王子様に恋をした【完結】

Saeko

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第三章 前世其ノ弐

第三幕 揺らぐ⑴

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公爵家に嫁ぐ為の教育は順調に進み、残すは国王陛下より祝福を頂ければ、ロイド様と晴れて婚姻となるところまできました。

陛下に祝福を頂ける最高のタイミングは、もう少しで年が変わる月の終わり頃、王宮で行われる大舞踏会の時と決まりました。

「御機嫌よう、アイリーン様。さぁこちらへいらっしゃいな。」

ある日の公爵夫人教育の時、ガーディランス公爵夫人は私をいつもとは違うお部屋にお呼びになりました。

「失礼致します」とカーテシーをした後に顔を上げると、そこにはロイド様とお話をなさっているご年配の女性がおられました。

ガーディランス公爵夫人は、その女性に声をかけられました。

「本日は2週間後に行われる王宮での大舞踏会用のドレスを作るのです。貴女は、我が公爵家に嫁ぐ身なのですから、閣下が貴女の為にドレスを用意する様にと仰ったのよ。」

夫人はそう言ってにこにこ笑っておられました。

「お初にお目にかかります。アイリーン様。私、ガスタフ服飾商会でデザインを担当させていただいております、サーリスと申します。本日は宜しくお願い申し上げます。」

夫人から紹介されたサーリスさんは、そう仰って深々とお辞儀をして下さいました。

「サーリスは新進気鋭のデザイナーなのですよ?アイリーン様。」

「はい。私も、サーリスさんのお噂は、兼々お聞きしておりました。とても優秀な方で、こぞってサーリスさんにデザインをして頂きたいと思っておられるご令嬢が多いとか。」

おそれ多くも有り難いことでございます。」

にこやかに微笑まれるサーリスさんでしたが、いざドレスの話になりますと、職人の目になられました。

ガーディランス公爵夫人はサーリスさんとお話なさいながらも、私の希望もお聞き入れ下さり、あっという間に私のドレスのデザイン画が出来上がりました。

その日は採寸と生地選びをし、入れ替わりで来られた宝石商の方と先程のドレスや私の肌や髪色に合う宝石を選ぶだけでお茶の時間となり、いつもの夫人教育はございませんでした。

「ロイド。アイリーン様のドレスは、貴方の色に合わせましたわ。」

夫人のお言葉に

「了解」

と素っ気ない言葉を返されたロイド様に、苦笑いをなさいながら、夫人はロイド様がお作りになったカヌレを召し上がっておられました。

(王宮での大舞踏会…勿論殿下も来られるのよね?どんな出で立ちなのかしら。楽しみだわ。)

私は夫人とロイド様のお話を、ただなんとなく聞いていた為、その時夫人がとても大事な事を仰った事に全く気付いておりませんでした。

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