣と戦った様だ。その戦い方といえば、ただ武器をブンブンと振り回しまくるだけで、魔獣に傷一つ負わせる事もないお粗末な戦い方ではあったが、魔獣も騎士達も危なくて傍に寄れなかったという意味では、少しは役に立ったのかもしれない。
まぁ、愛子や昭弘よりはましだったという程度なのだが……。
ミランダさんに見せてもらった手紙を読み終えた僕は、手紙を差し出された状態に戻すと、ミランダさんにお返ししながらそう言った。
「嘘ではない。俺は王宮騎士団長をやっているリックベルソンから直接その者達の様子を聞いたんだから間違いは無い。」
と手紙の内容に間違いは無いと断言したカールソンさん。
「リック騎士団長の話だと、のぞむ達が此方に召喚された当時、他の者達は皆、のぞむに魔力が無いと言って馬鹿にしていたそうだね。」
とルードリッヒさんからそう問われ、僕は「はい。」と頷いた。
「でも、のぞむ君は、今では私達のパーティーにはなくてはならない存在ですわ。そうですわよね?お兄様。」
「ミランダの言うとおりだよ。俺はのぞむの腕を買っている。君は、冒険者としても付与師としても素晴らしいし。なにより努力家だからね。」
「俺の厳しいトレーニングにもよく耐えたしな。」
と三人から褒められてしまい、なんかムズムズするなと思っていると、カールソンさんから、一緒に召喚された勇達のその後の様子を聞かされた。そしてその話により、何故僕達が他の冒険者達と一緒に討伐に呼ばれたのかを理解する事が出来たんだ。
カールソンさんからの話はこうだった。
王宮に残った勇達は、それぞれの職に合わせた訓練や指導を受けており、今までにも何度か魔獣と戦っていた。が、実際に魔獣を倒していたのは勇 賢 昴の三人だけであり、愛子と昭弘に関しては、毎回何か理由を付けては全く戦おうとはしなかった。
洋平に至っては、どうやら王宮に与えられた部屋から出ようともしなかったらしい。
それに剛を煮やした王は、今回の魔獣戦で勝利を収めたあかつきには、それぞれが希望する物を与えると約束し、六人を森へと向かわせる事にした。
騎士達に護衛されながら現地に到着した勇達は、それぞれ欲しい物を口にしながら、意気揚々と魔獣戦が多く出現するポイントまで自分達だけで向かった。が、何故かものの10分もしない内に、走って騎士達が待つ場所に戻ってしまったのだ。
それだけであればまだ良かったが、既に魔獣と一戦混じえた後だった状態で背を向け逃げ帰ってきた様で、勇達を追って傷を負った魔獣達も後を追って来てしまったのだ。
一応警戒をしていた騎士達だったが、突然魔獣の群れが攻めてきた為、臨戦態勢に入るのが少し遅れてしまった。
それでも騎士達は、日頃の訓練と連携した動きの賜物で、魔獣を全滅する事が出来た。が、やはり十数名の怪我人を出してしまった。
そこで聖女である愛子に、治癒と怪我人の治療の間、念の為の結界張りを依頼したのだが、
「そんな事出来ないもん!だって愛子、そんなの誰からも教えて貰ってないもん!」
の一点張りで、治癒魔法をかける事も結界を張ることもせず馬車の中に閉じこもってしまったという。
確かに愛子には、まだ治癒魔法も結界を張る事も出来ないのだが、それは彼女が少しも学ぼうとしないせいであって、誰も教えていないわけではない。
それなのに、身勝手な振る舞いをした愛子に対し、騎士団長は心底呆れてしまった。
しかし怪我人をこのまま放っておく訳にも行かず、他に治癒魔法を唱える事が出来る、僧侶の昭弘にそれを頼んだ。だが、彼もまた、
「俺はあくまで生徒達の保護者で、本職は教師だ。教師は、生徒達を見守り、その都度適切な指導をするのが仕事であり、治癒魔法等という行為は教師の本分では無い。」
と訳の分からない理屈を捏ね、その役目を果たそうとはしなかった。
その保護対象である生徒達が、先程、魔獣達の攻撃を受け、危険にさらされていたにも関わらず。しかもその生徒達が、僅か数分前迄、未熟ながらも必死で騎士達に混じって戦っていた時に、この男はその時間ずっと馬車の後ろに隠れており、いつものように何もしなかったのだ。
昭弘は何も反論してこない騎士団長を見て、上手く論破出来たと自慢げにしていたが、騎士団長はただ呆れて何も言わなかっただけだった。
この様な愚かな者達のせいで、大事な部下である騎士達を亡くす事は出来ないと思った騎士団長は、部下に言って、馬車の荷台に(このような事もあろうかと、秘密裏に用意してあった)ポーションを持ってこさせ、怪我人達に飲ませる事で対応したのだ。
因みに中島だが、一応魔獣と戦った様だ。その戦い方といえば、ただ武器をブンブンと振り回しまくるだけで、魔獣に傷一つ負わせる事もないお粗末な戦い方ではあったが、魔獣も騎士達も危なくて傍に寄れなかったという意味では、少しは役に立ったのかもしれない。
まぁ、愛子や昭弘よりはましだったという程度なのだが……。
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