47 / 66
第三章 前世其ノ弐
第四幕 疑惑⑵
しおりを挟む
「お嬢様?如何なさいました?」
スープを飲む手が止まってしまっていた私を、ローラが心配そうな面持ちで尋ねてきました。
「え?……あ…大丈夫。大丈夫よ」
「まだお加減が優れないのでしょう。スープを飲まれたら、少しおやすみください。」
「そ…そうね。ありがとうローラ。そうさせて頂くわね。」
慌ててスープを頂き、全て飲み終えた私に、ローラは
「では、此方をお飲み下さい。」
とても苦い薬湯を手渡しながら、微笑みました。
(苦いの嫌いって分かっててあの顔は…)
私はローラを憎々しげに睨み付けながら、薬湯を飲み干しベッドに潜り混んだのでした。
それから3日後
私はお休みさせて頂いていた公爵夫人としての教育の為に、ガーディランス公爵家のお屋敷を訪れていました。
「長らくお休みをさせて頂き、申し訳ございませんでした。」
と淑女の礼を致しました。が、いつもの公爵夫人の優しい笑顔が返されるのでは無く、
「おかけなさい、アイリーン様。」
と着席を促されました。
「これをご覧なさい。」
と一通の手紙を私の前に置かれたのです。その内容は、舞踏会での私の様子を公爵家に告発するものでした。
『ロイド様のご婚約者であられされる伯爵令嬢は、我が国の王太子殿下に思慕の念を抱かれておるご様子。ご成婚は今一度お考え直されては如何かと存じます。』
「アイリーン様。もしこれが事実であるならば、私は伯爵に抗議せねばなりません。」
公爵夫人は、厳しい目付きで私を見つめ
「お答えなさいませ、アイリーン様。」
と詰め寄られます。
私は言い返す事が出来ず、俯いているしかありません。私の心の中にいらしたのは…初めてお姿を拝見した時からずっとリュークアッセンドラ王太子殿下だったのですから。
ですが、そんな心持ちの中ロイド様の婚約者となり教育を受けているうちに、少しずつロイド様のお人柄に惹かれていたのも事実なのです。
そんな事を公爵夫人に打ち明ける事など出来るわけも無く、ただ唇を噛み俯むしか出来なかった私の様子をご覧になった公爵夫人は、手紙の内容が是であると解釈なさったようでした。
「本日は、貴女に教育を施す心持ちにはなれません。今後の事は追って沙汰を出す事に致します。」
公爵夫人に持っておられた扇子で扉を指され退室を促されてしまった私は、
「失礼致しました。」
と公爵家をあとにしたのでした。
スープを飲む手が止まってしまっていた私を、ローラが心配そうな面持ちで尋ねてきました。
「え?……あ…大丈夫。大丈夫よ」
「まだお加減が優れないのでしょう。スープを飲まれたら、少しおやすみください。」
「そ…そうね。ありがとうローラ。そうさせて頂くわね。」
慌ててスープを頂き、全て飲み終えた私に、ローラは
「では、此方をお飲み下さい。」
とても苦い薬湯を手渡しながら、微笑みました。
(苦いの嫌いって分かっててあの顔は…)
私はローラを憎々しげに睨み付けながら、薬湯を飲み干しベッドに潜り混んだのでした。
それから3日後
私はお休みさせて頂いていた公爵夫人としての教育の為に、ガーディランス公爵家のお屋敷を訪れていました。
「長らくお休みをさせて頂き、申し訳ございませんでした。」
と淑女の礼を致しました。が、いつもの公爵夫人の優しい笑顔が返されるのでは無く、
「おかけなさい、アイリーン様。」
と着席を促されました。
「これをご覧なさい。」
と一通の手紙を私の前に置かれたのです。その内容は、舞踏会での私の様子を公爵家に告発するものでした。
『ロイド様のご婚約者であられされる伯爵令嬢は、我が国の王太子殿下に思慕の念を抱かれておるご様子。ご成婚は今一度お考え直されては如何かと存じます。』
「アイリーン様。もしこれが事実であるならば、私は伯爵に抗議せねばなりません。」
公爵夫人は、厳しい目付きで私を見つめ
「お答えなさいませ、アイリーン様。」
と詰め寄られます。
私は言い返す事が出来ず、俯いているしかありません。私の心の中にいらしたのは…初めてお姿を拝見した時からずっとリュークアッセンドラ王太子殿下だったのですから。
ですが、そんな心持ちの中ロイド様の婚約者となり教育を受けているうちに、少しずつロイド様のお人柄に惹かれていたのも事実なのです。
そんな事を公爵夫人に打ち明ける事など出来るわけも無く、ただ唇を噛み俯むしか出来なかった私の様子をご覧になった公爵夫人は、手紙の内容が是であると解釈なさったようでした。
「本日は、貴女に教育を施す心持ちにはなれません。今後の事は追って沙汰を出す事に致します。」
公爵夫人に持っておられた扇子で扉を指され退室を促されてしまった私は、
「失礼致しました。」
と公爵家をあとにしたのでした。
0
お気に入りに追加
283
あなたにおすすめの小説
Paradise FOUND
泉野ジュール
恋愛
『この娘はいつか、この国の王の為に命を捧げ、彼の願いを叶えるだろう』
そんな予言をもって生まれた少女、エマニュエル。両親の手によって隠されて育つが、17歳のある日、その予言の王の手により連れ去られてしまう。
まるで天国のように──人知れぬ自然の大地で幸せに育ったエマニュエルは、突然王宮の厳しい現実にさらされる。
そして始まる、相容れるはずのないふたりの、不器用な恋。
【完結】ここって天国?いいえBLの世界に転生しました
三園 七詩
恋愛
麻衣子はBL大好きの腐りかけのオタク、ある日道路を渡っていた綺麗な猫が車に引かれそうになっているのを助けるために命を落とした。
助けたその猫はなんと神様で麻衣子を望む異世界へと転生してくれると言う…チートでも溺愛でも悪役令嬢でも望むままに…しかし麻衣子にはどれもピンと来ない…どうせならBLの世界でじっくりと生でそれを拝みたい…
神様はそんな麻衣子の願いを叶えてBLの世界へと転生させてくれた!
しかもその世界は生前、麻衣子が買ったばかりのゲームの世界にそっくりだった!
攻略対象の兄と弟を持ち、王子の婚約者のマリーとして生まれ変わった。
ゲームの世界なら王子と兄、弟やヒロイン(男)がイチャイチャするはずなのになんかおかしい…
知らず知らずのうちに攻略対象達を虜にしていくマリーだがこの世界はBLと疑わないマリーはそんな思いは露知らず…
注)BLとありますが、BL展開はほぼありません。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
会うたびに、貴方が嫌いになる
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。
アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる