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第四章 今世其ノ弐
第二幕 俺じゃ駄目か?
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翌朝、新堂医師に呼ばれ、私は車椅子を母におしてもらい医局の隣の部屋に入った。
医師からの話は当然、これからの私に対するものだ。
事故での身体の損傷はかなり激しかったようで、リハビリしても一人で歩くのは厳しい事。また、内蔵へのダメージもあり、直ぐに体調を壊してしまいがちになるだろうと。
意識を取り戻してから数日経ったが、自分の足が思うように動かせない事は分かっていたので、仕方がないと思っていた。
(そっか…ちゃんと歩けないんだ……でも…仕方ないよね。車に轢かれたのに、生きてるだけでも奇跡だもん。良かったって思わないとだよね。)
そう前向きに思っていたけど、先生からの次の言葉に、私はその場で固まってしまった。
「今回1番損傷が大きかったのは、子宮でした。大変残念ですが、妊娠しにくいお体になった可能性がある事は否めないでしょう。」
「え?」
(え?子供が産めない?歩けないだけじゃ無くて…子供……)
「先生。亜衣は…亜衣は全く子供出来ないんですか?」
食い下がるお母さんに先生は、
「0ではありませんが…、ただ、澤村さんの場合、他の臓器の損傷もあります。それにより妊娠は体力的にも難しいかもしれません。先ずはリハビリを頑張って、少しずつ治していきましょう。」
と言われたのだった。
泣き崩れるお母さんの背中をさすって、
「ごめんね?ごめんなさい、お母さん。」
私はそう言う以外言葉が見つからなかった。
病室に戻り、ベッドに移して貰うと、
「お母さん、ごめんね?ちょっと疲れちゃったから、寝たいの。」
と言ってお母さんには帰って貰った。
1人になってベッドの上でお腹を触りながら、
「そっか…私……赤ちゃん産めない体になっちゃったんだ。」
そう呟くと、涙がポロポロ流れ落ちる。
本当は泣きたかった。だけどさっき、お母さんが先に泣いちゃったから、泣けなくなっちゃったんだ。辛いのは私なのに……。
私はずっとずっと泣き続け、そして子供の様に泣き疲れ、そのまま寝てしまったのだった。
目が覚めると、そこには一眞さんの姿がありました。
「お疲れ、亜衣。」
「お疲れ様です、一眞さん。」
「なんだ?お前さん。泣いてたのか?」
「え?」
一眞さんが私の頬を撫で、
「なんだ?前世また思い出したのか?」
と聞いてきた。
「う、ううん。違う…よ。」
「そうか。でもな亜衣。俺は前世の償いてわけじゃないが、なんでも話して欲しいて思う。俺じゃダメなのか?やっぱり先輩のがいいのか?」
「先輩?」
「竜二さんだ。」
「先輩…」
「俺じゃお前さんを笑顔にしてやれないのか?」
一眞さんは眉を顰め辛そうな顔をしたまま、手を膝の上に乗せ握りしめていた。
医師からの話は当然、これからの私に対するものだ。
事故での身体の損傷はかなり激しかったようで、リハビリしても一人で歩くのは厳しい事。また、内蔵へのダメージもあり、直ぐに体調を壊してしまいがちになるだろうと。
意識を取り戻してから数日経ったが、自分の足が思うように動かせない事は分かっていたので、仕方がないと思っていた。
(そっか…ちゃんと歩けないんだ……でも…仕方ないよね。車に轢かれたのに、生きてるだけでも奇跡だもん。良かったって思わないとだよね。)
そう前向きに思っていたけど、先生からの次の言葉に、私はその場で固まってしまった。
「今回1番損傷が大きかったのは、子宮でした。大変残念ですが、妊娠しにくいお体になった可能性がある事は否めないでしょう。」
「え?」
(え?子供が産めない?歩けないだけじゃ無くて…子供……)
「先生。亜衣は…亜衣は全く子供出来ないんですか?」
食い下がるお母さんに先生は、
「0ではありませんが…、ただ、澤村さんの場合、他の臓器の損傷もあります。それにより妊娠は体力的にも難しいかもしれません。先ずはリハビリを頑張って、少しずつ治していきましょう。」
と言われたのだった。
泣き崩れるお母さんの背中をさすって、
「ごめんね?ごめんなさい、お母さん。」
私はそう言う以外言葉が見つからなかった。
病室に戻り、ベッドに移して貰うと、
「お母さん、ごめんね?ちょっと疲れちゃったから、寝たいの。」
と言ってお母さんには帰って貰った。
1人になってベッドの上でお腹を触りながら、
「そっか…私……赤ちゃん産めない体になっちゃったんだ。」
そう呟くと、涙がポロポロ流れ落ちる。
本当は泣きたかった。だけどさっき、お母さんが先に泣いちゃったから、泣けなくなっちゃったんだ。辛いのは私なのに……。
私はずっとずっと泣き続け、そして子供の様に泣き疲れ、そのまま寝てしまったのだった。
目が覚めると、そこには一眞さんの姿がありました。
「お疲れ、亜衣。」
「お疲れ様です、一眞さん。」
「なんだ?お前さん。泣いてたのか?」
「え?」
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「なんだ?前世また思い出したのか?」
と聞いてきた。
「う、ううん。違う…よ。」
「そうか。でもな亜衣。俺は前世の償いてわけじゃないが、なんでも話して欲しいて思う。俺じゃダメなのか?やっぱり先輩のがいいのか?」
「先輩?」
「竜二さんだ。」
「先輩…」
「俺じゃお前さんを笑顔にしてやれないのか?」
一眞さんは眉を顰め辛そうな顔をしたまま、手を膝の上に乗せ握りしめていた。
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