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第三章 それぞれの魔獣戦

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ハイネさんの店で話した翌日から、僕はルードリッヒさん・カールソンさん、そしてミランダさんに見守られながら、兎獸・牛獣・猪獣を次々と倒していった。
ギルドに出された依頼(依頼主は、家畜や農作物を荒らす魔獣を駆除して欲しいという農業区に住む人達だそうだ。)を受けた形のものや、ただ僕の経験値をあげる為に狩ったものもある。
前者は狩った魔獣達を依頼書と共にギルドへ持っていき報酬を得たが、後者はただの狩りなので、ハイネさんに無償で卸した。勿論僕が卸した魔獣の肉は、彼女の食堂で料理として出されて、お客さん達は大喜びだそうだ。
何故なら、魔獣の肉はとても美味しいのだが、価格が高くて平民の口には入らない事が多い。だから、ハイネさんの食堂に来る常連さん達からすると、僕がやっている魔獣狩りは感謝しかないらしい。
少しだけだけど、恩返しが出来てる様で、僕は喜びを感じていた。

喜ばしい事は他にもあった。それは魔獣狩りにより経験値が向上し、僕のHP(hit point)が上がってきた事だ。
経験値が一定のレベルに達すると、僕のレベルも上がっていく。ここはゲームの中の世界じゃないけど、でもレベル上げとかいう観点はまさにRPGと同じだった。
このまま狩りを頑張れば、勇達のレベルに追いつくかもしれない。
それにはもっと体を鍛えて、魔銃を撃っても飛ばされないだけの体を作らないとと思った。
だから僕は、カールソンさんに頼んで、朝晩のジョギングの他に、部屋で出来るトレーニングを始めたんだ。

プランク,サイドプランク左右側,ワンレッグプランク左右,ヒップリフトブリッジプランクプッシュアップ,スパイダープランクを各20秒ずつやり、間に10秒ずつ休憩を入れる。それを2セットやって合計で8分間のメニューだ。
最初は出来なくて辛かったトレーニングも、歯を食いしばって頑張った結果、冒険者としてのレベルが20まで上がった今では、難なくこなせる様になっていた。
勿論、毎日の体幹トレーニングのおかげで、魔銃を撃っても飛ばされなくなったんだ。

でも、ルードリッヒさんもカールソンさんも僕なんかより数段強い。だから、ランクが高い魔獣と戦う時は足でまといになりがちなんだ。それでも僕が出来る事をやって、必死で彼等に食らいついていく様にしている。
何故なら……、魔力の無い僕にだって出来るんだって言ってくれたパーティーメンバーこの人達の気持ちを、期待を踏みにじらない為に。そして、街の人達への恩返しの為に。

コミュ障の僕だって、やるときゃやるんだ!




そして森の奥では、封印されていた領域が、ゆっくりと開こうとしていた事を、この時の僕は気がついていなかった。
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