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第三章 前世其ノ弐
第二幕 公爵家の嫁⑷
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ガーディランス公爵家でのお茶会が始まりました。
今日はとても良いお天気に恵まれた為、茶会は公爵家自慢の庭園で行われる事になったのでした。
「まぁ!アイリーン様がお作りになったのですって?このケーキ。」
「美味しいですわ~。」
「本当に。なんてお上手なんでしょう。」
「ありがとう存じます。」
私が作ってきたパウンドケーキを召し上がって下さったご招待客のご婦人達からお褒めのお言葉を頂きほっとしているところに、
「本日は、母上主催の茶会にお越しくださりありがとう存じます。こちらは、私が作ってまいりましたパンケーキにございます。自家製のジャムやバター 蜂蜜等をつけてお召し上がりください。」
そう仰ってご婦人達の前にふっくら焼かれた美味しそうなパンケーキを置いていかれました。そうです。ロイド様自ら給仕なさったのです。
私も慌ててお手伝いをさせて頂こうとお側に駆け寄ると、ロイド様は紳士の微笑みで、
「アイリーン、ありがとうな。」
と仰ったのでした。
私に向けたロイド様の素の笑みに、私と似たような年齢のご令嬢達からは嘆息が漏れ、うっとりとなさっていらっしゃいました。
私がふと見やると、その中のお1人だけは全く違う目をしておられたのに気づきました。
(ロイド様は私の婚約者なのに、あのご令嬢の視線はなんなの!)
「ロイド様に給仕して頂けるなんて、幸せですわ。」
「どうぞ、ご堪能下さい。」
「まぁ!なんて美しいのでしょう。ロイド様?今度私にこのパンケーキの作り方をご指南頂いても?」
そう上目遣いでロイド様を見つめるのは、同じ爵位のローズウェルト様です。
「折角ではありますが、私は婚約者がいる身。アンダーソン伯爵家にお伺いするわけにはまいりません。」
ロイド様はチラリと私を見やり、
「それでしたら、アイリーンに作り方を指南しておきますゆえ、アイリーンから教えて貰っては如何かと。」
キッパリとお断りをされたロイド様に、他のご令嬢から【婚約者を大切にする素敵な方】という称号が付いたようでした。が、当の本人は何処吹く風。そして恥をかかされた形になってしまったローズウェルト様は私をキッと睨み付け、
「気分が優れませんので、お暇致しますわ。」
と仰って、ガーディランス公爵夫人にご挨拶をされた後、ご退席なさいました。
私は、なんだかとてもいごごちが悪くなってしまい、他のご令嬢達との会話に入る事が出来ず、ただそこにいるだけの状態になっておりました。
今日はとても良いお天気に恵まれた為、茶会は公爵家自慢の庭園で行われる事になったのでした。
「まぁ!アイリーン様がお作りになったのですって?このケーキ。」
「美味しいですわ~。」
「本当に。なんてお上手なんでしょう。」
「ありがとう存じます。」
私が作ってきたパウンドケーキを召し上がって下さったご招待客のご婦人達からお褒めのお言葉を頂きほっとしているところに、
「本日は、母上主催の茶会にお越しくださりありがとう存じます。こちらは、私が作ってまいりましたパンケーキにございます。自家製のジャムやバター 蜂蜜等をつけてお召し上がりください。」
そう仰ってご婦人達の前にふっくら焼かれた美味しそうなパンケーキを置いていかれました。そうです。ロイド様自ら給仕なさったのです。
私も慌ててお手伝いをさせて頂こうとお側に駆け寄ると、ロイド様は紳士の微笑みで、
「アイリーン、ありがとうな。」
と仰ったのでした。
私に向けたロイド様の素の笑みに、私と似たような年齢のご令嬢達からは嘆息が漏れ、うっとりとなさっていらっしゃいました。
私がふと見やると、その中のお1人だけは全く違う目をしておられたのに気づきました。
(ロイド様は私の婚約者なのに、あのご令嬢の視線はなんなの!)
「ロイド様に給仕して頂けるなんて、幸せですわ。」
「どうぞ、ご堪能下さい。」
「まぁ!なんて美しいのでしょう。ロイド様?今度私にこのパンケーキの作り方をご指南頂いても?」
そう上目遣いでロイド様を見つめるのは、同じ爵位のローズウェルト様です。
「折角ではありますが、私は婚約者がいる身。アンダーソン伯爵家にお伺いするわけにはまいりません。」
ロイド様はチラリと私を見やり、
「それでしたら、アイリーンに作り方を指南しておきますゆえ、アイリーンから教えて貰っては如何かと。」
キッパリとお断りをされたロイド様に、他のご令嬢から【婚約者を大切にする素敵な方】という称号が付いたようでした。が、当の本人は何処吹く風。そして恥をかかされた形になってしまったローズウェルト様は私をキッと睨み付け、
「気分が優れませんので、お暇致しますわ。」
と仰って、ガーディランス公爵夫人にご挨拶をされた後、ご退席なさいました。
私は、なんだかとてもいごごちが悪くなってしまい、他のご令嬢達との会話に入る事が出来ず、ただそこにいるだけの状態になっておりました。
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