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第二章 異世界での生活

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ハイネさんの食堂で食事が終わった僕は、お金を払うと、ハイネさんに連れられ、店の二階にある僕の部屋へと案内された。
「この部屋を使っとくれ。あたしゃまだ仕事があるから、此処でのんびりしとくといいさ。」
「……はい。ありがとうございます。ハ
イネさん。」
「困った時はお互い様だよ。あぁ。そうだ。これを。」
そう言ってハイネは一冊の本を投げてきた。それを広げてみるとそこには、イラストと文字がセットになった、子供向けの文字を覚える絵本みたいなものだった。
「ハイネさん。これは?」
「昔、まだ子供が小さかった頃。文字を覚えさせる為に買ったもんさ。あとから読み方を教えてあげるから、それ見ながら待っていとくれよ。」
「は、い。分かりました。ありがとうございます。」
僕がお礼を言うと、ハイネさんはまた階下の食堂へと戻って行った。

僕は部屋に備え付けられていたベッドに腰掛けると、ハイネさんが渡してくれた本をペラペラと捲った。
「僕の言葉が通じるって事は、文字での表記が違うだけで、同じ物を指しているって事だよな。例えばこの蟻の絵の下に書かれてる文字と、雨(らしい)の絵の下に書かれてる文字を見比べると……。日本語の平仮名読みと同じと仮定するならば、これが"あ”になるんだろう。文字の形が同じだから。って事は……。」
と僕は仮定を元に文字の検証を始めたんだ。

「ふぅ~。今何時だ?スマホ、スマホ。」
僕は制服のズボンのポケットを探ると、そこには愛用のスマホがしっかりと入っていた。
「良かった。何処かに落としたわけじゃなかったんだな。にしても…もう9時か。まぁ、時間軸が元の世界とは違うかもしれないけど……。あ!メッセージ届いてるけど、見れたとしても返信は出来ないよな。充電も出来ないだろうから、大事に使わないとな。」
僕はそっとスマホの電源を落とし、ベッドに横たわるとそのまま目を閉じた。


「なんだ?こいつ寝てるじゃないか。」
「本当だねぇ~。ほら見てご覧よ。まだあどけない顔で寝ているじゃないか。」
(ん?父さん?母さん?)
「きっと異世界から連れてこられて疲れたんだろうよ。本当、可哀想にねぇ。」
「そうだな。何歳いくつなのか分からないが、まだ親が欲しい年頃だろにな。」
「そうだねぇ……。」
「父さん!母さん!僕帰って……?!え?」
「目が覚めたかい?」
「……ハイネさん。」
「服、持ってきてやったぞ。」
「ヨハネスさん……。」
(そうか……異世界転生は夢じゃなかったし、帰れたわけじゃなかったんだな。)
「あ、あの。ありがとうございます、ハイネさん、ヨハネスさん。」
「いいってことよ。それよりお前の名前は?」
とヨハネスさんに名前を聞かれた僕は、
「のぞむ。僕は渡瀬 望です。」
「のぞむ、か。俺はヨハネス。ただのヨハネスだ。ところでのぞむ。異世界人は貴族なのか?」
「え?貴族?ですか?」
「そうさ。望は名前、それから…なんだ?わた…。」
「わたせです。ファーストネームはのぞむで、ラストネームがわたせです。」
「そう、その渡瀬だが……俺たち平民にラストネームは無いんだ。」
「そ、そうなんですね。僕達の世界は、殆どの人がラストネームを持っています。」
「そういう世界なんだね。で、のぞむは今何歳なんだい?」
と、今度はハイネさんに聞かれた僕は
「じゅ……17歳です。」
と答えた。
「17なのかい?あたしゃもっと幼い子かと思ってたよ。」
「はぁ……そうですか。」
聞くとこの世界では、貴族という身分の人々は15歳で社交界というものにデビューする。そして、殆どの貴族は18で結婚するらしい。が、平民と呼ばれる人達はデビューとかいうのは無くて、結婚も独立も人それぞれだが、大概は学校を18で卒業し仕事を見つけて親元を離れるのだという。(元の世界の、"高卒で就職する”のとあんまり変わらないんだな。)

「ところでのぞむ。」
「……はい。なんでしょうか、ヨハネスさん。」
「のぞむは王様が呼び寄せた異世界人なんだろ?それがなんでまた此処にいるんだ?城にいるんじゃないのか?」
そう聞かれ、僕は召喚されてからの話を、コミュ障なりに、2人に一生懸命話して聞かせた。
「なんだい!その身勝手な話は!」
「俺もそう思うぞ。大体召喚・・とかいうのをする時に、必要な人物だけを・・・連れてくるようにすりゃ良かったじゃないか!!」
「そうだよ。それを必要無いからって追い出すとは。やり方が酷過ぎるっていうんだよ。のぞむが可哀想じゃないか。知らない世界に1人放り出すなんてさ。」
と王達の身勝手なやり方に憤慨してくれる2人に感謝する。
「僕なんかの為に怒ってくれてありがとうございます。」
と頭を下げれば、
「いいんだよ。のぞむはまだ子供なんだ。我慢なんてしなくていいのさ。」
「ハイネの言うとおりだぞ、のぞむ。俺らがお前を皆で守ってやるから安心しろ。」
そう言って僕を抱き締めてくれるヨハネスさんの優しさに、僕は密かに嬉し涙を流したんだ。きっと2人には分かってたと思うけど……。
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